【アナリスト水田雅展の銘柄分析】東洋ドライルーブは15年6月期業績増額の可能性、低PER、低PBRを評価

銘柄分析

 東洋ドライルーブ<4976>(JQS)はドライルーブ製品のコーティング加工事業を展開している。株価は5月11日の年初来高値1750円から利益確定売りで一旦反落したが、15年6月期業績増額の可能性、低PER、低PBRを評価して切り返し展開だろう。

 ドライルーブ(固体皮膜潤滑剤)製品のコーティング加工を主力として、その他事業ではナノカーボン製品の製造も展開している。海外は中国、タイ、ベトナムに展開している。

 ドライルーブとは二硫化モリブデン、フッ素樹脂、グラファイトなどの潤滑物質と各種特殊バインダーをハイブリッド配合し、各種溶剤または水に分散させた有機結合型の多機能皮膜である。ドライルーブでコーティング加工することにより各種素材の摩擦係数を大幅に低減できるなど、耐摩耗性に優れているため自動車機器、デジタル家電、デジタルカメラなどの駆動伝達部で、オイルやグリースなどの液体潤滑剤を使用できない部位にコーティング皮膜として使用される。

 中期成長に向けた事業戦略では新製品・新加工技術の開発、アジア地域を中心としたグローバル展開、海外連結子会社の生産性改善を積極推進する方針を掲げている。そして新製品では発熱皮膜、放熱皮膜、撥油皮膜、超撥水皮膜、DLC皮膜、LUBICKシリーズなどの開発を強化している。

 なお5月18日に、コーポレート・ガバナンスの一層の充実の観点から、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行すると発表した。9月25日開催予定の第53回定時株主総会に付議する。

 5月11日に発表した今期(15年6月期)第3四半期累計(7月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比9.2%減の36億14百万円、営業利益が同33.7%減の2億23百万円、経常利益が同34.1%増の4億68百万円、純利益が同51.4%増の2億90百万円だった。

 国内の消費増税反動による在庫調整長期化の影響で減収営業減益だったが、海外が好調に推移して売上高、営業利益とも概ね計画水準だった。経常利益と純利益は、為替差益の増加(同1億52百万円増加の1億77百万円)や、持分法投資損益の改善(前年同期の持分法投資損失6百万円から持分法投資利益66百万円に改善)が寄与して、計画を上回る大幅増益だった。

 セグメント別売上高は、ドライルーブ事業が同9.1%減の36億03百万円(自動車機器向けが同11.4%減収、光学機器向けが同6.2%減収、電子部品関連が同0.7%減収)で、その他事業が同29.9%減の11百万円だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)12億08百万円、第2四半期(10月~12月)12億07百万円、第3四半期(1月~3月)11億99百万円、営業利益は第1四半期81百万円、第2四半期70百万円、第3四半期72百万円だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(8月8日公表)を据え置いて、売上高が前期比1.9%減の50億30百万円、営業利益が同21.9%減の3億06百万円、経常利益が同9.1%減の3億68百万円、純利益が同17.9%減の2億47百万円、配当予想が前期と同額の年間30円(第2四半期末15円、期末15円)としている。

 自動車機器業界向けは底堅く推移するが、電気・電子機器業界向けがや低調となり、利益面では販売価格引き下げ要請などが影響するとして、会社予想は減収減益見込みとしている。また為替差益を織り込んでいないため保守的な会社予想だ。

 通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が71.9%、営業利益が72.9%、経常利益が127.2%、純利益が117.4%である。売上高と営業利益は概ね順調な水準で、経常利益と純利益は為替差益や持分法投資損益改善が寄与して通期会社予想を超過達成している。

 通期ベースでも海外が引き続き好調に推移し、国内も期後半には自動車関連や光学機器関連の生産増加が期待される。コスト低減効果も寄与する。そしてドル高・円安進行を考慮すれば通期ベースでも為替差益が期待される。通期の経常利益と純利益は増額の可能性が高いだろう。

 株価の動きを見ると、5月11日の年初来高値1750円から利益確定売りで一旦反落したが、自律調整の範囲だろう。下値切り上げトレンドは継続しているようだ。

 5月25日の終値1670円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS186円55銭で算出)は9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4276円42銭で算出)は0.4倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。そして上向きに転じた13週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。15年6月期業績増額の可能性、低PER、低PBRを評価して切り返し展開だろう。

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