イトーキは下値切り上げ、企業の職場環境改善の流れで収益拡大期待

 イトーキ<7972>(東1)はオフィス家具の大手で、物流機器なども展開している。20年12月期は新型コロナウイルスの影響で大幅営業・経常減益予想だが、中期的には働き方改革による企業の職場環境改善の流れで収益拡大を期待したい。株価は反発力が鈍く安値圏でモミ合う形だが徐々に下値を切り上げている。低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。

■オフィス家具の大手、物流機器も展開

 オフィス家具の大手で、パーティションや物流機器なども展開している。製販一貫体制が特徴である。

 オフィス関連事業(事務用デスク・チェア、収納家具など)では、18年10月に開設した新本社オフィスのITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)を活用して、ワークスタイルの多様化や働き方改革に対応したオフィス空間の提案を推進している。また新規事業としてGlobal Treehouse事業を立ち上げている。

 設備機器関連事業(パーティション、物流設備機器など)では、19年9月に高速仕分ピッキング装置「システマストリーマーSAS」の新製品を投入した。

 国内その他事業では、テレワークに対応した新製品、子ども向け新製品の投入を推進している。

 海外は、中国におけるグループ内組織再編に向けて、地域統括会社である伊藤喜を設立(20年6月)して拠点再編、人員体制適正化、直接販売強化など収益構造改革を推進している。さらに新製品投入で巻き返しを図る方針だ。

 19年12月期のセグメント別売上構成比はオフィス関連事業が53%、設備機器関連事業が45%、その他(家庭用机など)が2%、営業利益構成比はオフィス関連事業が78%、設備機器関連事業が48%、その他がマイナス26%だった。なお収益はオフィス移転シーズンにあたる上半期偏重の特性がある。

 20年7月にはアドバンテッジアドバイザーズと提携し、アドバンテッジアドバイザーズがサービス提供するファンドを割当先とする第1回新株予約権を発行した。営業体制改革、保有資産の効率的活用、オフィス家具以外の事業セグメントの高収益化などに関連した社内プロジェクトを立ち上げ、アドバンテッジアドバイザーズの支援も受けながら企業価値向上と持続的成長を図る方針だ。

■20年12月期大幅営業・経常減益予想、中期収益拡大期待

 20年12月期の連結業績予想(5月25日に未定に修正、8月31日に再公表)は、売上高が19年12月期比4.2%減の1170億円、営業利益が55.7%減の4億円、経常利益が73.6%減の2億50百万円、純利益が1億円の黒字(19年12月期は5億50百万円の赤字)としている。配当予想は19年12月期と同額の13円(期末一括)である。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比6.5%減の861億93百万円、営業利益が51.1%減の7億19百万円、経常利益が51.1%減の7億38百万円、純利益が2億88百万円の赤字(前年同期は4億56百万円の黒字)だった。新型コロナウイルスの影響でオフィス関連事業が低調だった。

 セグメント別に見ると、オフィス関連事業は売上高が1.3%減の488億26百万円で、営業利益が86.2%減の1億95百万円だった。設備機器関連事業は売上高が13.1%減の354億12百万円だが、営業利益は25.8%増の4億35百万円だった。その他事業はテレワーク化の流れで在宅勤務用チェアの販売が拡大して売上高が1.1%増の19億53百万円、営業利益が88百万円の黒字(前年同期は2億88百万円の赤字)だった。

 第4四半期も新型コロナウイルスによる営業活動の縮小、商談の延期・中止の影響が継続すると想定して、通期は大幅営業・経常減益予想としている。

 新型コロナウイルスの影響で、感染リスクの少ないワークプレイスの確保、テレワーク化によるオフィス縮小、メインオフィス以外のワークプレイスの活用など、オフィス関連事業を取り巻く環境が大きく変化している。20年12月期は大幅営業・経常減益予想だが、中期的には全国的なテレワークなどwithコロナに向けた働き方改革による企業の職場環境改善の流れで収益拡大を期待したい。

■株価は下値切り上げ

 株価は反発力が鈍く安値圏でモミ合う形だが徐々に下値を切り上げている。低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。12月7日の終値は346円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS2円19銭で算出)は約158倍、今期予想配当利回り(会社予想の13円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS995円80銭で算出)は約0.3倍、時価総額は約158億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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