【アナリスト水田雅展の銘柄分析】巴工業は15年10月期減額修正による売り一巡、高配当利回りと低PBRに見直し余地

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 巴工業<6309>(東1)は遠心分離機械や化学工業製品を主力としている。株価は15年10月期業績の減額修正で1600円台に水準を切り下げたが、1月の年初来安値を割り込むことなく売り一巡感を強めている。2%台後半の配当利回りや0.7倍近辺の低PBRに見直し余地があり、反発展開が期待される。

 遠心分離機械を中心とする機械製造販売事業、合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を2本柱として、中国・深圳ではコンパウンド加工事業も展開している。

 13年11月には、中国の連結子会社・星科工程塑料に対するテクノポリマーおよび日本カラリングの出資持分をすべて譲り受け、両社との資本・業務提携を解消して当社主導で収益立て直しを進めている。

 6月3日発表の今期(15年10月期)第2四半期累計(11月~4月)連結業績(5月29日に売上高を減額、利益を増額修正)は、売上高が前年同期比0.6%増の200億86百万円、営業利益が同10.5%増の9億34百万円、経常利益が同13.4%増の11億61百万円、純利益が同19.2%増の9億23百万円だった。

 営業利益は概ね計画水準だったが、円安進行に伴って営業外収益での為替差益が想定を上回り、特別利益での投資有価証券売却益の計上、さらに法定実効税率引き下げに伴う繰延税金資産・負債の再評価による税金費用の減少も寄与した。

 セグメント別に見ると、機械製造販売事業は売上高が同0.7%増の50億70百万円、営業利益が同40.9%増の4億21百万円だった。国内向け装置・工事・部品・修理が減少したが、収益性の高い北米を中心とした海外向けの好調で大幅増益だった。

 化学工業製品販売事業は売上高が同0.6%増の150億16百万円、営業利益が同6.2%減の5億13百万円だった。工業材料分野のアルミニウム合金向け添加剤や電子材料分野の半導体製造搬送用トレイなどが堅調だったが、中国・深圳のコンパウンド事業の販売数量減少などで減益だった。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(11月~1月)95億72百万円、第2四半期(2月~4月)105億14百万円、営業利益は第1四半期2億87百万円、第2四半期6億47百万円だった。

 通期の連結業績予想については5月29日に売上高と利益を減額修正した。前回予想(12月11日公表)に対して売上高は23億30百万円減額して前期比0.8%減の403億70百万円、営業利益は5億50百万円減額して同0.5%増の12億80百万円、経常利益は3億50百万円減額して同7.9%減の15億円、純利益は1億20百万円減額して同6.6%減の10億30百万円とした。

 機械製造販売事業において、北米の油井関連市況の急激な悪化を背景に機械販売が大幅に減少する見込みだ。なお化学工業製品販売事業において、中国・深圳のコンパウンド事業に係る新規顧客向け量産化が遅れているため売上高は計画を下回るが、営業利益は計画水準を維持する見込みとしている。

 配当予想については前回予想(12月11日公表)を据え置いて前期と同額の年間45円(第2四半期末22円50銭、期末22円50銭)としている。予想配当性向は43.6%となる。

 なお15年10月期業績予想の減額修正を真摯に受け止め、経営責任を明確にするため、役員報酬の減額(関係取締役の役員報酬月額を3%~10%の範囲で減額、対象期間は15年6月から10月まで)を実施する。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.8%、営業利益が73.0%、経常利益が77.4%、純利益が89.6%である。機械販売が大幅に減少する見込みだが、円安進行メリットも期待され、最終利益は修正計画を上回る可能性があるだろう。

 13年12月に策定した中期経営計画「Target2016」では、経営目標値として16年10月期売上高475億円、営業利益25億80百万円、経常利益26億円、純利益16億円、ROE6.3%、ROA4.4%を掲げている。

 重点戦略としては、北米市場、南米市場、東南アジア市場を中心とする海外売上高の拡大に加えて、機械事業ではエネルギー分野への参入、化学品事業では二次電池やパワー半導体向け商材の開拓に取り組む方針だ。

 なお株主優待制度については、毎年10月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してワイン(当社関連会社取扱商品)1本を贈呈する。

 株価の動きを見ると、4月の戻り高値圏1800円台から1700円台に反落し、さらに15年10月期業績の減額修正で1600円台に水準を切り下げた。ただし1月の年初来安値1660円を割り込むことなく売り一巡感を強めている。ネガティブ反応は限定的のようだ。

 6月14日の終値1689円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS103円22銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間45円で算出)は2.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2399円53銭で算出)は0.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となり、窓を開けて26週移動平均線と52週移動平均線を割り込んだ。ただし1月の年初来安値1660円を割り込むことなく、安値圏で下ヒゲを付けて売り一巡感を強めている。2%台後半の配当利回りや0.7倍近辺の低PBRに見直し余地があり、反発展開が期待される。

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