クリーク・アンド・リバー社は上場来高値更新、23年2月期1Q大幅増益と順調で通期上振れの可能性

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(東証プライム)は、クリエイティブ分野を中心にプロフェッショナル・エージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、プロフェッショナル50分野構想を掲げて事業領域拡大戦略を加速している。23年2月期2桁増益予想としている。第1四半期は日本クリエイティブ分野や医療分野の好調が牽引して大幅増益だった。通期予想に上振れの可能性があり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は好業績を評価して上場来高値を更新している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたプロフェッショナル・エージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、およびライツマネジメント(知的財産の流通)事業を展開している。

 プロフェッショナル8領域(クリエイティブ、メディカル・ヘルスケア、コンピュータサイエンス、コンストラクション、クオリティ・オブ・ライフ、ライフサイエンス、エンジニアリング、経営支援)の18分野に展開し、さらにグループ資産を活用した商品・サービス・プロジェクトの開発や事業領域の拡大を推進している。23年2月期第1四半期末時点でプロフェッショナルクリエイター34万5000人、クライアント4万5000社のネットワークを構築していることが強みだ。

 新規エージェンシー事業としては建築、ファッション、シェフ、プロフェッサー、ドローン、舞台芸術、リサーチャー(研究開発支援者)、CXO(CEO、CFO、CMOなど企業における業務や機能の最高責任者の総称)などを展開している。

 グループ資産を活かした商品・サービス・プロジェクトとしては、漫画家発掘・デジタル配信事業の独自プラットフォーム「漫画LABO」、メタバース関連のVR建築展示場「XR EXPO」、独自のVR映像配信技術を活用した低遅延VRリアルタイム配信システム・VR遠隔医療教育システム、AI需要予測の「Forecasting Experience」、アパレル分野のDXを支援する「sture(ストゥーラ)」、メタバース構想も推進するC&Rクリエイティブスタジオ(独自プラットフォーム開発中)、漫画に音楽や音声を融合した動画「モーションコミック」(独自プラットフォーム開発中)などがある。

 22年4月に農業分野における障がい者雇用促進および農業を基軸とした地域雇用促進を目的とする子会社コネクトアラウンドを設立、グループ内における障がい者雇用促進を目的とする子会社One Leaf Cloverを設立、22年5月に日本アニメ・コミックに特化したNFT(非代替性トークン)プラットフォーム「ANIFTY」を運営するANIFTYを子会社化、22年7月にシェフをはじめとした料理人の独立・開業を支援する子会社シェフズ バリューを設立、漫画に音楽や音声を融合した動画「モーションコミック」を開発する子会社Nextrekを設立し、グループは25社(22年7月設立の2社含む)となった。

 さらに事業シナジーを見越した資本参加として、バイオベンチャーのCO2資源化研究所、アグリベンチャーのプラントライフシステムズ、不動産仲介プラットフォームのエージェント・グロース(事業上の通称はケラー・ウィリアムズ・ジャパン)、弁護士保険のミカタ少額短期保険、NFT関連のブロックチェーンエンターテインメント事業を展開するシンガポールDEA社、子ども向けオンライン世界旅行のMimmyなどに出資している。また21年8月にはEPSホールディングス<4282>、ワールドホールディングス<2429>、SBSホールディングス<2384>と共同で、エルダー人材の働き方の多様性を企画・実現する新会社HATARAKUエルダー(EPSホールディングスの連結子会社)を設立している。

■日本クリエイティブ分野が拡大基調

 22年2月期のセグメント別(調整前)構成比は、売上高が日本クリエイティブ分野70%、韓国クリエイティブ分野8%、医療分野10%、会計・法曹分野5%、その他(IT分野のエージェンシー事業、新規事業など)6%、営業利益が日本クリエイティブ分野72%、韓国クリエイティブ分野0%、医療分野25%、会計・法曹分野3%、その他▲1%だった。

 事業分野別の構成比は売上高がプロデュース36%、エージェンシー派遣42%、エージェンシー紹介13%、ライツマネジメント・他9%、売上総利益がプロデュース31%、エージェンシー派遣26%、エージェンシー紹介34%、ライツマネジメント・他9%だった。

 日本クリエイティブ分野の領域別構成比は売上高がゲーム35%、Web26%、映像(テレビ・映画)25%、電子書籍・YouTube等10%、新規エージェンシー4%、その他1%、営業利益がゲーム53%、Web25%、映像15%、電子書籍・YouTube等21%、新規エージェンシー▲2%、他▲12%だった。

 韓国クリエイティブ分野は、TVマーケット関連事業を新設会社に承継してCREEK&RIVER ENTERTAINMENTを18年2月期第2四半期から持分法適用関連会社としたが、20年1月9日付で株式を追加取得し、改めて連結子会社化した。

 収益面では、医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重するため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。主力の日本クリエイティブ分野は売上・営業利益とも拡大基調である。新規事業分野は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。

■プロフェッショナル50分野構想

 中期経営計画では「プロフェッショナル50分野構想」を掲げている。目標数値については、計画初年度の22年2月期営業利益が2期目の23年2月期計画32億円を前倒しで達成し、さらに23年2月期以降も伸長が見込まれるため、22年4月7日付で上方修正して最終年度24年2月期の目標を売上高470億円、営業利益45億円、営業利益率9.5%に引き上げた。

 基本戦略としては、プロフェッショナル分野のさらなる拡大(プロフェッショナル50分野構想)、新規サービスの創出(プロフェッショナルの能力を活かす新たな価値の創造)、経営人材の創出、コーポレートガバナンスの強化を推進する。M&A・アライアンスも積極活用して事業領域拡大戦略を加速する方針だ。

 21年12月には、国内最大級のクリエイティブ(ゲーム・映画・TV・動画・XR・Web・漫画・小説・建築)開発スタジオ「C&R Creative Studios」を始動した。将来構想として、このスタジオを核としてコンテンツ開発を推進するため、スタジオのメタバース構想(22年内にオープン予定)も推進している。

 22年5月には「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)とともに、地域の未来社会を創造する首長連合」(万博首長連合)と、地域の産業や経済の発展を目指す支援包括連携協定を締結した。

■23年2月期2桁増益予想、1Q大幅増益と順調で通期上振れ余地

 23年2月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用で、従来方法に比べて売上高が影響を受けるが、利益への影響は軽微)は、売上高が22年2月期比5.3%増の440億円、営業利益が17.2%増の40億円、経常利益が17.0%増の40億円、親会社株主帰属当期純利益が12.4%増の25億としている。配当予想は22年2月期比3円増配の23円(期末一括)としている。12期連続増配予想となる。

 日本クリエイティブ分野の好調が牽引し、新規事業への成長投資を吸収して増収・2桁増益予想としている。グループ子会社の収益拡大も寄与する見込みだ。なお収益認識会計基準適用で売上高が影響を受けるが、この影響を除く従来方法ベースの売上高は22年2月期比10.0%増の460億円となる見込みだ。

 第1四半期は、売上高が前年同期比7.3%増の113億71百万円、営業利益が37.1%増の16億87百万円、経常利益が35.9%増の16億95百万円、親会社株主帰属四半期純利益が41.3%増の12億44百万円だった。

 日本クリエイティブ分野や医療分野の好調が牽引して大幅増益となり、第1四半期として過去最高業績だった。なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が6億02百万円、売上原価が6億02百万円減少している。この影響を除くと売上高は13.0%増収だった。営業利益以下への影響は軽微だった。なお売上総利益率は3.2ポイント上昇した。

 日本クリエイティブ分野は売上高が4.2%増の74億69百万円(収益認識会計基準適用の影響を除くと12.6%増収)で、営業利益(調整前)が34.0%増の8億83百万円だった。売上面では、TV番組企画・制作、YouTubeチャンネル運用受託、ゲーム制作受託・開発、Webコンテンツ制作・開発、さらに「漫画LABO」関連などを中心に伸長した。利益面では増収効果に加えて、利益率の高いプロデュース関連の好調やDXによる生産性向上なども寄与した。

 韓国クリエイティブ分野は、TV局への派遣が横ばいだが、コンテンツ事業のデジタルコミック(Webtoon)やYouTube関連が伸長し、売上高が1.0%増の9億03百万円で営業利益が19.2%増の2百万円だった。

 医療分野は売上高が22.8%増の18億09百万円で営業利益が51.1%増の8億40百万円だった。医師紹介が好調に推移し、新規事業(クリニック経営支援)投資を吸収した。なおコロナ禍の影響が和らいだため、レジナビFairのリアル開催を2年ぶりに再開し、オンライン開催と合わせたハイブリッド化を実現した。

 会計・法曹分野は売上高が6.4%増の5億49百万円で営業利益が58.8%増の29百万円だった。コロナ禍の影響を受けていた紹介が回復基調となった。

 その他事業(新規事業、3社を新規連結して合計12社)は売上高が16.7%増の6億38百万円で、営業利益が79百万円の損失(前年同期は7百万円の損失)だった。投資段階の事業が多いため全体として営業損失だが、売上面では12社のうち7社が増収、利益面では12社のうち3社の損益が改善した。

 通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が26%、営業利益が42%、経常利益が42%、親会社株主帰属当期純利益が50%だった。医療分野の収益に上期偏重となる季節特性があることを考慮しても順調な水準であり、通期予想に上振れの可能性があり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は好業績を評価して上場来高値を更新している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。7月22日の終値は2348円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS112円15銭で算出)は約21倍、今期予想配当利回り(会社予想の23円で算出)は約1.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS540円83銭で算出)は約4.3倍、そして時価総額は約540億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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