【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アーバネットコーポレーションは売り一巡して調整の最終局面、16年6月期も増収増益基調

銘柄分析

 アーバネットコーポレーション<3242>(JQS)は投資用マンション開発・販売を主力としている。株価は年初来高値圏370円~380円近辺から公募増資を嫌気して反落し、地合い悪化も影響して9日に285円まで下押す場面があったが、その後は売り一巡して310円~320円近辺で推移している。調整の最終局面のようだ。16年6月期も増収増益基調が期待され、高配当利回りも評価して切り返し展開だろう。なお8月6日に15年6月期の決算発表を予定している。

■投資用・分譲用マンションの開発・販売が主力

 東京23区で投資用・分譲用マンションの開発・販売事業を展開している。収益基盤強化に向けて、15年3月に子会社アーバネットリビングを設立(7月操業)した。戸別分譲事業、マンション管理事業、賃貸事業を展開する。

 REIT、ファンド、海外投資家の参入などで投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛だ。日銀の異次元金融緩和、20年東京夏季五輪、脱デフレ、そして日本経済再生の流れも追い風となる。

■海外投資家への直接販売も強化

 都心部での事業用地取得難、土地価格上昇と建設コスト上昇による売上総利益率低下傾向という事業環境に対して、投資意欲旺盛な台湾・シンガポール・香港・中国本土の海外投資家への直接販売など販売手法の多様化、川崎市や横浜市など人口増加・優良地域への開発エリアの拡大、売上総利益率安定化に向けた分譲物件開発の平準化などの施策を強化している。

 海外投資家への直接販売については、14年7月に売買契約を締結した投資用ワンルームマンション「アジールコート銀座イースト」(15年2月末竣工、15年6月期売上計上予定)が第一弾となり、14年11月に投資用ワンルームマンション「アジールコート新宿」(16年3月末竣工、16年6月期売上計上予定)の売買契約を締結した。

 15年2月には、投資用ワンルームマンション「AXAS大森西アジールコート」(15年6月竣工、マンション74戸、店舗1戸)の店舗1戸の売買契約(15年6月期売上計上予定)を締結した。

■16年6月期も増収増益基調

 前期(15年6月期)の連結業績予想(2月16日に2回目の増額修正)は売上高が118億円、営業利益が16億円、経常利益が13億20百万円、純利益が8億50百万円としている。前々期非連結との比較で12.6%増収、34.9%営業増益、33.2%経常増益、11.4%最終増益となる。

 配当予想(2月16日に2回目の増額修正)は同1円増配の年間13円(第2四半期末5円、期末8円)としている。予想配当性向は31.9%となる。なお配当性向については約30%を目安としている。

 第3四半期累計(7月~3月)は売上高が102億22百万円、営業利益が14億47百万円、経常利益が12億62百万円、純利益が8億03百万円だった。第3四半期から連結財務諸表を作成したため前年同期との単純比較はできないが、投資用ワンルームマンションの販売が好調に推移しているようだ。

 14年6月期から継続の2物件(68戸)含む9棟の一部戸別決済438戸を売上計上した。このうち「アジールコート銀座イースト」1棟(39戸)は海外投資家への1棟販売である。またコンパクトマンション「アジールコフレ新中野」1棟(47戸)を全戸売上計上した。

 なお参考値として四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(非連結7月~9月)29億47百万円、第2四半期(非連結10月~12月)18億84百万円、第3四半期(連結1月~3月)53億91百万円、営業利益は第1四半期3億63百万円、第2四半期1億33百万円、第3四半期9億51百万円だった。物件売上計上で四半期収益は変動しやすい収益構造だが、第3四半期は分譲物件売上計上が売上総利益率上昇に寄与した。

 通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が86.6%、営業利益が90.4%、経常利益が95.6%、94.5%で、利益は計画をほぼ達成した水準である。

 投資用ワンルームマンション売上計上戸数の増減で収益が変動しやすいが、15年6月期の売上計上を想定していなかった15年6月竣工「AXAS大森西アジールコート」の店舗部分を6月に売上計上することも考慮すると、通期3回目の増額の可能性もあるだろう。

 今期(16年6月期)については、投資用ワンルームマンション合計682戸の売上計上を予定しているようだ。海外投資家を含めて投資・購入マインドは旺盛であり増収増益基調が期待される。

■株価は売り一巡して調整の最終局面

 なお15年5月に公募増資・株主売り出し・オーバーアロットメントによる第三者割当増資を実施した。公募による新株式発行341万株、株主売り出し113万4000株、およびオーバーアロットメントによる売り出しに伴う新株発行68万1600株で、発行価格は334円だった。増資後の発行済株式総数は2495万8400株となった。調達資金(手取概算額合計12億72百万円)は賃貸不動産の開発資金、販売用不動産の開発資金、借入金の返済に充当する。

 株価の動きを見ると、年初来高値圏370円~380円近辺から公募増資を嫌気して急反落し、さらに全般地合い悪化も影響して7月9日に285円まで下押す場面があったが、その後は売り一巡して310円~320円近辺で推移している。

 7月29日の終値312円を指標面(EPSとBPSは増資後の発行済株式総数で算出)で見ると、前期推定連結PER(会社予想に公募増資を考慮した連結EPS34円06銭で算出)は9~10倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は4.2%近辺、前々期実績PBR(非連結ベースの前々期実績に公募増資を考慮したBPS127円29銭で算出)は2.5倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んで調整局面だが、52週移動平均線がサポートラインとなって下げ渋り感を強めている。調整の最終局面のようだ。16年6月期も増収増益基調が期待され、高配当利回りも評価して切り返し展開だろう。

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