クリナップは上値試す、23年3月期増収増益予想、さらに上振れの可能性

 クリナップ<7955>(東証プライム)はシステムキッチンの大手で、システムバスルームや洗面化粧台も展開している。重点施策として、既存事業の需要開拓と低収益からの転換、新規事業による新たな顧客の創造、ESG/SDGs視点での経営基盤の強化を掲げている。不透明感を考慮して23年3月期小幅増収増益予想としているが、下期の価格改定効果なども勘案すれば通期会社予想は上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は地合い悪化の影響で年初来高値圏から反落の形となったが、利益確定売り一巡感を強めている。指標面の割安感も評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開

 厨房部門(システムキッチン)および浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)を展開している。22年3月期の部門別売上高構成比は厨房部門が81%、浴槽・洗面部門が13%、その他が6%だった。システムキッチンの大手で、同社資料によるとシステムキッチンの市場シェアは20年3月期が17.5%、21年3月期が18.5%、22年3月期が19.8だった。収益面では新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい。

 中高級品に強みを持ち、厨房部門はステンレスキャビネットキッチンのセントロ、ステディア、システムキッチンのラクエラ、コンパクトキッチンのコルティ、浴槽・洗面部門はバスルームのアクリアバス、ユアシス、洗面化粧台のティアリスなどを主力製品としている。特に、22年2月に大規模モデルチェンジを実施した新ステディアの拡販戦略を本格化させている。

 中高級品市場での更なる競争力強化に向けて、20年6月にKITCHEN TOWN YOKOHAMA(横浜市みなとみらい)をオープンし、旗艦ショールーム全国4拠点(東京、横浜、名古屋、大阪)体制とした。22年9月には川越ショールーム(埼玉県川越市)をリニューアルオープン、22年10月には津ショールーム(三重県津市)をリニューアルオープン、22年11月には京都ショールームを移転オープン、22年12月には山形ショールームを移転オープンした。

 販売ルートは工務店の会員登録制組織「水まわり工房」加盟店(22年9月末時点で約4000社)を主力としている。22年3月期の販売ルート別売上構成比(単体ベース)は一般ルート(工務店・リフォーム)が78%、ハウスメーカーが16%、直需(マンション)が6%だった。なお22年10月にはタイ向けシステムキッチンの現地生産を開始した。

■サステナブルビジョンは「人と暮らしの未来を拓く」

 長期ビジョンのクリナップ サステナブルビジョン2030(CSV30)では、2030年度の目標に、財務目標(連結)で2020年度比売上高30%以上、営業利益3.5倍以上、販管費率30%以下、非財務目標で2013年度比温室効果ガス50%削減、女性管理職比率15%、男性育児休暇取得率100%、有給休暇取得率60%を掲げている。

 そして中期経営計画(21~23年度)では、目標数値に最終年度24年3月期の売上高1200億円、営業利益50億円、営業利益率4.2%を掲げている。重点施策としては、既存事業の需要開拓と低収益からの転換、新規事業による新たな顧客の創造、ESG/SDGs視点での経営基盤の強化を推進する。

 既存事業に関しては、水回り3品(キッチン、浴室、洗面)事業での安定した収益確保を目的として中高級品の販売力強化、システムバス販売の底上げ、リフォーム需要獲得、水回り3品で培ったノウハウを活かしたサービス・物流分野での外販ビジネスの拡大、生産変革による原価低減、間接業務の効率化などで利益改善を推進する。

 システムキッチンの新製品では、21年10月にニューノーマル時代の新生活提案キッチン「HIROMA」の本格販売を開始した。キッチンの要素を極力シンプルにしてダイニングテーブルと融合することで、新しいLDKの在り方や暮らしを提案するキッチンテーブルである。また22年2月には主力の中高級価格帯システムキッチンのステディアをモデルチェンジした。

 なお福島県いわき市に生産拠点を構えている。東日本大震災の翌年の12年12月に公益財団法人クリナップ財団を設立し、福島県の復興支援を目的として活動している。21年7月には21年度の奨学生50名を決定した。13年度に開始した奨学支援事業は震災復興支援に有用な人材育成を目指し、9年間で累計奨学生360名となった。22年11月には福島・クリナップ井上記念体育館において、第14回クリナップ杯設立記念大会を開催した。今後も生産拠点である福島県いわき市で活動するクリナップキッズ支援を通じて、地域貢献およびスポーツ振興を図る方針としている。

 22年8月には、大阪中之島美術館において開催中(会期22年8月6日~10月2日)の開館記念展「みんなのまち大阪の肖像」に、当時のステンキャビ流し台「さくらDX」を複製して提供した。積水ハウスが出展した「1970年代の実物大工業化住宅(軽量鉄骨住宅)」に協力した。また22年9月には「サステナビリティレポート2022」を発行した。

■23年3月期増収増益予想

 23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比4.1%増の1180億円、営業利益が5.4%増の40億円、経常利益が4.9%増の44億70百万円、親会社株主帰属当期純利益が1.4%増の32億円としている。配当予想は22年3月期比3円増配の26円(第2四半期末13円、期末13円)としている。連続増配予想である。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比11.6%増の613億10百万円、営業利益が18.9%減の17億57百万円、経常利益が15.7%減の20億32百万円、親会社株主帰属四半期純利益が14.0%減の13億34百万円だった。

 原材料価格・物流費高騰の影響で減益だが、期初予想(売上高566億円、営業利益10億50百万円、経常利益12億60百万円、親会社株主帰属四半期純利益9億円)に対して、売上高が47億10百万円、営業利益が7億07百万円、経常利益が7億72百万円、親会社株主帰属四半期純利益4億34百万円それぞれ上回った。システムキッチン「STEDIA」の好調などで売上高が計画を上回り、各利益の減益幅も縮小して着地した。部門別売上高は厨房部門が12.1%増の490億53百万円、浴槽・洗面部門が4.2%増の80億92百万円、その他が21.7%増の41億64百万円だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が292億06百万円で営業利益が6億26百万円、第2四半期は売上高が321億04百万円で営業利益が11億31百万円だった。

 通期連結業績予想は不透明感を考慮して据え置いている。部門別売上高の計画は厨房部門が4.6%増の954億86百万円、浴槽・洗面部門が1.6%増の152億円、その他が3.4%増の73億14百万円としている。

 23年3月期は小幅増収増益予想だが、下期の価格改定効果(22年9月納品分から価格改定実施)なども勘案すれば通期会社予想は上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。

■株価は上値試す

 株価は地合い悪化の影響で年初来高値圏から反落の形となったが、利益確定売り一巡感を強めている。指標面の割安感も評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。12月26日の終値は636円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS86円74銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の26円で算出)は約4.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1481円01銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約238億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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