シナネンホールディングスは23年3月期3Q累計赤字、通期利益予想を下方修正

(決算速報)
 シナネンホールディングス<8132>(東証プライム)は1月31日の取引時間終了後に23年3月期第3四半期累計連結業績を発表した。原油価格高騰に伴う販売単価上昇などで大幅増収となり、石油事業では差益を確保したが、LPガスや電力の売上総利益悪化に加えて、DX推進に向けたIT関連投資や人財関連投資などの先行投資も影響して赤字だった。通期予想については売上高を上方修正、利益予想を下方修正した。石油事業は差益を確保しているが、電力事業において調達価格が販売価格を上回る状況が続いている。23年3月期は下方修正して大幅減益予想となったが、積極的な事業展開で24年3月期の収益改善を期待したい。株価は戻り高値圏だ。目先的には23年3月期利益予想の下方修正を嫌気する可能性があるが、電力調達コスト上昇は織り込み済みで下値限定的だろう。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■23年3月期3Q累計赤字、通期利益予想を下方修正

 23年3月期第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比28.8%増の2353億97百万円、営業利益が4億65百万円の赤字(前年同期は6億02百万円の黒字)、経常利益が2億30百万円の赤字(同10億87百万円の黒字)、親会社株主帰属四半期純利益は7億76百万円の赤字(同4億90百万円の黒字)だった。

 原油価格高騰に伴う販売単価上昇などで大幅増収となり、石油事業では差益を確保したが、LPガスや電力の売上総利益悪化に加えて、DX推進に向けたIT関連投資や人財関連投資などの先行投資の影響で赤字だった。なお営業外費用では持分法による投資損失2億46百万円を計上、特別利益には固定資産売却益23億53百万円を計上、特別損失には韓国の大型陸上風力発電事業に関連して保有する固定資産の減損損失20億04百万円を計上した。

 エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)は、主力のLPガス・灯油販売において、原油価格やプロパンCPの高騰に伴う販売単価上昇で増収だが、利益面はLPガスや電力の総利益悪化により営業赤字だった。なお新たな収益源確保に向けた取り組みとして、第3四半期より関東エリアにおいて不動産事業を開始した。

 エネルギーソリューション事業(BtoB事業)は、主力の石油事業においてBtoC事業と同様に販売単価が大幅に上昇して増収だった。利益面は全体として増益だった。電力販売において調達コストが上昇したが、石油事業において原油市況変動に対応した仕入施策により差益を確保した。船舶燃料部門における長期契約案件獲得も寄与した。

 非エネルギー事業は全体として増収増益だった。自転車事業(シナネンサイクル)は海外輸送費や原材料価格の高騰に対応して価格改定を実施したが、外部環境が想定以上に悪化して減益だった。シェアサイクル事業(シナネンモビリティPLUS)は「ダイチャリ」の拠点開発を推進し、22年4月の価格改定効果も寄与して好調だった。22年12月末時点のステーション数は3000ヶ所超、設置自転車数は1万台超の規模となった。環境・リサイクル事業(シナネンエコワーク)は建築系廃棄物発生量減少の影響で減収減益だった。抗菌事業(シナネンゼオミック)は抗菌需要一服により減益だった。システム事業(ミノス)は電力自由化に対応した顧客情報システム(電力CIS)が伸長した。建物維持管理事業(タカラビルメンなど)は運営エリアの拡大やマンション共用部清掃業務の拡大などで増収だが、今期受託開始した大型物件の立ち上げに伴う経費先行の影響で減益だった。なお建物維持管理事業を手掛けるグループ4社について、統合に向けた取り組みを進めている。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が711億94百万円で営業利益が50百万円の赤字、第2四半期は売上高が685億46百万円で営業利益が7億70百万円の赤字、第3四半期は売上高が956億57百万円で営業利益が3億55百万円の黒字だった。ガスや灯油の需要期である下期の構成比が高い季節特性がある。

 通期の連結業績予想(1月31日付で売上高を上方修正、各利益を下方修正)は、売上高が22年3月期比27.9%増の3700億円で、営業利益が100.0%減の0百万円、経常利益が96.9%減の1億円、そして親会社株主帰属当期純利益が100.0%減の0百万円としている。配当予想は据え置いて22年3月期と同額の75円(期末一括)としている。

 前回予想(売上高3100億円、営業利益25億円、経常利益28億円、親会社株主帰属当期純利益29億円)に対して、売上高を600億円上方修正したが、営業利益を25億円、経常利益を27億円、親会社株主帰属当期純利益を29億円それぞれ下方修正した。

 売上面は、原油価格高騰に伴って石油事業を中心に販売単価の大幅上昇が継続しているため、前回予想を上回る見込みとしている。利益面は、石油事業では差益を確保して前回予想を上回る見込みだが、電力事業において調達価格が販売価格を上回る状況が続いているため、全体として前回予想を下回る見込みとしている。なお経常利益については持分法による投資損失計上も影響する。親会社株主帰属当期純利益については、第4四半期に投資有価証券売却益の計上を見込んでいるが、韓国の大型陸上風力発電事業に関連した減損損失が影響する見込みだ。

 23年3月期は下方修正して大幅減益予想となったが、積極的な事業展開で24年3月期の収益改善を期待したい。

■株価は戻り高値圏

 株価は戻り高値圏だ。目先的には23年3月期利益予想の下方修正を嫌気する可能性があるが、電力調達コスト上昇は織り込み済みで下値限定的だろう。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。1月31日の終値は3830円、今期予想配当利回り(会社予想の75円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4922円46銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約500億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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