アイリッジは下値固め完了、23年3月期大幅営業増益予想で収益拡大基調

 アイリッジ<3917>(東証グロース)は、企業のOMO領域を支援するデジタル・フィジカルマーケティングソリューションをベースに、デジタル地域通貨プラットフォームなど新規事業領域も拡大し、リアルチャネル保有企業向けDXソリューションカンパニーへの進化を目指している。2月2日には企業向けアプリビジネスプラットフォーム「APPBOX」を発表した。また2月7日~9日に開催される日本最大級DX展「第3回DX EXPO(東京展)」に出展する。23年3月期は大幅営業増益(レンジ)予想としている。FANSHIP導入アプリのMAU増加に伴ってストック型収益が拡大基調であり、さらに子会社フィノバレーのデジタル地域通貨プラットフォーム事業の収益も寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上値が重く小幅レンジでのボックス展開の形だが、大きく下押す動きも見られず下値固め完了感を強めている。調整一巡して上放れの展開を期待したい。なお2月10日に23年3月期第3四半期決算発表を予定している。

■OMOソリューションをベースに事業領域拡大

 企業のOMO(Online Merges with Offline)領域を支援するデジタル・フィジカルマーケティング(スマホをプラットフォームとするOMOソリューション提供、OMOアプリ企画・開発、OMOマーケティング支援)ソリューションをベースに、デジタル地域通貨プラットフォームなど新規事業領域も拡大し、リアルチャネル保有企業向けDXソリューションカンパニーへの進化を目指している。

 デジタルガレージ<4819>との資本業務提携を21年2月に解消し、デジタルガレージから株式80%取得したセールスプロモーションの連結子会社DGマーケティングデザイン(DGMD)については両社の株式保有を継続し、21年4月に社名をQoil(コイル)に変更した。また22年10月には業務システム受託開発を展開するプラグイン(札幌市)を連結子会社化した。

 22年3月期の売上高は、デジタルマーケティング領域中心の単体ベースが33億25百万円、リアルプロモーション領域中心の連結子会社Qoil他(連結数値から単体数値を減じて算出、連結修正含む)が20億98百万円だった。

 なおwithコロナ対応として、オフィスを約5割削減・再編し、出社勤務と在宅勤務を併用するハイブリッド型働き方に最適な環境と勤務体制「iRidge Hybrid Working Style」を構築した。さらに、事業拡大に向けた採用力強化と働きやすさ向上を目的として、22年4月から全社員を対象に、副業や地方移住などの多様な働き方を選べる新人事制度「Work Style for Next iRidge」の運用を開始した。

 22年8月には、NPO法人CLACKが主導する使用済みPC寄贈プロジェクト「Pass the Baton」の趣旨に賛同し、22年7月からPC寄贈企業として参画したと発表している。また22年10月には、Pythonエンジニアのためのカンファレンス「PyCon JP 2022」にGoldスポンサーとして協賛した。

■デジタル・フィジカルマーケティング領域はFANSHIPが主力

 デジタル・フィジカルマーケティング領域は、ファン育成プラットフォーム(顧客データ分析プラットフォーム)FANSHIPを主力としている。スマホ向け位置情報連動型popinfoを19年7月にブランドリニューアルした。さらにFANSHIPを活用し、LINEサービスに組み込んで使えるLINEミニアプリに対応するアプリ開発プラットフォーム「FANSHIP for ミニアプリ」も展開している。

 22年3月期第4四半期時点のFANSHIP導入アプリの合計MAU数(四半期平均)は21年3月期第4四半期比37.7%増の7389万ユーザーとなった。利用ユーザー数に応じた従量課金型月額報酬の積み上げによるストック収益である。FANSHIP導入アプリのMAU増加に伴って、22年3月期第4四半期のストック型収益は前年同期比19.0%増の4億90百万円、ストック売上の構成比は0.5ポイント上昇して33.6%となった。

 22年5月には、LINEが提供する法人向けサービスの販売・開発パートナーを認定する「LINE Biz Partner Program」の「Technology Partner」において「LINE ミニアプリ」部門の初回パートナーに認定された。

 22年9月には、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が提供するAWSパートナーネットワーク(APN)において「AWSアドバンストティアサービスパートナー」認定を取得した。

 22年11月には、ノーコード・低コストで販促用LINEミニアプリを開発・運用できるサービス「Kit-Curu(キットクル)」の提供を開始した。別途ポイントシステムを導入することなく、単体でCRMや集客施策を行える店舗集客LINEミニアプリの販促ツールである。そして12月より天満屋のランニング支援サービス「てんまやRUN」で導入が開始された。23年1月には「Kit-Curu」が南砂町ショッピングセンターSUNAMO(スナモ)で導入され、LINEミニアプリ「SUNAMO+」が公開されたと発表している。

■DXソリューションカンパニーへの進化を目指す

 リアルチャネル保有企業向けDXソリューションカンパニーへの進化を目指し、デジタル・フィジカルマーケティング領域におけるFANSHIPを中心としたクラウド型プロダクトおよびソリューションの強化・拡充、顧客ニーズに合わせたプロフェッショナルサービスによるDX支援の強化を両輪として、新規事業の立ち上げ・収益化も推進している。

 中期的な目標値としては、26年3月期の売上高133億円+αを目指すとしている。利益面については、当面は採用費用や新規事業への先行投資費用の増加が見込まれるが、販管費を適切にコントロールして、営業利益は毎期着実な増益を目指すとしている。

 22年1月にはQoilが一般消費財メーカー等に向けて、LINE上でリピート購入とマーケティングDXを実現する「購入スタンプミニアプリforメーカー」の提供を開始した。デジタルスタンプカード機能で特典が受けられる仕組みを通じて長期的な顧客接点を形成し、LINEを通じたOne to Oneマーケティングによるファン育成(顧客定着化)を実現する。

 また22年2月にはQoilが、脳波計測に基づく「足を止める」POP制作から店頭設置代行、店頭データに基づく効果検証までをワンストップで提供する「ニューロクリエイティブ&店頭最適化パック」の提供を開始した。

 22年11月にはQoilがCAMPFIREの公式パートナーとして、一般消費財メーカー等に向けた購入型クラウドファンディングプロモーション支援メニューFUND FAN FUN(ファン ファン ファン)の提供を開始すると発表した。

■デジタル地域通貨プラットフォームの展開を加速

 フィンテック領域(デジタル地域通貨)は子会社フィノバレーが、決済システムを中心としたデジタル地域通貨プラットフォームMoneyEasyを展開している。ファン育成プラットフォームFANSHIPと組み合わせて、マーケティング機能を融合した決済基盤構築も可能となる。地域経済活性化施策として自治体におけるデジタル地域通貨需要が高まっていることも背景に事業展開を加速している。

 システム提供実績として、17年の岐阜県飛騨・高山地域「さるぼぼコイン」を皮切りに、千葉県木更津市「アクアコイン」、長崎県南島原市「MINAコイン」、東京都世田谷区「せたがやPay」、岐阜県「ぎふ旅コイン」、長野県松本市「まつもとコイン」、熊本県人吉市「きじうまコイン」、大分県大分市「おおいたPay」などがある。

 21年6月には「大阪スマートシティパートナーズフォーラム」の第2期プロジェクトのインバウンド・観光再生に関するコーディネーター企業に選出された。21年11月には神戸市「大学発アーバンイノベーション神戸」選定事業として採択され、地域通貨アプリ実証実験「すいすいコイン」のプラットフォームとして採用された。水道筋商店街周辺の加盟店で実証実験を行う。

 21年12月にはフィノバレーが、自治体向けの新たなデジタル通貨サービスの共同開発に向けて三菱電機と資本業務提携した。スマートシティ/スーパーシティ関連システムの構築を目指す。22年5月には、フィノバレーが慶応大学発スタートアップのLiquitous(リキタス)と業務提携した。自治体のDXや住民参加型まちづくりに向けて協業する。

 22年7月には福島県磐梯町の「ばんだいコイン」、22年10月には東京都板橋区の「いたばしPay」、東京都府中市の「ふちゅチケ」、長崎県佐世保市の「させぼeコイン」の運用を開始した。

 23年1月には岡山県真庭市でMoneyEasyを採用したデジタル地域通貨「まにこいん」が開始された。市内に設置予定のチャージ機等からの現金チャージで誰でも使える「まにこいんPay」のみで開始後、来年度には中国銀行とトマト銀行の銀行口座と紐付けてチャージやユーザー同士の送金がおこなえる「まにこいんBank」にも対応して本格稼働予定である。

 また23年1月には、富山県が実施する全国旅行支援事業「富山で休もう。とやま観光キャンペーン」における電子クーポンアプリ「とやマネー」のプラットフォームとして採用された。

■新規事業領域も育成

 新規事業領域の育成も強化している。18年9月には、AIスピーカーAlexaスキル開発運用クラウドNOIDの提供を開始した。プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスである。22年5月にはNOIDを活用して森永乳業の育児相談などAlexaスキル7種を開発支援、22年7月には大塚製薬のAlexaスキル「ウル・オスお試し」を開発支援した。

 20年11月にはソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社MONETが設立したMONETコンソーシアムに参画した。MaaS事業への取り組みを強化する。また欧州系最大の戦略コンサルティングファームの日本法人ローランド・ベルガーの価値共創ネットワーク(VCN)に参画した。

 21年2月には、小売業界向けSaaS型オンラインプラットフォームを提供するFlow Solutionsと資本業務提携した。またオンライン・モンスターと提携し、接客・相談・学習指導など対面サービスを提供する企業向けに、対面サービスのオンライン化を実現するビデオ通話機能付マッチングプラットフォームの提供を開始した。さらに、メディカルネット(20年5月に歯科向けオンライン診療サービスの共同開発で業務提携)と共同で、マッチングプラットフォームを利用したオンライン歯科相談サロン「デンタルオンラインサロン」と、業界初の歯科用口腔内カメラを活用した歯科向けオンライン診察サービス「デンタルオンライン」の提供を開始した。

 21年5月には、DXプロジェクトに必要な人材調達・稼働管理などの業務効率を改善し、外部企業とのコラボレーションを促進する開発リソース最適化支援プラットフォーム「Co―Assign」の提供開始を発表した。プロジェクト成功の確度を高める体制づくりを支援するクラウドサービスとして、24年度中の500社導入を目指すとしている。22年5月にはペタビット(神戸市)が「Co―Assign」を導入した。さらに22年7月にはフラー(新潟市)が「Co―Assign」を導入したと発表している。22年11月には「Co―Assign」でプロジェクト予実管理機能の提供開始を発表した。

 21年8月にはワイヤ・アンド・ワイヤレス、データセクション、Flow Solutionsおよび子会社Qoilと、リテールDXプラットフォームの共同展開に関して業務提携した。小売企業のDXを支援する。

 21年12月にはFlow Solutions、三菱商事UBSリアルティ(現KJRマネジメント)と、21年11月にオープンしたサステナブル&OMO体験ポップアップストア「mozo SUSTAINABLE PARK」の実証実験プロジェクトに参画した。

 22年10月には、東急建設<1720>と共同で、RFID(無線自動識別)タグとスマートフォンアプリを活用した建設DXサービス「工具ミッケ」の販売を開始した。工事現場で使う工具の照合作業を自動化し、管理業務の縮減と生産性向上を実現するDXサービスである。鉄道工事現場を中心に22年度中の20ヶ所程度展開を目指すとしている。

 22年11月にはNTTデータ「ことらWebViewサービス」の開発支援・グロースハックパートナーとして開発支援したと発表している。

 2月2日には企業向けアプリビジネスプラットフォーム「APPBOX」を、23年4月より提供開始すると発表した。アプリで使う各種機能群(SDK)を組み合わせることで、ゼロからのアプリ開発や既存アプリの機能拡張、マーケティング施策まで、アプリビジネスに必要なすべてを支援するプラットフォームである。他社で開発したアプリの機能拡張にも活用できるなどの特徴があり、3年後に200社導入を目指すとしている。

■23年3月期大幅営業増益(レンジ)予想

 23年3月期の連結業績予想(リアルプロモーション領域へのコロナ禍の影響の不透明感を考慮して、売上高と営業利益はレンジ予想、経常利益と親会社株主帰属当期純利益は黒字計上を見込んでいるが非開示)は、売上高が63億円~68億円(22年3月期比16.2%増~25.4%増)で、営業利益が3億75百万円~4億75百万円(同9.6%増~38.8%増)としている。人材採用や新規事業などの先行投資を継続するが、デジタルマーケティング領域の成長が牽引して大幅増収営業増益(レンジ)予想としている。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比9.3%減の21億91百万円、営業利益が26百万円の赤字(前年同期は80百万円の黒字)、経常利益が23百万円の赤字(同79百万円の黒字)、親会社株主帰属四半期純利益が7百万円の赤字(同43百万円の黒字)だった。

 OMO領域オフラインマーケティング関連の子会社Qoilがコロナ禍の影響で減収となり、新規事業領域への先行投資も影響して赤字だった。ただし全体として概ね計画水準だったとしている。

 OMO領域オンラインマーケティング関連が中心の単体ベース売上高は4.7%増の15億42百万円だった。スマホアプリ開発の受注が高水準に推移してストック型収益も伸長した。第2四半期(平均)のFANSHIP導入アプリのMAU(FANSHIP導入アプリを月に1回以上起動しているユーザー数、四半期平均)は前年同期比36.3%増の8145万ユーザーとなった。

 OMO領域オフラインマーケティング関連の子会社Qoil+デジタル地域通貨関連の子会社フィノバレーの売上高(連結数値から単体数値を減じて算出、連結修正含む)は31.2%減の6億49百万円だった。フィノバレーは増収で2Qに黒字転換したが、Qoilはコロナ禍の影響が継続して新規顧客獲得が遅れた。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が10億27百万円で営業利益が45百万円の赤字、第2四半期は売上高が11億63百万円で営業利益が18百万円の黒字だった。ストック型収益(月額報酬・ライセンス等、3ヶ月以上の準委任契約)は第1四半期が4億57百万円、第2四半期が4億86百万円、ストック型収益の売上構成比は第1四半期が44.5%、第2四半期が41.9%だった。FANSHIP導入アプリのMAU増加に伴ってストック型収益が拡大基調である。

 通期の連結業績予想は据え置いている。人材採用や新規事業領域への先行投資を継続するが、OMO領域オンラインマーケティング関連の成長が牽引して大幅営業増益予想としている。OMO領域オフラインマーケティング関連がコロナ禍の影響を受けているため第2四半期累計は赤字だったが、大型案件の増加により期初時点で下期偏重の計画としている。FANSHIP導入アプリのMAU増加に伴ってストック型収益が拡大基調であり、下期は子会社フィノバレーのデジタル地域通貨プラットフォーム事業の収益も寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は下値固め完了

 株価は上値が重く小幅レンジでのボックス展開の形だが、大きく下押す動きも見られず下値固め完了感を強めている。調整一巡して上放れの展開を期待したい。2月3日の終値は736円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS471円41銭で算出)は約1.6倍、そして時価総額は約52億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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