【アナリスト水田雅展の銘柄分析】星光PMCは下値固め完了、今期収益改善期待で出直り

銘柄分析

 製紙用薬品の星光PMC<4963>(東1)の株価は、10月の直近安値864円から反発して1000円台を回復する場面もあったが、買いが続かず概ね900円~1000円近辺でモミ合う展開だ。ただし10月安値圏まで下押す動きは見られない。下値固めが完了して来期(15年12月期)の収益改善期待で出直り展開だろう。

 DIC<4631>の子会社で製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業を展開している。高付加価値商品の拡販、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)、導電性ナノ材料(銀ナノワイヤー)、光学弾性樹脂(OCA)など成長市場・新分野開拓の戦略を推進している。さらに事業領域拡大に向けて14年4月、興人フィルム&ケミカルズの化成品事業を承継したKJケミカルズを子会社化した。

 次世代素材CNFは、すべての植物の植物細胞壁の骨格成分であるセルロースをナノサイズまで細かくほぐすことにより得られる繊維である。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上強く、熱による変形が少ないなどの特徴を持ち、樹脂の補強材として機能させることにより、自動車用樹脂の強度・寸法安定性向上や金属部材からの置き換え、家電・モバイル機器の軽量化などでの需要が期待されている。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のCNF開発プロジェクトの中核企業として早期事業化を目指している。13年2月には経済産業省イノベーション拠点立地推進事業に採択された。14年6月にはナノセルロースの研究開発、事業化、標準化を促進するため、産官学連携型のコンソーシアム「ナノセルロースフォーラム」が設立され、当社を含めて100社以上が参画している。そして11月21日には、竜ヶ崎工場におけるCNFの実証生産設備(パイロットプラント)建設工事完了と、本格的な変性CNFサンプルの提供開始を発表した。

 また11月21日には、千葉工場内の銀ナノワイヤー製造設備建設が7月に完了し、9月から本格的なサンプル出荷を開始したと発表している。直径がナノサイズ、長さがミクロンサイズの繊維状の銀を溶液中に分散させたもので、透明導電性電極を形成する。ウェアラブル端末や大型ディスプレイへの利用が期待されている。

 今期(14年12月期)の連結業績見通しは前回予想(7月31日に減額修正)を据え置いて、売上高が242億70百万円、営業利益が4億円、経常利益が4億40百万円、純利益が60百万円の赤字としている。9カ月決算だった前期との単純比較はできないが、前年同期間(13年1月~12月)との比較で見ると12.9%増収、56.7%営業減益、65.7%経常減益で、純利益は9億16百万円悪化となる。配当予想については前回予想(2月12日公表)を据え置いて、前期(年間9円)と実質的に同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)としている。

 ロジンなど原材料価格上昇と製品価格への転嫁遅れ、プロダクトミックスの悪化、新規開発経費の負担増、中国事業の収益悪化などで営業減益となり、営業外での為替差損益の悪化、中国事業に係る固定資産減損損失計上も影響して最終赤字の見通しだ。第3四半期累計(1月~9月)は売上高が175億68百万円、営業利益が2億円、経常利益が2億95百万円、純利益が1億46百万円の赤字となり、通期見通しに対する進捗率はやや低水準だった。

 ただし来期(15年12月期)は、製紙用薬品の販売数量増加、KJケミカルズの通期連結、原材料価格上昇に対する製品価格是正の浸透、プロダクトミックス改善、KJケミカルズの減価償却費減少、中国事業の損益改善本格化、営業外損益や特別損益の改善などで収益改善が期待される。

 中期経営目標としては18年12月期売上高350億円(既存事業245億円、海外事業70億円、新規事業35億円)、営業利益35億円、売上高営業利益率10%を掲げている。

 株価の動きを見ると、10月の直近安値864円から反発して1000円台を回復する場面もあったが、買いが続かず概ね900円~1000円近辺でモミ合う展開だ。11月21日発表の変性CNFサンプルの提供開始に対する反応も限定的のようだ。ただし10月安値圏まで下押す動きは見られない。下値固めが完了して調整の最終局面だろう。

 12月12日の終値955円を指標面で見ると、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.3%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS663円98銭で算出)は1.4倍近辺である。週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、10月安値から徐々に下値を切り上げている。調整のほぼ最終局面であり、下値固めが完了して来期の収益改善期待で出直り展開だろう。

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