ネオジャパンは反発の動き、24年1月期減益予想だが上振れの可能性

 ネオジャパン<3921>(東証プライム)は自社開発のグループウェアdesknet‘s NEOのクラウドサービスを主力として、製品ラインアップ拡充による市場シェア拡大戦略、アライアンス戦略、東南アジア市場開拓戦略を推進している。6月5日には、OpenAI社が提供するChatGPTとのセキュアな連携で「AIとの協業」を実現するビジネスチャットChatLuckを23年夏に提供開始すると発表した。24年1月期はクラウドサービスが牽引して増収だが、広告宣伝費や人件費の増加で減益予想としている。ただし保守的な印象が強く上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は下値を切り上げて反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■自社開発グループウェアのクラウドサービスが主力

 ビジネス・ITコミュニケーションツール開発企業である。自社開発のグループウェアdesknet‘s NEOのクラウドサービス(月額課金収入)を主力に、大企業向け中心のプロダクト(パッケージソフト販売のライセンス収入およびサポートサービス収入)も展開している。

 19年8月にはシステム開発のPro-Spireを子会社化した。22年10月には、現代ビジネスパーソンのコミュニケーション実態を把握・研究すべくNEOビズコミ研究所を新設した。

 海外展開は19年6月米国子会社DELCUIを設立、19年12月マレーシアに合弁会社NEOREKA ASIAを設立、21年2月タイに子会社Neo Thai Asiaを設立した。当面は投資が先行するが、ASEAN全域においてグループウェアdesknet‘s NEOブランドの確立を目指す。

 23年1月期売上高構成比は、グループウェアを中心とするビジネスICTツールのソフトウェア事業が70%(クラウドサービスが45%、プロダクトが24%、技術開発が1%)、子会社Pro-Spireのシステム開発サービス事業が30%、海外事業が0%、調整額が▲%、営業利益構成比はソフトウェア事業が99%、システム開発サービス事業が8%、海外事業が▲7%、調整額が▲0%だった。ソフトウェア事業のストック型売上比率は77%(22年1月期は73%)だった。23年1月期第4四半期のARRは前年比10.3%増加の33億51百万円となった。なお収益面では下期の構成比が高い傾向がある。

 22年4月にはバスケットボール女子日本リーグ(Wリーグ)の東京羽田ヴィッキーズとスポンサーシップ契約を締結した。22年11月にはクラウドサービス情報開示認定機関ASPISより、クラウドサービスにおける信頼・安全性の推進に多大なる貢献をしたサービス・事業者として最優秀・資格継続賞を受賞した。08年7月に7番目の事業会社として情報開示認定企業に認定されて以来、この資格を14年維持している。

 23年2月にはIR室を新設して齋藤晶議代表取締役社長が管掌すると発表した。これまで以上にIRへの取り組みを推進する方針だ。23年3月には経済産業省と日本健康会議が推進する健康経営優良法人認定制度「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に4年連続で認定された。23年4月には神奈川県「かながわSDGsパートナー」に認定された。また、横浜市のSDGs認証制度Y-SDGsにおいて上位認証である「Superior(スーペリア)」を取得した。

 さらにESG経営への取り組みを強化するため、23年5月にサステナビリティ委員会を設置、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明した。

 また5月24日には、芸人や動画クリエイターとしても活躍中の江頭2:50を起用し、グループウェアdesknet‘s NEOのTVCMを全国主要5エリアで放映開始した。なお23年10月29日に開催される横浜マラソン2023に大会協賛予定である。

■グループウェアdesknet‘s NEOは使いやすさが強み

 グループウェアdesknet‘s NEOは、ローカライゼーション(日本語、日本の商習慣やビジネス習慣など)に対応した27の基本機能を備え、多機能・使いやすさ・高品質・低価格を強みとしている。23年3月にはdesknet‘s NEO最新バージョン7.5の提供を開始した。利用ユーザーの声を受けて15機能・50項目以上の機能改善を行った。

 グループウェアdesknet‘s NEOの累計ユーザー数(クラウド版契約ユーザー数とパッケージ版販売ユーザー数の合計)は、23年1月期末時点で前期末比21万ユーザー増加の484万ユーザーとなった。業種・業態・規模を問わず幅広く企業・官公庁・自治体に採用され、自治体・政府機関1100以上(都道府県庁18含む)に導入されている。中長期的には累計ユーザー数1000万ユーザーを目指すとしている。なお23年1月期末時点のdesknet‘s NEOクラウドのユーザー数は前期末比3.1万人増加の48.3万人となった。解約率は概ね0.2%~0.4%程度で推移している。

 大規模導入事例として、21年7月にはカー用品専門店チェーンのイエローハット<9882>に、グループが運営する全国740店舗の従業員・スタッフをつなぐ情報共有基盤として、グループウェアdesknet‘s NEO大規模パッケージ版(3000ライセンス)が採用された。22年7月には、神奈川県横浜市が整備する最大6万人が利用する市区局共通グループウェアとして、desknet‘s NEOが全面的に採用(東芝デジタルソリューションズが市区局共通グループウェア構築事業を受託)された。

■製品ラインアップ拡充

 成長戦略として国内累計販売ユーザー数1000万ユーザー、グループウェア国内トップシェア、売上高100億円を目指し、グループウェアdesknet‘s NEOを核とするエンタープライズ向け製品ラインアップ拡充戦略、市場シェア拡大戦略、シナジーが見込めるアライアンスへの戦略投資、マレーシアの合弁会社を拠点とするクラウドサービスの東南アジア市場開拓戦略などを推進している。

 製品ラインアップ拡充戦略としては、ノーコードアプリ作成ツールAppSuite、新しいコミュニケーションツールとしてのビジネスチャットChatLuckを提供し、グループウェアdesknet‘s NEOとの連携も強化している。

 23年1月には、国や地方自治体、民間企業などが一体となって、日本全国あらゆる人のスキルをアップデートする“リスキング”に取り組む新たな試みである「日本リスキングコンソーシアムに、リスキングパートナーとしてトレーニングプログラムの提供を開始すると発表した。ノーコードツールAppSuiteを使いこなすためのメニューからスタートし、順次追加していく予定としている。

 23年2月には、法人向けIT製品・サービス比較サイトITトレンドが選出する2022年下半期Good Productバッジにおいて、グループウェアdesknet‘s NEOがグループウェア部門を受賞した。

 23年3月には、スマートキャンプ社が表彰するBOXIL SaaS AWARD Spring 2023において、グループウェアdesknet‘s NEOおよびノーコードアプリ作成ツールAppSuiteが、それぞれ3部門で10の賞を受賞した。

 23年4月には、2022年に引き続き、経済産業省のIT導入補助金2023においてIT導入支援事業者として採択され、グループウェアdesknet‘s NEO、ノーコードアプリ作成ツールAppSuite、ビジネスチャットChatLuckが補助金の対象ツールとして認定された。

 また23年4月には、アイティクラウドのIT製品比較・レビューサイトであるITreview Grid Awaed 2023 Springにおいて、グループウェアdesknet‘s NEO、ビジネスチャットChatLuck、ノーコードアプリ作成ツールAppSuiteの主力3製品が2期連続8部門受賞した。

 6月1日には、サイバーソリューションズが提供するクラウドメールセキュリティサービス「MAILGATES Σ」の販売を開始した。さらに6月5日には、OpenAI社が提供するChatGPTとのセキュアな連携で「AIとの協業」を実現するビジネスチャットChatLuckを23年夏に提供開始すると発表した。これに先行してChatLuck最新バージョンの提供を開始した。

■アライアンスも活用

 22年3月には、東京都多摩市が実施した「令和3年度多摩市民間提案制度」において、desknet‘s NEOとAppSuiteで作成した「ワクチン接種記録等の効率化と工数削減に向けた管理向上」事業が採用候補に認定された。ワクチン関連の行政の業務効率化において採用された事例としては、茨城県つくば市「つくば市新型コロナワクチン配送システム」に続く2例目となる。

 22年5月には、中小企業のDXを支援するAppSuiteアプリ集「ネコの手アプリ」シリーズを提供するシステムアプローチ(愛知県名古屋市)と、AppSuiteアプリの開発・販売活動で連携した。

 22年11月には、横浜市が募集した民間企業のデジタル技術を活用して行政サービスのDX化を進めるプロジェクト「YOKOHAMA Hack!」の第1回実証実験事業者に選定され、横浜市と共同で「要配慮施設利用者の安全を守る避難確保計画の取組強化」の実証実験を開始した。AppSuiteとdesknet‘s NEOを活用する。そして23年4月には実証実験の結果、システム化により作業工数41%削減効果が得られたとリリースしている。

 22年12月には神奈川県鎌倉市の市区局共通の情報共有基盤として、グループウェアdesknet‘s NEO、ビジネスチャットChatLuck、業務アプリ作成ツールAppSuiteの3製品が実証実験を終えて採用決定した。

■上場維持基準適合に向けた計画書

 なお、23年1月31日時点で流通時価総額がプライム市場の上場維持基準に適合しない状況となったため、23年4月26日付で上場維持基準適合に向けた計画を作成・公表した。

 ストック型売上の安定的な成長を基盤として、業績の向上(中期業績目標26年1月期売上高78.7億円、経常利益17.0億円、当期純利益11.7億円の達成)を図るとともに、株主還元施策の強化、IR活動強化による認知度向上、ESG経営/サステナビリティへの取り組み強化、流通株式比率の向上などを推進し、企業価値の向上(時価総額の増大)に努めるとしている。計画期間は26年1月末までとしている。

■24年1月期減益予想だが保守的

 24年1月期の連結業績予想は、売上高が23年1月期比5.9%増の63億59百万円、営業利益が24.4%減の9億37百万円、経常利益が28.8%減の9億51百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が22.6%減の6億29百万円としている。

 クラウドサービスが牽引し、子会社のシステム開発事業も回復傾向となって増収だが、利益面は認知度向上に向けてTVCMなどの広告宣伝投資を継続するため広告宣伝費が増加し、従来以上の賃上げに伴う人件費増加なども影響して減益予想としている。ただし保守的な印象が強く上振れの可能性がありそうだ。

 配当予想は23年1月期比3円増配の23円(期末一括)としている。株主優待制度を23年1月末対象で廃止したが、配当については株主優待制度のコスト見合い1円50銭と、さらに1円50銭を加えて合計3円増配としている。23年1月期の年間20円には創立30周年記念配当1円が含まれているため、普通配当ベースでは4円増配となる。8期連続増配予想で予想配当性向は54.5%となる。

 また、広告宣伝費については26年1月期まで24年1月期と同水準の投資を継続するが、業績面は24年1月期をボトムとして、認知度向上効果などで26年1月期の売上高78億75百万円、営業利益16億95百万円を中期業績目標として計画している。配当は年間31円(配当性向約40%)を目標としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株価は反発の動き

 株価は徐々に下値を切り上げて反発の動きを強めている。週足チャートで見ると抵抗線となっていた26週移動平均線を突破する動きだ。出直りを期待したい。6月5日の終値は958円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS42円20銭で算出)は約23倍、今期予想配当利回り(会社予想の23円で算出)は約2.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS383円36銭で算出)は約2.5倍、そして時価総額は約143億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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