ベステラは利益確定売り一巡、24年1月期黒字転換予想

 ベステラ<1433>(東証プライム)は、製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。7月21日には、岡山県倉敷市を拠点にプラント建設・メンテナンス・躯体工事を行うオダコーポレーションについて、株式譲渡契約締結・子会社化(株式譲渡実行日8月1日予定)を発表した。24年1月期は堅調な受注見込案件の状況を踏まえて大幅増収・黒字予想としている。老朽化プラント解体工事の増加などで中期的に事業環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は急伸した6月の年初来高値圏から反落したが、利益確定売り一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■鋼構造プラント設備解体のオンリーワン企業

 製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。製鉄・電力・ガス・石油・石油化学業界(製鉄所・発電所・石油精製・石油化学設備など)向けを主力とするプラント解体工事、および特定化学物質・アスベスト・ダイオキシン・土壌汚染などの環境関連対策工事を展開し、主要顧客はJFEグループ、日本製鉄グループ、東京エネシス、IHIグループなどとなっている。

 20年2月には、インターアクション<7725>から3Dスキャン・3Dモデリング事業およびプラント設計事業を譲り受け、新会社3Dビジュアルとして事業を開始した。21年12月には、アスベスト対策やダイオキシン対策など環境汚染対策工事に関して特殊な工事技術を保有する矢澤(東京都渋谷区)を子会社化した。

 7月21日には、水島コンビナートを抱える岡山県倉敷市を拠点に、石油精製装置や化学装置などのプラント建設・メンテナンス・躯体工事を行うオダコーポレーション、およびオダコーポレーションの100%子会社でマンションや商業ビルの大規模修繕を行うTOKENについて、株式譲渡契約締結・子会社化(株式譲渡実行日8月1日予定)を発表した。

 なお20年9月にリバーホールディングスを持分法適用関連会社化したが、リバーホールディングスがタケエイと21年10月1日付で共同持株会社TREホールディングス<9247>を設立して経営統合したため、リバーホールディングスは持分法適用関連会社から除外された。業務提携関係は継続するとしている。

 23年1月期のプラント解体事業の完成工事高は8.6%減の52億42百万円、業界別構成比は電力が14%、製鉄が27%、石油・石化が27%、環境が15%、ガスが5%、3Dが2%、その他が10%だった。構成比は大型案件によって変動するが、環境関連の工事需要の高まりや矢澤のグループ化で環境分野の構成比が上昇傾向となっている。また顧客の設備投資計画に応じた季節性があり、下期に完成工事高が増加する傾向が強い。なお完成工事高のうち元請工事は13億14百万円で元請比率は25.1%(同19億68百万円で34.3%)だった。

 23年1月期の受注高は46.3%増の70億円、23年1月期末時点の受注残高は33億52百万円となった。受注残高の業界別構成比は電力9%、製鉄10%、石油・石化74%、環境5%、ガス1%、その他1%となっている。受注残高ベースでは大型案件の影響で石油・石化の構成比が高くなっている。

■優良な顧客基盤や特許工法・知的財産の保有が強み

 大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的な解体マネジメント、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。技術関連では、球形ガスホルダー解体「リンゴ皮むき工法」や火力発電所等の「ボイラ解体方法」の特許を取得し、遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」も開発している。さらに風力発電設備解体需要に応えるため、他社に先駆けて「マトリョーシカ式工法」「タワークレーン工法」「転倒工法」の特許工法を開発している。

 22年7月には日立パワーソリューションズと国内陸上風力発電設備の解体工事において、ベステラが保有する「発電用風車設備解体に関する特許技術(転倒工法)の実施許諾契約を締結した。22年9月には民間住宅解体分野において全国約1600社の専門工事会社と施主をマッチングするサービス「クラッソーネ」を運営するクラッソーネと資本業務提携(12.5%出資)した。

 22年10月には、クレーン測定ロボットの開発完了と、当ロボットを用いたシステムによるクレーンレール測定サービスの提供開始を発表した。クレーン検査方法のデジタル技術による効率化、安全性の向上を目的としてイクシス(神奈川県川崎市)と共同開発し、実証実験が終了したため自社およびプラント・工場設備保全会社向けに本格運用する。

 22年12月には、一般的にガスタンクと呼ばれる球形のガスホルダーおよびこれと用途が類する円筒形タンク等の解体に関して、三谷産業<8285>と業務提携した。同社の解体技術と三谷産業のショットブラスト(表面塗装剥離)技術を融合し、除去が困難なPCB含有塗膜を安全に除去する技術を確立する。

 また22年12月には同社が保有している、陸上風力発電設備の転倒に用いる「発電用風車設備解体に関する特許技術」(転倒工法)に関して、長崎県松浦市において転倒を実施したと発表している。転倒方向を確実に制御できるため安全性が高く、大型クレーンの回送や組み立てなどで生じる費用も削減できる工法である。

■新中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」

 受注環境は良好である。第5次エネルギー基本計画や、脱炭素化に向けた2050年カーボンニュートラル宣言の国策なども背景として、1960年代の高度成長期以降に建設された老朽化プラントの解体工事の増加が予想され、同社試算の市場規模は電力関連が約13兆円、製鉄関連が約2兆円、石油・石油化学関連が約8兆円、その他製造業が約20兆円+αとしている。

 22年12月公表の新中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」では、基本方針に「脱炭素経営と企業風土の変革による収益力向上」を掲げ、数値目標としては26年1月期売上高120億円(脱炭素解体ソリューション90億円、DXプラントソリューション30億円)、営業利益12億円、当期純利益8億80百万円、1株当たり純利益(EPS)99円、ROE(自己資本利益率)13%、工事監督員数92人(22年1月期実績44人)としている。従来の「中期経営計画2025」の26年1月期目標値に対して、売上高を20億円、営業利益を2億円、当期純利益を1億28百万円、それぞれ上方修正した。

 重点戦略として、工法によるイノベーションとしての脱炭素解体ソリューション、IT活用によるイノベーションとしてのDXプラントソリューション、さらなるイノベーションを産み出す土台としての人事戦略を掲げている。脱炭素経営を通じて企業価値・ブランド向上を実現するため、脱炭素解体に資する工法開発(リンゴ皮むき工法や風車転倒解体に続く脱炭素解体工法の開発)、解体工事のリユース・リサイクル率向上(脱炭素解体の要素技術確立とトレーサビリティ確保による付加価値創出)、脱炭素経営に紐づいた新規ビジネス創出(プラント解体工事から派生する工事以外のビジネス創出)を推進する。

 投資計画としては3年総額35億円の積極投資を実行する。内訳は、脱炭素解体ソリューションで13億円(工法開発、実証実験、M&A)、DXプラントソリューション16億50百万円(AUSE、天井クレーンロボ、遠隔・無人化施工、ロボット・システム開発、M&A)、人事戦略5億50百万円(採用・紹介、教育、M&A)としている。株主還元については配当性向40%を目安として安定的な配当を実施する。

 21年12月には指名・報酬委員会の設置、株主総会の議決権行使の電子化および機関投資家向け議決権電子行使プラットフォームへの参加、サステナビリティ基本方針制定およびサステナビリティ委員会設置を発表した。コーポレート・ガバナンス体制の一層の充実・強化を図り、SDGsへの取り組みを強化する。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。

 22年12月公表の新中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」で掲げた重点施策の着実な遂行によって業績目標の達成に取り組むとともに、プラント解体業界のリーディングカンパニーとしての社会的サステナビリティへの貢献と利益成長の両立、リスク管理体制の強化やコンプライアンスの徹底などコーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組むことで、さらなる企業価値の向上(時価総額の向上)を図る。流通株式数については第三者割当による第9回および第10回新株予約権(行使価額修正条項付)の行使により、流通株式数の増加を見込んでいる。これらの取り組みによって26年1月期までにプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。

 23年4月にはプライム市場上場維持基準適合に向けた計画に基づく進捗状況を開示した。23年1月31日時点で流通株式時価総額は55.4億円で基準を充たしていないが、流通株式数は21年6月30日時点の4万6109単位、22年1月31日時点の5万2101単位から、23年1月31日時点では5万7838単位まで増加した。流通株式比率は21年6月30日時点の55.1%、22年1月31日時点の59.5%から、23年1月31日時点では64.3%まで上昇した。

 引き続き「脱炭素アクションプラン2025」で掲げた重点施策の着実な遂行によって業績目標の達成に取り組み、企業価値の向上(時価総額の増大)に努め、26年1月期までにプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。

■24年1月期は大幅増収・黒字転換予想

 24年1月期の連結業績予想は売上高が23年1月期比42.9%増の78億円、営業利益が5億10百万円の黒字(23年1月期は2億15百万円の赤字)、経常利益が5億86百万円の黒字(同94百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が4億円の黒字(同64百万円の赤字)としている。配当予想は、23年1月期と同額の20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。予想配当性向は44.3%である。

 第1四半期(2月~4月)は売上高が前年同期比8.6%減の15億37百万円、営業利益が35百万円の赤字(前年同期は1億96百万円の黒字)、経常利益が37百万円の赤字(同1億97百万円の黒字)、親会社株主帰属四半期純利益が31百万円の赤字(同1億09百万円の黒字)だった。前期に受注した一部の低利益工事が利益押し下げ要因となって赤字だが、概ね計画水準だった。

 プラント解体事業の完成工事高は9.0%減の14億75百万円だった。製鉄所の高炉改修に伴う継続的な工事の受注や、石油化学業界での大型元請工事の進捗で概ね堅調だった。業界別の構成比は電力が11%、製鉄が31%、石油・石化が43%、環境が7%、ガスが4%、3Dが2%、その他が2%(前年同期は電力が9%、製鉄が25%、石油・石化が33%、環境が19%、ガスが2%、3Dが2%、その他が10%)だった。完成工事高のうち、元請工事の金額は4億19百万円で元請比率は17.2%(同4億13百万円で33.9%)だった。

 受注高は4.4倍の74億27百万円となり、過去の年単位の受注額をすでに第1四半期で上回った。そして第1四半期末時点の受注残高は過去最高の93億03百万円となった。なお受注残高の業界別構成比は、電力が17%、製鉄が49%、石油・石化が32%、環境が2%(前年同期は電力が27%、製鉄が20%、石油・石化が30%、ガスが7%、環境が6%、その他が10%)となっている。

 なお、その他事業(人材サービス事業など)の売上高は4.0%増の62百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。堅調な受注見込案件の状況を踏まえて大幅増収・黒字予想としている。第1四半期は赤字だったが、受注は過去の年単位の受注額を上回り、受注残高は過去最高額となっている。老朽化プラント解体工事の増加などで中期的に事業環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年1月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年1月31日現在1単元(100株)以上保有株主を対象に保有株式数に応じてクオカードを贈呈する。なお23年1月31日対象分から制度拡充(詳細は会社HP参照)を実施した。5単元(500株)以上保有株主を対象とするベステラ・プレミアム優待倶楽部を新設し、保有株式数に応じて商品に交換可能な優待ポイントを贈呈する。またベステラ・プレミアム優待倶楽部を通じて株主管理のDX化も促進する。

■株価は利益確定売り一巡

 株価は急伸した6月の年初来高値圏から反落したが、利益確定売り一巡して戻りを試す展開を期待したい。7月26日の終値は1100円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS45円14銭で算出)は約24倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約1.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS493円05銭で算出)は約2.2倍、そして時価総額は約99億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る