【アナリスト水田雅展の銘柄分析】サクセスHDは安値圏で調整局面だが売られ過ぎ感、反発のタイミング

銘柄分析

 保育園運営のサクセスホールディングス<6065>(東1)の株価は、全般地合い悪化も影響して10月21日に上場来安値となる1284円まで調整した。見切り売りが優勢になった形だが、その後は1300円近辺で下げ渋る動きだ。安値圏で調整局面が続いているが売られ過ぎ感も強めている。アベノミクス成長戦略が追い風であり、中期成長力を評価して反発のタイミングだろう。なお11月7日に第3四半期累計(1月~9月)の業績発表を予定している。

 保育園を運営するサクセスアカデミーの持株会社で、病院・大学・企業などの事業所内保育施設を受託運営する受託保育事業と、認可保育園・認証保育所・公設民営保育園・学童クラブ・児童館・全児童対策事業施設など公的保育施設を運営する公的保育事業を展開している。

 前期(13年12月期)末時点の運営施設数は、受託保育事業が171施設(12年12月期末比20施設増加)、公的保育事業が63施設(うち認可保育園35施設、認証保育所5施設、学童クラブ等23施設)(同9施設増加)の合計234施設(同29施設増加)である。地域別にみると関東181施設、中部34施設、関西17施設、東北2施設で、神奈川県と東京都を地盤としている。

 成長に向けた重点戦略として、受託保育事業は広域エリアでの拡充、公的保育事業は首都圏中心の新規開園と小規模施設の運営を進め、施設運営の効率向上、人材確保・育成面でのジェイコムホールディングス<2462>グループとの連携強化、認可保育園開設用不動産の確保などを掲げている。24時間保育や英語教育の実施など高付加価値の保育サービスの提供、多様な保育需要に応じたサービスの提供も強化する方針だ。

 今期(14年12月期)の連結業績見通しについては前回予想(2月7日公表)を据え置いて、売上高が前期比13.3%増の98億26百万円、営業利益が同16.5%減の4億67百万円、経常利益が同7.1%増の7億55百万円、純利益が同7.3%増の4億30百万円、配当予想が同5円増配の年間30円(第2四半期末15円、期末15円)としている。

 新規開園費用や保育士募集採用費の増加で営業減益見通しだが、新規施設開設や利用者数増加で売上高は2桁増収見通しであり、営業外収益で公的保育事業に係る設備補助金収入が増加するため、経常利益と純利益は増益見通しだ。第2四半期累計(1月~6月)は新規施設開園費用が集中するため営業損益は低水準となる収益構造であり、第2四半期累計の通期見通しに対する低進捗率は特にネガティブ要因とならないだろう。

 なお第2四半期累計における新規施設開設は、受託保育事業11施設(病院内10施設、企業内等1施設)、公的保育事業14施設(認可保育園6施設、学童クラブ等4施設、小規模保育施設等4施設)の合計25施設だった。

 全国の待機児童数は緩やかに減少傾向となっているが、潜在需要の顕在化もあり、都市部を中心に保育サービスの需要は高水準である。アベノミクス成長戦略では「女性活用推進」を重点分野に位置付け、17年度の待機児童解消を目指して規制緩和や運営補助金拡大などに向けた動きが活発化している。さらに景気回復などで女性の活用が進展すれば、保育サービスの需要は一段と高まるだろう。

 毎年4月に新規施設開園が集中して準備費用が先行しやすいという季節要因に加えて、公的保育事業に係る設備補助金収入の増減なども影響して、四半期別の利益はデコボコしやすい収益構造だが、国の重点政策を追い風とする中期成長シナリオに変化はないだろう。

 株価の動き(4月24日付で東証1部市場に指定替え)を見ると、1600円~1700円近辺でのモミ合いから下放れの展開となり、全般地合い悪化も影響して10月21日には上場来安値となる1284円まで調整した。見切り売りが優勢になった形だが、その後は1300円近辺で下げ渋る動きだ。安値圏で調整局面が続いているが、売られ過ぎ感も強めている。調整の最終局面だろう。

 10月29日の終値1299円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS82円05銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間配当30円で算出)は2.3%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS327円76銭で算出)は4.0倍近辺である。週足チャートで見ると13週移動平均線が抵抗線となって水準を切り下げたが、アベノミクス成長戦略が追い風であり、中期成長力を評価して反発のタイミングだろう。

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