フライトソリューションズは売り一巡、24年3月期下方修正だが25年3月期収益回復期待

 フライトソリューションズ<3753>(東証スタンダード)は、マルチ決済装置Incredist TrinityやIncredist Premium Ⅱなどの電子決済ソリューションを主力として、システム開発やECソリューションも展開している。市販のAndroid携帯を使ってカードのタッチ決済を実現する小・中規模事業者向けの新しい決済ソリューションTapion(タピオン)も本格展開する。24年3月期は第4四半期に計画していた大型案件の売上が25年3月期以降に後ズレする見込みとなったため下方修正したが、有望案件が目白押しであり、積極的な事業展開で25年3月期の収益回復を期待したい。株価は下方修正を嫌気する形で昨年来安値を更新し、モミ合いから下放れの形となったが、売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。

■電子決済ソリューションが主力

 23年10月1日付で、旧フライトホールディングスが子会社のフライトシステムコンサルティングを吸収合併し、持株会社から事業会社に経営体制を再編するとともに、商号をフライトソリューションズに変更した。システム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、電子決済ソリューションなどのサービス事業、およびB2B(企業間取引)ECサイト構築システムのECソリューション事業を展開している。

 23年3月期はC&S事業の売上高が22年3月期比10.1%増の10億09百万円で営業利益(全社費用等調整前)が96.6%増の1億63百万円、サービス事業の売上高が12.2%減の18億81百万円で営業利益が44.5%減の2億29百万円、ECソリューション事業の売上高が37.8%減の1億18百万円で営業利益が41百万円の赤字(22年3月期は75百万円の赤字)だった。収益はサービス事業の大型案件によって変動する傾向が強い。

■サービス事業は電子決済ソリューションを展開

 サービス事業は、電子決済ソリューション分野において、スマートデバイス決済専用アプリのペイメント・マイスターと、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末のIncredistシリーズを主力として展開している。

 ペイメント・マイスターは、iPhoneやiPadをクレジットカード決済端末として利用する大企業向けBtoB決済ソリューションである。ホテル・レストランなどに幅広く導入されている。

 Incredistシリーズでは、戦略製品として据置・モバイル兼用型のマルチ決済装置Incredist TrinityおよびIncredist Trinity Miniの販売を推進している。またIncredist Premiumの後継機として、マイナンバーカード読取に対応した次世代型マルチ決済装置Incredist Premium Ⅱを21年1月から販売開始した。

 EMV(接触型ICクレジットカード)決済、コンタクトレスEMV(非接触型ICクレジットカード)決済に対応し、コンタクトレスEMVはMastercardなど国際6ブランドに認定されている。国内電子マネー決済では、19年7月にSuicaなど10種類の交通系ICカード決済への対応が完了し、19年7月にはディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>のタクシー配車アプリMOV(現、Mobility Technologiesが提供するタクシーアプリGO)の車内決済システムとしてincredist Premiumが採用された。スルッとKANSAI協議会が近畿圏を中心に展開しているポストペイ型IC決済サービスPiTaPaにも22年春から順次対応している。

 市販のAndroid携帯を使ってカードのタッチ決済を実現する小・中規模事業者向けの新しい決済ソリューションTapion(タピオン)については、自社決済センターを構築し、NTTデータの拡張性の高い決済伝送サービス「GAFIS GlobalGEAR」に接続して運用する。カフェ、カジュアルレストラン、キッチンカー、屋台、朝市など小・中規模事業者のキャッシュレス決済およびタッチ決済の普及拡大に努める方針だ。

 23年6月には、共同印刷グループで決済ソリューション事業を行うTOMOWEL Payment Service(TPS)と提携し、決済売上をチャージして翌日以降の仕入に活用できる国際ブランド付法人カード「Tapionカード」(プリペイド式の売掛債権連動型国際ブランド付法人カード)(特許出願中)を、23年後半より提供開始すると発表した。すでにクレジットカード取扱加盟店としての審査が終了しているため短期間での発行が可能である。

 本格サービスインに向けて22年11月よりTapionのパイロット運用を行ってきたが、23年7月に一般加盟店の申込受付を開始した。また23年7月にはセブン銀行のATM受取サービスに対応すると発表した。23年8月には、自社クレジット決済センター拡張により他の電子決済ソリューション全般へサービスを拡大すると発表した。またTapionは23年9月にAmerican Expressのクレジットカードに対応、23年10月に交通系電子マネーに対応した。23年11月には「Tapionタブレット」の販売を発表した。24年初旬よりパイロット運用加盟店にて評価・運用を開始し、24年春ごろを目途に量産を開始する。

 24年2月には、法人プリペイドカード「Tapionカード」において国際決済ネットワークがMastercardに決定し、共同印刷グループのTPSとの提携で発行開始した。また自社のクレジット決済センターでのDCC決済への対応が完了した。さらに独自認定制度「Tapion検定」において、追加でAndroid携帯6機種を認定した。

 自動精算機分野では、米国ID TECH社製VP6800を国内の飲料自動販売機や駐車場無人自動精算機などに接続するため、マルチ決済端末VP6800・IFCを製品化している。19年6月にはGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)と接続開始し、GMO-FGを通じた決済ソリューションとして自動精算機向けVP6800・IFCの拡販を推進している。23年7月には三菱プレシジョンのパーキングシステムにVP6800が採用され、総合カタログ・WEBサイトに掲載されたとリリースしている。

■電子決済ソリューションはキャッシュレス化や非接触が追い風

 電子決済ソリューションはキャッシュレス化の流れが追い風となり、決済種類・ブランドの拡大、電子マネーブランドの拡大、決済端末製品ラインアップの拡充、決済パートナーの拡大、ストック型ビジネスモデルの拡大など、電子決済ソリューションの展開を加速している。

 18年5月には三井住友カードと包括加盟店契約を締結した。三井住友カードの代行として加盟店開拓・契約締結・管理を行い、継続的に手数料収入が得られるストック型収益となる。22年3月には三菱UFJニコスとクレジットカード決済における包括的加盟店契約を締結、22年6月にはジェーシービー(JCB)と各種クレジットカード決済および電子マネー決済における包括代理店加盟契約を締結、22年8月にはSBペイメントサービスと包括代理店加盟店契約を締結した。製品販売に加えて決済代行事業も推進する。

 また、キャッシュレス決済需要が高まっている中小店舗・商店街への対応として、各地の商店街連合会や各種団体と連携して決済代行事業を行っているJASPASと資本提携し、決済ソリューションの展開を加速している。

 22年3月には、電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律の規定に基づき、マイナンバーカードを活用した公的個人認証サービスのプラットフォーム事業者として、主務大臣認定(本認定においては総務大臣と内閣総理大臣)を取得した。22年5月には、iPadとIncredist Premium Ⅱを活用したマイナンバーカード読取によるシンクライアント型公的個人認証サービスmyVerifist(マイ・ベリフィスト)を開始した。23年5月にはmyVerifistシリーズ第2弾「医療エディション」を発表した。マイナンバーカードの健康保険証利用とキャッシュレス決済で医療機関のDX化を支援する。

■ロボット関連やECソリューション関連も強化

 C&S事業は、公共系・音楽配信系・金融系・物流系・放送系などのシステム開発を展開し、サービス事業との融合でロボット関連も強化している。ジエナ社と共同開発したロボットコンテンツ制作サービスScenariaは、簡単にコンテンツ更新できるソリューションとして、ソフトバンクロボティクスの人型ロボットPepperや、NTT東日本のデスクトップ型ロボットSotaに対応している。なお23年4月にはGoogle CloudのServiceパートナー認定を取得した。

 ECソリューション事業のEC-Rider B2Bは、卸売・企業間取引に特化したECサイト構築システムである。また伝票処理自動化ソリューションの新製品OCRiderの拡販も推進する。

■24年3月期3Q累計赤字縮小、通期下方修正だが25年3月期回復期待

 24年3月期業績予想については2月13日付で下方修正し、売上高が23年3月期比8.0%増の32億50百万円、営業利益が80百万円の損失(23年3月期は79百万円の利益)、経常利益が90百万円の損失(同56百万円の利益)、親会社株主帰属当期純利益が1億円の損失(同41百万円の利益)としている。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比22.6%増の24億07百万円、営業利益が29百万円の損失(前年同期は81百万円の損失)、経常利益が30百万円の損失(同97百万円の損失)、親会社株主帰属四半期純利益が42百万円の損失(同99百万円の損失)だった。大型納品も寄与して大幅増収となり、各利益は赤字縮小した。

 セグメント(第3四半期より区分変更)に見ると、SIソリューション事業は売上高が17.0%増の8億76百万円、営業利益(全社費用等調整)が12.8%増の1億17百万円だった。基幹システム開発や保守が堅調だった。

 決済ソリューション事業は売上高が27.7%増の14億43百万円、営業利益が78.4%増の91百万円だった。無人自動精算機向けマルチ決済端末「VP6800」の大型納品なども寄与して大幅増収増益だった。

 ECソリューション事業は、売上高が3.4%増の87百万円、営業利益が15百万円の損失(前年同期は26百万円の損失)だった。B2B向けECサイト構築パッケージ「EC-Rider B2B」の新パッケージ開発に注力している影響で赤字だが、多額のプロジェクト損失を計上した前年同期に比べて赤字縮小した。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が6億33百万円で営業利益が46百万円の損失、第2四半期は売上高が9億82百万円で営業利益が85百万円、第3四半期は売上高が7億92百万円で営業利益が68百万円の損失だった。

 通期は決済ソリューション事業において、無人自動精算機向けマルチ決済端末「VP6800」の売上が想定を約5億円上回る見込みだが、第4四半期に約7億円の売上を計画していた既存顧客向けマイナンバーカード対応「Incredist」シリーズの納品が25年3月期以降に後ズレする見込みとなった。利益面では原材料価格の高騰も影響する見込みだ。ただし有望案件が目白押しであり、積極的な事業展開で25年3月期の収益回復を期待したい。

■株価は売り一巡

 株価は下方修正を嫌気する形で昨年来安値を更新し、モミ合いから下放れの形となったが、売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。2月26日の終値は313円、前期実績PBR(前期実績の連結BPS60円22銭で算出)は約5.2倍、そして時価総額は約30億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る