ヤマシタヘルスケアホールディングスは上値試す、24年5月期営業・経常利益予想を上方修正

 ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東証スタンダード)は、経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けてヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。24年5月期第3四半期累計は販管費増加で減益だったが、売上面は医療機器販売が順調だった。そして通期の売上高および営業・経常利益予想を上方修正(純利益は特別損失計上で下方修正)し、営業・経常減益幅が縮小する見込みとした。第3四半期累計の進捗率が高水準であることを勘案すれば通期会社予想に再上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は上方修正を好感して高値を更新する場面があった。依然として1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■九州を地盤とする医療機器専門商社

 経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けて、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。

 事業子会社の山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器販売・メンテナンス、医療材料・消耗品販売、IT医療構築・医療設備工事、および医療モールを展開している。イーピーメディックは整形外科領域の体内埋没材料(インプラント)の企画・製造委託・輸入・販売、トムスは人工腎臓関連分野に強みを持ち透析装置・関連消耗品を中心とする医療機器販売およびメンテナンス、アシスト・メディコは医療機関の経営支援や介護施設を含む病床転換・M&A・事業承継などのコンサルティングサービス、イーディライトは医療機関の予約サイト制作取次などのソリューションサービス、エムディーエックス(22年2月設立)はDX新技術を活用した医療・介護施設・在宅向け新製品・サービスの開発、クロスウェブ(23年7月子会社化)は医療機関向け中心にネットワークおよびシステムインフラ構築、鹿児島オルソ・メディカル(23年12月子会社化)は鹿児島県で整形外科分野に特化した医療機器販売および関連消耗品販売を展開している。また、超音波を用いた医療用機器開発・販売のマイクロソニックに出資し、持分法適用関連会社としている。

 24年3月には山下医科器械が26年度中に新たな物流センターとして「新鳥栖TMSセンター」を開設すると発表した。物流機能の品質改善や効率化を推進する。

 23年5月期セグメント別売上高(内部売上高含む)は、医療機器販売業が580億37百万円(一般機器分野が86億34百万円、一般消耗品分野が240億60百万円、低侵襲治療分野が138億97百万円、専門分野が100億76百万円、情報・サービス分野が13億68百万円)で、医療機器製造・販売業が2億86百万円、医療モール事業が69百万円だった。セグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)は医療機器販売業が21億48百万円、医療機器製造・販売業が12百万円、医療モール事業が0百万円、調整額が▲10億04百万円だった。

 なお医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い傾向がある。

■ヘルスケア領域でのグループ力向上を推進

 中期経営計画(22年5月期~24年5月期)では、基本方針を「持続成長可能な体制構築を目指し、継続的な収益拡大に向け、ヘルスケア領域でのグループ力の向上を図る」として、目標値には最終年度24年5月期売上高520億円(収益認識に関する企業会計基準第29号適用換算前ベースでは675億円)、営業利益6億20百万円、経常利益6億80百万円を掲げている。

 重点施策には、グループの一体化と戦略機能の強化、重点事業領域の拡充、グループ経営管理機能の強化、ダイバーシティ環境の実現、ESG経営への取り組み、戦略的人材マネジメントの確立を掲げている。

 医療機器販売業では、電子カルテなどの医療情報システム構築支援、合弁事業の医科向け会員ネットワーク「EPARK」の普及拡大、SPD(Supply Processing&Distribution)事業の推進・収益性向上を推進している。医療機器製造・販売業では、台湾の医療機器メーカーと協力して手術器械の単回使用化に取り組んでいる。

 また新規商材による市場開拓として、19年7月にはアイム(福岡県福岡市)と資本業務提携し、医療機関・介護施設向けに自然落下制御式輸液装置「FLOWSIGN 03W」のレンタル事業を開始している。20年1月にはNTT東日本と協業して医療機関向けICTサービスを開始している。さらにソルブ(福岡県春日市)の注射調剤・監査支援システムの取り扱いも開始している。

■長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」

 ESG経営・SDGsへの取り組みでは、21年6月に独立行政法人国際協力機構(JICA)が発行するソーシャルボンド(社会貢献債)への投資を実施した。21年8月にはESG基本方針を策定し、地域のヘルスケアに貢献する企業として、医療機器・関連サービスの安定的な供給を通じてSDGsの目標でもある持続可能でより良い社会を目指し、社会課題の解決に貢献できるように努めるとしている。

 22年7月にはサステナブルな成長の実現に向けて、2030年度を目標年度とする長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」を策定した。既存の中核事業との連携を図りながら新たな事業ポートフォリオを構築し、企業価値の持続的成長および価値創出を目指すとしている。

 22年9月には、乳がん検査デバイスとなるマンモエコーシステムなど超音波を用いた医療用機器の開発・販売を行うマイクロソニック(東京都国分市)に出資した。ESG活動の一環として、超音波を用いた社会性の高い製品の実現化に寄与することを目的に、マイクロソニックが持つ知財や研究開発を支援する。

 24年3月には山下医科器械が、経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2024(大規模法人部門)に3年連続で認定された。

■24年5月期3Q累計減益だが通期営業・経常利益予想を上方修正

 24年5月期連結業績予想については3月29日付で修正し、売上高が23年5月期比7.9%増の627億64百万円、営業利益が23.6%減の8億83百万円、経常利益が22.5%減の9億35百万円、親会社株主帰属当期純利益が51.5%増の3億31百万円とした。配当予想は据え置いて23年5月期比7円増配の55円(期末一括)としている。予想配当性向は42.3%となる。

 前回予想(23年7月14日公表値)に対して、売上高を85億48百万円上方修正、営業利益を2億41百万円上方修正、経常利益を2億53百万円上方修正、親会社株主帰属当期純利益を1億32百万円下方修正した。売上高は、期初時点では特需の反動や不透明感などを考慮して減収見込みとしていたが、一転増収見込みとした。検査用機器等の設備投資需要が増加し、検査・手術件数の回復に伴って医療機器消耗品の売上も回復傾向となった。利益面では、人件費などが増加するが、増収効果に加え、円安影響によるコスト上昇分の販売価格への転嫁なども寄与して、営業利益と経常利益は期初計画に比べて減益幅が縮小する見込みとなった。

 親会社株主帰属当期純利益については、特別損失計上により下方修正して増益幅が縮小する見込みとした。新物流センター開設(現在の鳥栖TMSセンターの敷地内に新たな物流センターとなる新鳥栖TMSセンター、26年度中の稼働予定)に伴い、現有建物等の残存簿価について減損処理を実施し、24年5月期に当該物件の解体費用等と合わせて約4億円の特別損失を計上する。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比8.7%増の453億73百万円、営業利益が7.3%減の8億30百万円、経常利益が7.0%減の8億71百万円、親会社株主帰属四半期純利益が4億42百万円(前年同期は特別損失計上により1百万円)だった。販管費の増加で減益だったが、売上面は医療機器販売が順調だった。

 医療機器販売業は売上高が9.0%増の453億65百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が6.1%増の16億71百万円だった。売上高の内訳は一般機器分野(画像診断機器、放射線診断装置等)が18.5%増の63億84百万円、一般消耗品分野(手術関連消耗品等)が3.7%増の184億95百万円、低侵襲治療分野(内視鏡、サージカル備品等)が7.0%増の106億91百万円、専門分野(整形、理化学、透析等)が15.6%増の87億06百万円、情報・サービス分野(設備保守メンテナンス等)が25.2%増の10億88百万円だった。

 医療機器製造・販売業は、売上高が1.0%減の2億09百万円で利益が2百万円(前年同期は10百万円)だった。医療モール事業は、売上高が1.7%増の51百万円で利益が1百万円(同0百万円)だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が140億21百万円で営業利益が1億96百万円、第2四半期は売上高が148億78百万円で営業利益が4億22百万円、第3四半期は売上高が164億74百万円で営業利益が2億12百万円だった。

 修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が72%、営業利益が94%、経常利益が93%、親会社株主帰属当期純利益が134%となる。進捗率が高水準であることを勘案すれば通期会社予想に再上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。

■株主優待制度は5月末の株主対象

 株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は上値試す

 24年2月16日に自己株式取得を発表した。上限は13万3000株・3億50百万円で、取得期間は24年2月19日~24年8月23日としている。

 株価は上方修正を好感して高値を更新する場面があった。依然として1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。4月2日の終値は2754円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS130円00銭で算出)は約21倍、今期予想配当利回り(会社予想の55円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3097円34銭で算出)は約0.9倍、そして時価総額は約70億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■海外展開を加速  トリドールホールディングス<3397>(東証プライム)は3月25日、カナダ・バ…
  2. ■モビリティカンパニーへの変革を加速  トヨタ自動車<7203>(東証プライム)は3月22日、20…
  3. ■イネの生育を最大4倍に  シャープ<6753>(東証プライム)は3月21日、プラズマクラスター技…
2024年5月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

ピックアップ記事

  1. ■藤田観光など上方修正済み銘柄が狙い目、決算発表前に高値予約しておくのも有効  大型連休の好調な需…
  2. ■GW市場動向と投資家心理  『目出度さも 中くらいなり おらが春』と詠んだのは小林一茶である。季…
  3. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  4. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る