【東京商工リサーチ】調剤薬局の倒産多発で危機感高まる:大手参入とビジネスモデル変革が必須

■調剤薬局の倒産、過去最多の22件に急増

 東京商工リサーチの調査によると、2024年1-7月期における調剤薬局の倒産は累計22件に達し、前年同期比で266.6%の増加となった。この数字は2021年同期の20件を上回り、過去最多を記録している。もしこのペースが続けば、年間倒産件数でも2021年の27件を超え、さらなる記録更新が見込まれる。業界大手による積極的な出店に加え、コンビニ大手や通販大手の新規参入が相次ぎ、M&Aや再編が進行中だ。その中で独立系の調剤薬局が生き残るためには、ビジネスモデルの変革が不可欠となっている。

■コロナ禍と新規参入が影響、負債総額は135億円超

 2024年上半期(1-6月)の倒産件数は12件で、前年同期比140.0%の増加となった。特に7月には京都の寛一商店(株)と関連8社が倒産し、件数を大きく押し上げた。負債総額は135億6500万円に達し、前年同期比422.1%増という大幅な増加を示した。これは、中堅規模の倒産が増えたことによるもので、初めて100億円を超える規模となった。コロナ禍による受診控えが収まりつつあるが、大手薬局やドラッグストアの出店攻勢により、市場競争が一層激化している。

■大手の参入とデジタルシフト、調剤薬局の未来は

 調剤薬局業界では、地域に根ざした中小薬局が顔の見える顧客に合わせた服薬指導を強みとしている。一方、大手は店舗展開とオンラインでの服薬指導、処方薬のネット注文など顧客ニーズの変化を迅速に取り込んでいる。今年、セブンイレブン・ジャパンが首都圏1000店舗で処方箋医薬品を受け取れるサービスを開始し、アマゾンジャパンも処方箋医薬品のオンライン販売に乗り出した。異業種からの大手参入が相次ぐことで、業界環境はさらに厳しさを増している。デジタルシフトなど、ビジネスモデルの変革に適応できない調剤薬局は、今後ますます淘汰の波にさらされる可能性が高い。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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