【アナリスト水田雅展の銘柄分析】きちりは急伸後の日柄調整一巡感、中期成長力を評価して10月高値目指す

銘柄分析

 飲食店チェーン事業と飲食店運営プラットフォーム事業のきちり<3082>(東1)の株価は、急伸した10月高値1064円から反落して700円~800円近辺でモミ合う展開だ。ただし下値を徐々に切り上げて急伸後の日柄調整一巡感を強めている。中期成長力を評価する流れに変化はなく、10月高値を目指す展開だろう。

 カジュアルダイニング「KICHIRI」や「いしがまやハンバーグ」を主力業態とする直営店の自社ブランド展開事業、および飲食店運営のプラットフォーム提供や他業種企業のブランド・コンテンツ活用のプラットフォームシェアリング事業を展開している。

 前期(14年6月期)末時点の店舗数は70店舗(関西エリア42店舗、関東エリア28店舗)で、新業態開発にも取り組みながら出店余地の大きい首都圏への新規出店戦略を強化している。14年3月には新業態「igu&peace」を出店した。

 プラットフォームシェアリング事業は、当社がITやクラウドを駆使して構築した外食特化型インフラ(購買・物流などのバックヤード機能、会計・労務管理・教育・デザインなどのバックオフィス機能、取引先紹介などのバックアップ機能といった本部機能)を活用する事業だ。大別するとブランド・コンテンツ活用型(優れたブランド・コンテンツを持つ企業と業務提携し、当社のプラットフォームを活用して新しいレストランビジネスを創造する)、およびクラウドサービス展開型(当社が構築した外食特化型インフラを他の飲食店チェーンなどに提供してアウトソーシング受託する)を展開している。

 ブランド・コンテンツ活用型では独自性ある新業態が開発でき、クラウドサービス展開型では参画企業・店舗数の増加に伴ってスケールメリットが得られる。ブランド・コンテンツ活用型では13年2月精米機トップメーカーで「ギャバライス」ブランドのサタケ、13年4月イタリアのバッグブランド「オロビアンコ」、13年5月福岡県「はかた地どり」生産者の農業組合法人福栄組合と業務提携した。

 今期(15年6月期)の業績(非連結)見通しは前回予想(8月8日公表)を据え置いて売上高が前期比8.5%増の75億円、営業利益が同45.7%増の7億円、経常利益が同35.8%増の7億円、純利益が同41.9%増の4億20百万円、配当予想は前期から記念配当2円50銭を落として年間7円50銭(期末一括)としている。

 既存店売上高は98.5%、新規出店は10店舗の計画だ。出店戦略において優先的に出店したい立地の物件が確保できる状況となり、前期の新規出店4店舗に比べて大量出店となる見込みだ。クラウドサービス展開型の提供店舗数は、自社ブランド店舗を含めて前期末の約200店舗から今期末には約300店舗に増加する見込みだ。

 第1四半期(7月~9月)は前年同期比3.4%増収、同21.3%営業増益、同17.8%経常増益、同25.4%最終増益だった。既存店が好調に推移した。通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が22.7%、営業利益が14.9%、経常利益が15.7%、純利益が16.2%とやや低水準だったが、既存店売上高が計画を上回るペースで推移し、第2四半期(10月~12月)に新規出店が加速していることを考慮すれば、特にネガティブ要因とはならない。クラウドサービス展開型の拡大も寄与して通期業績見通しに上振れ余地があるだろう。

 月次レポート(前年同月比、速報値)を見ると、14年11月の売上高は既存店(対象66店舗)が101.7%、全店(対象71店舗)が106.4%だった。既存店は売上高と客数が4ヶ月連続の前年比プラスとなった。ブランド認知度向上効果などで第2四半期も好調に推移しているようだ。

 中長期ビジョンでは、自社ブランド展開事業およびプラットフォームシェアリング事業を2本柱として展開し、目標値として18年6月期売上高100億円、営業利益15億円、経常利益16億円、純利益10億円、配当性向30%(当面は20%)を掲げている。事業別には自社ブランド展開事業が100店舗で売上高94億円、プラットフォームシェアリング事業が契約店舗数500店舗(契約売上規模300億円)で営業利益6億円を目標としている。

 なお9月5日に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限15万株、取得価額総額の上限1億円、取得期間14年9月8日~15年3月31日)については、11月30日時点の累計で取得株式総数6万6900株、取得価額総額4382万7800円となっている。

 株主優待制度については毎年12月末日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。優待内容は8月8日に変更を発表し、従来の「当社運営店舗で利用できる優待券3000円分、または近隣に店舗がない等の理由で優待券を利用しない方はGABAライス3kgを選択できる」を「当社運営店舗で利用できる優待券3000円分、または近隣に店舗がない等の理由で優待券を利用しない方は当社事業における関連商品を選択できる」に変更した。14年12月31日現在の対象株主から実施する。

 株価の動きを見ると、急伸した10月3日高値1064円から反落し、10月中旬以降は概ね700円~800円近辺でモミ合う展開だ。急伸後の日柄調整局面のようだ。ただし下値を徐々に切り上げて調整一巡感を強めている。

 12月22日の終値734円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS41円35銭で算出)は17~18倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間7円50銭で算出)は1.0%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS157円27銭で算出)は4.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が接近して下値を切り上げている。サポートラインを確認した形だ。中期成長力を評価する流れに変化はなく10月高値1064円を目指す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■東京・愛知・兵庫で屋外広告も掲出、号外や無料バッティング企画も実施  Major League …
  2. ■新生児対象の臨床試験で抗炎症作用と菌叢改善を実証  森永乳業<2264>(東証プライム)は7月2…
  3. ■「日本栄養・食糧学会大会」で研究成果発表、科学的根拠を提示  味の素<2802>(東証プライム)…
2025年9月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■東証市場、主力株急落と中小型株逆行高で投資戦略二極化  証市場は9月19日に主力株の急落と中小型…
  2. どう見るこの相場
    ■プライム市場の需給悪化を警戒し、個人投資家は新興市場へ資金を逃避  「桐一葉 落ちて天下の秋を知…
  3. ■01銘柄:往年の主力株が再評価、低PER・PBRで買い候補に  今週の当コラムでは、買い遅れカバ…
  4. ■日米同時最高値への買い遅れは「TOPIXコア30」と「01銘柄」の出遅れ株でカバー  日米同時最…
  5. ■東京株、NYダウ反落と首相辞任で先行き不透明  東京株式市場は米国雇用統計の弱含みでNYダウが反…
  6. ■株式分割銘柄:62社に拡大、投資単位引き下げで流動性向上  選り取り見取りで目移りがしそうだ。今…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る