【アナリスト水田雅展の銘柄分析】生化学工業は自律調整が一巡して切り返し局面

銘柄分析

 関節機能改善剤アルツが主力の生化学工業<4548>(東1)の株価は、11月26日の年初来高値2288円から利益確定売りで一旦反落し、12月17日の1873円まで調整した。全般地合い悪化も影響したようだ。ただし強基調の形であり、自律調整が一巡して切り返し局面だろう。

 国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け関節機能改善剤スパルツ、米国向け単回投与関節機能改善剤ジェル・ワン、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、およびLAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。高齢者人口増加を背景に関節機能改善剤の需要拡大が期待される。

 09年3月策定の「生化学工業10年ビジョン」に基づいて、研究開発は糖質科学分野に焦点を絞っている。開発中の新薬としては、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603(コンドリアーゼ)、アルツの腱・靭帯付着部症の国内適応症追加SI-657、変形性膝関節症改善剤SI-613、ドライアイ治療剤SI-614、関節リウマチ治療剤SI-615(導入品)などがある。

 SI-6603は14年1月に国内で製造販売承認申請し、米国では第Ⅲ相臨床試験を実施中である。SI-657の国内第Ⅲ相臨床試験は14年10月に完了した。SI-613は国内第Ⅱ相臨床試験を実施中である。SI-614は14年5月に米国で第Ⅱ・Ⅲ相臨床試験を開始した。SI-615は国内第Ⅰ相臨床試験を実施中である。

 14年10月には米国ニュージャージー州に駐在員事務所を開設した。ジェル・ワンおよびスパルツの拡販に向けて現地販売員への製品教育を推進し、米国市場に関する情報収集なども強化する。

 今期(15年3月期)の連結業績見通しについては前回予想(5月13日公表)を据え置いて、売上高が前期比1.6%減の291億50百万円、営業利益が同44.3%減の27億50百万円、経常利益が同28.5%減の42億円、純利益が同27.3%減の34億50百万円、配当予想は前期と同額の年間26円(第2四半期末13円、期末13円)としている。なお想定為替レートは1米ドル=102円としている。

 セグメント別売上高の計画は、医薬品が同2.9%減の246億円(国内医薬品が同3.9%減の173億円、海外医薬品が同1.4%増の58億円、医薬品原体が同8.0%減の15億円)で、LAL事業が同6.5%増の45億50百万円だ。国内のアルツが薬価改定の影響を受け、米国向けスパルツが競争激化や前期の販売提携先での在庫積み増しの反動影響を受けるため、全体として減収見通しとしている。

 第2四半期累計(4月~9月)は前年同期比7.5%減収、同55.1%営業減益、同44.2%経常減益、同45.9%最終減益だった。国内医薬品は薬価引き下げの影響、海外医薬品は高水準だった前年同期の反動でいずれも減収となり、利益面では減価償却費や研究開発費の増加が影響した。ただし売上高、各利益とも期初計画を上回った。円安進行に伴う保有外貨建て資産の為替評価益増加も寄与した。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.9%、営業利益が56.9%、経常利益が50.2%、純利益が48.9%と概ね順調な水準である。下期には米国向けジェル・ワンの出荷が増加する見込みであり、拡販強化や円安進行メリットで通期上振れの可能性もあるだろう。

 株価の動きを見ると、11月26日の年初来高値2288円から利益確定売りで一旦反落し、12月17日の1873円まで調整した。全般地合い悪化も影響したようだ。ただし1800円台では下げ渋り感を強めている。自律調整の範囲だろう。

 12月22日の終値1907円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円73銭で算出)は31~32倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は1.4%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS1140円48銭で算出)は1.7倍近辺である。週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線が接近している。強基調の形であり、自律調整が一巡して切り返し局面だろう。

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