くすりの窓口、26年3月期はストック売上高・粗利が順調に拡大して上振れの可能性

 くすりの窓口<5592>(東証グロース)は調剤薬局・ドラッグストア・医療機関・介護施設等のヘルスケアテック領域において、ソリューション(メディア事業、みんなのお薬箱事業、基幹システム事業)を提供し、ストック収益の積み上げに注力している。11月25日にはツルハホールディングスとの連携サービス開始をリリースした。26年3月期は2桁増益予想としている。導入施設・店舗数が増加基調であり、ストック売上高、ストック粗利が順調に拡大する見込みだ。中間期の利益進捗率が高水準であることを勘案すれば通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は9月の最高値圏から反落して一本調子に水準を切り下げる形となったが、売られすぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。

■調剤薬局等のヘルスケアテック領域でソリューションを提供

 同社は調剤薬局・ドラッグストア・医療機関・介護施設等のヘルスケアテック領域においてソリューションを提供している。光通信<9435>の子会社で様々な店舗のネット予約サービスを展開するEPARKの調剤薬局部門として事業開始(15年8月)し、その後は「医・薬・介護、個人ユーザー(患者)をつなぐプラットフォーム」として、調剤薬局・ドラッグストア・医療機関・介護施設・患者等の様々なニーズを捉えた独自事業を自社開発して業容を拡大している。

 事業区分は、メディア事業(薬局検索予約ポータルサイト「EPARKくすりの窓口」運営や電子お薬手帳アプリ「EPARKお薬手帳」などの提供)、みんなのお薬箱事業(独自事業として開始した薬局不動在庫売買プラットフォーム、薬局の医薬品仕入価格交渉を代行する「仕入サポートサービス」、医薬品在庫管理・自動発注システム「eオーダーシステム」などの提供)、基幹システム事業(医療機関・調剤薬局・介護施設に必要な事務処理システムや情報システムなどの提供)としている。

 事業収益は、薬局等から得られる初期導入費用等のショット売上、および月額利用料・手数料収入等のストック売上である。なお同社は各事業の業績に関する重要経営指標を、ストック売上高およびストック売上高に対するストック粗利としている。継続的な収益が見込まれるストックビジネスを戦略的に重視し、ストック収益の最大化を図るとともに、ストック収益の顧客基盤から得られるデータを蓄積・活用し、顧客ニーズを捉えた高付加価値サービスの開発につなげている。その結果、ストック売上の積み上げにより高収益構造となっていることが特長だ。

 25年3月期の事業別売上高はメディア事業が44億07百万円、みんなのお薬箱事業が31億27百万円、基幹システム事業が35億54百万円で、同社が重要指標としているストック売上高はメディア事業が30億54百万円、みんなのお薬箱事業が26億65百万円、基幹システム事業が15億13百万円、ストック売上比率はメディア事業が69%、みんなのお薬箱事業が85%、基幹システム事業が43%、ストック粗利はメディア事業が12億30百万円、みんなのお薬箱事業が13億04百万円、基幹システム事業が6億16百万円だった。

■メディア事業

 メディア事業は「医療と患者をつなぐプラットフォーム」をコンセプトとして、患者の利便性、薬局の効率性・生産性の向上を目的としたサービスを提供している。

 主力サービスは、国内最大級の薬局・ドラッグストア検索予約ポータルサイト「EPARKくすりの窓口」と、患者のお薬情報等を確認でき、飲み忘れ防止のためのアラーム発信機能等も有する電子お薬手帳アプリ「EPARKお薬手帳」である。いずれのサイト・アプリからも処方箋ネット受付・受取予約サービスを利用できる。

 事業収益は、処方箋ネット予約に係る手数料収入(患者からの初回予約時に当該患者に係る初回登録手数料が発生し、その後は初回よりも金額を抑えた手数料が当該患者に係る登録管理料として毎月継続)である。アプリ「EPARKお薬手帳」では直接的な収益が発生しないが、いつも利用する薬局をかかりつけ登録できる等の機能により、薬局を検索することなく処方薬の受取予約ができるため、ポータルサイト「EPARKくすりの窓口」の利用促進・リピートにつなげる役割を担っている。

 さらに、検索上位に表示される「EPARKくすりの窓口リッチプラン」、患者のリピート促進に特化した顧客管理システム「Pharmacy Support」、患者がネット予約した薬局店舗に薬の在庫がない場合等にグループ近隣店舗の在庫状況を一元管理できる「AI stock」機能など、様々なニーズに対応して継続的に既存サービスの機能強化や新サービスの開発を推進している。25年1月にはオンライン診療の利用者の窓口となる医療プラットフォームを運営するファストドクターと業務提携した。ファストドクターのプラットフォームを利用してオンライン診療を受けた患者が、医師からオンラインで受け取った処方箋をポータルサイト「EPARKくすりの窓口」対応店舗へ送信することにより、診療から処方という一連のプロセスをオンラインで完結できるサービスを提供する。

 25年3月期末時点の主要KPIとして、ポータルサイト「EPARKくすりの窓口」の施設保有(導入店舗)数は2万2368店舗、全国の薬局店舗数約6万店舗に占める同社シェア(同社調べ)は約37.3%、アプリ「EPARKお薬手帳」のダウンロード数は616.5万件、25年3月期の予約数は603.6万件となった。

 ポータルサイト「EPARKくすりの窓口」の直近の新規導入店舗として、25年2月にはウィーズ(E―BONDホールディングスの子会社、みんなのお薬箱事業で24年11月に業務提携)の全国400店舗超の調剤薬局、25年4月にはサンキュードラッグが北九州エリアを中心に展開している61店舗の調剤薬局・ドラッグストア、25年5月にはファーマライズホールディングスのグループ会社であるファーマライズの調剤薬局・ドラッグストア227店舗およびヘルシーワークの調剤薬局33店舗、25年9月にはくすりのアオキのドラッグストア併設調剤薬局15店舗、25年10月にはトモズのドラッグストアのうち処方箋受付店舗のすべて191店舗、サエラの保険薬局90店舗が新規導入した。

 利便性向上に向けてマンション・商業施設等への処方箋受付機の導入拡大も推進しており、25年4月につなぐネットコミュニケーションズ、25年5月に日本調剤、イオン東北、25年11月にウエルシア薬局とそれぞれ連携した。

 また11月25日にはツルハホールディングスとの連携サービス開始をリリースした。ツルハグループ内ドラッグストア・調剤薬局でのOTC医薬品購入履歴と同社の「EPARKお薬手帳」を連携させる。

■みんなのお薬箱事業

 みんなのお薬箱事業は「医薬品卸と薬局をつなぐプラットフォーム」をコンセプトとして、医薬品卸売事業者と薬局における医薬品流通の改善を支援するサービスを提供している。

 主力サービスは、薬局・医療機関に代わって医薬品卸売事業者に対する医薬品仕入価格交渉を代行する「仕入サポートサービス」、薬局・医療機関における医薬品在庫管理・AIを活用した自動発注システム「eオーダーシステム」、および医薬品売買ニーズマッチングサイト・アプリ「みんなのお薬箱」である。

 価格交渉代行「仕入サポートサービス」は、スケールメリットを享受することを目的としたスキームで、事業収益は薬局等と医薬品卸売事業者との間の医薬品売買における取引薬価・売買価格に応じて算定される手数料収入(ストック売上)となる。なお調剤薬局大手のE―BONDホールディングスの子会社ウィーズと業務提携(24年11月)し、これまで医薬品卸事業者と価格交渉を行ってきたグローバル・エイチの株式を譲渡(25年4月)して持分法適用関連会社から除外した。ウィーズが医薬品二次卸として培ってきたノウハウを活かした「仕入サポートサービス」に一本化する。

 在庫管理・自動発注「eオーダーシステム」は、薬局等における過剰在庫抑制・欠品防止や薬剤師の事務負担軽減などの効果を目指し、薬局等のレセプトコンピュータと連携させ、AIを活用して必要な医薬品の種類と量を判断して自動発注する。事業収益は初期導入費用(ショット売上)およびシステム利用料収入(ストック売上)となる。

 医薬品売買ニーズマッチングサイト・アプリ「みんなのお薬箱」は、全国の薬局の不動在庫(デッドストック)の有効利用を目的として、処方されずに不動在庫となった医薬品を売りたい薬局と、不足している医薬品を買いたい薬局の売買を仲介するサービスである。事業収益は売買が成立した医薬品の薬価に応じた手数料収入(ストック売上)となる。

 25年3月期末時点の主要KPIとして、価格交渉代行「仕入サポートサービス」とマッチングサイト・アプリ「みんなのお薬箱」の合計施設保有(導入店舗)数は1万7901店舗、全国の薬局と医療機関の合計約17万施設に占める同社シェア(同社調べ)は約10.4%となった。また25年3月期の流通総額は2245億36百万円だった。

■基幹システム事業

 基幹システム事業は「医科、薬局、介護のデータ連携プラットフォーム」をコンセプトとして、医療機関・薬局・介護施設に必要な事務処理システムや情報システムなどを提供している。

 主な商品は、調剤薬局向けとして子会社モイネットシステムのオールインワンレセコン「Pharmy」、ハイブリッジの電子薬歴システム「Hi―story」、同社(24年8月に同社がキューブイメージングを吸収合併)の調剤監査システム「Cube.i」など、医療機関向けとしてエーシーエスの医事会計・オーダリング・電子カルテシステム「HOSPITAC」、メディカルJSPのクリニック向け電子カルテシステム「Ex―Karte」、同社(24年11月に同社がホスピタルヘルスケアを吸収合併)の外来受診支援アプリ「スマートガイドシステム」など、介護施設向けとして同社の電子介護記録システム「コメットケア」などである。

 事業収益は初期導入費用等のショット売上と保守料収入のストック売上である。なお当事業は他の事業に比べて、システムの新規導入に伴う初期導入費用等のショット売上の構成比が高くなるため、新規導入数の変動が業績変動の要因となる。

 25年3月期末時点の主要KPIとして、施設保有(導入施設)数は合計8048施設(内訳は薬局が5312施設、介護が2234施設、医科が502施設)となった。

■中期経営計画

 同社は中期経営計画として、30年3月期のストック売上高200億円、営業利益50億円以上を目標値に掲げている。ショット売上は状況によって変動があるため、3事業(メディア事業、みんなのお薬箱事業、基幹システム事業)において、高付加価値サービス提供などにより各々の市場シェアを拡大してストック売上を積み上げるほか、各サービス間および各事業間のシナジーも創出して増収・増益を確実にする仕組を構築する。

 重点戦略としては、顧客基盤拡大として30年3月期までに10万施設導入(24年3月期末時点で調剤薬局・介護施設・医療機関合計3万8795施設)を目指すほか、3事業で蓄積されたデータを活用し、新規事業(未病予防関連としての健康保険組合加盟数・特定保健指導実施数の拡大、治験関連企業との連携による治験者募集など)の育成にも注力する方針だ。なお治験関連領域は25年2月末時点で5社(24年7月トライアドジャパン、24年8月インクロム、24年11月メディメイト、EPLink、25年2月シミックヘルスケア・インスティテュート)と提携済みである。

■26年3月期2桁増益予想、さらに上振れの可能性

 26年3月期の連結業績予想は売上高が前期比9.8%増の123億円、営業利益が12.6%増の22億円、経常利益が10.0%増の21億35百万円、親会社株主帰属当期純利益が10.1%増の22億40百万円としている。配当予想は前期比3円増配の30円(期末一括)としている。予想配当性向は15.0%となる。

 2桁増益で増配予想としている。導入施設・店舗数が増加基調であり、ストック売上高、ストック粗利が順調に拡大する見込みだ。前期の特需(基幹システム事業において補助金対象となった子会社モイネットの電子処方箋管理サービスの新機能が業績に大きく貢献)の反動を考慮しているが、この影響を除くベースでは前期比15%増収、33%営業増益の見込みとしている。

 中間期の連結業績は売上高が前年同期比7.0%増の58億25百万円、営業利益が32.9%増の12億62百万円、経常利益が35.7%増の12億52百万円、親会社株主帰属中間純利益が190.5%増の16億20百万円だった。増収・大幅増益だった。ストック売上が順調に拡大し、コスト適正化なども寄与した。なお親会社株主帰属中間純利益については、繰越欠損金に係る繰延税金資産の追加計上により法人税等が減少したことも寄与した。

 メディア事業は、売上高(これまでメディア事業に含めていたEPARK人間ドックの売上高を当期より未病予防事業として開示するため遡及修正後)が6.7%増の22億94百万円(ストック売上高が16.6%増の16億46百万円、ショット売上高が12.1%減の6億48百万円)で、ストック粗利が48.1%増の7億45百万円だった。ショット売上は前年同期の調剤報酬改定による加算要件のサービス需要が一巡したため減収だが、ストック売上が施設保有数や処方箋ネット受付数の増加によって拡大し、粗利率の改善も寄与してストック粗利が大幅に増加した。主要KPIとして中間期の予約数は15.2%増の3240件、中間期末時点の施設保有数は8.8%増の2万3953件、お薬手帳アプリDL数は22.2%増の671.8万件となった。

 みんなのお薬箱事業は、売上高が13.8%増の17億09百万円(ストック売上高が14.5%増の14億89百万円、ショット売上高が9.5%増の2億20百万円)で、ストック粗利が18.4%増の7億52百万円だった。仕入サポートサービスが回復基調となり、粗利率の改善も寄与した。主要KPIとして、流通額(仕入サポートサービス+不動在庫サービス)は第1四半期が4.7%減の557億63百万円、第2四半期が0.0%増の566億95百万円で、第2四半期末時点の施設保有数は7.5%増の1万8224施設となった。

 基幹システム事業は、売上高が1.8%減の17億07百万円(ストック売上高が5.7%増の7億83百万円、ショット売上高が7.3%減の9億24百万円)で、ストック粗利が19.5%減の2億56百万円だった。ショット売上が前期の特需の反動で減少し、ストック粗利は主要子会社における新商品の先行投資の影響で減益だったが、ストック売上は順調に拡大した。主要KPIとして、第2四半期期末の施設保有数は4.9%増の8184施設(薬局が5371施設、介護が2277施設、医科が536施設)となった。

 未病予防事業(くすりの窓口健診サポート、EPARK人間ドック)は、予約したユーザーが健康診断または人間ドックを実際に受診した月に売上計上され、通常は予約から売上計上まで2~3ヶ月要するため、現時点で売上高(手数料収入)が僅少だが、主要KPIとして、予約数は、25年3月期第1四半期5187件、第2四半期5050件、第3四半期5371件、第4四半期5567件から、26年3月期第1四半期1万9018件、第2四半期2万580件へと急増している。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が29億14百万円で営業利益が6億29百万円、第2四半期は売上高が29億10百万円で営業利益が6億32百万円だった。また同社が重要指標と位置付けているストック売上高は第1四半期が19億95百万円、第2四半期が19億82百万円、ストック粗利は第1四半期が8億46百万円、第2四半期が8億05百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。中間期の進捗率は売上高が47%、営業利益が57%、経常利益が59%、親会社株主帰属当期純利益が72%である。ストック収益が積み上がる収益構造であり、中間期の利益進捗率が高水準であることを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は売られすぎ感

 なお10月29日には、25年9月末時点で流通株式比率が27.2%となり、上場維持基準に適合したことが確認され、改善期間から解除されたと発表している。

 株価は9月の最高値圏から反落して一本調子に水準を切り下げる形となったが、売られすぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。11月26日の終値は2683円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS199円59銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約1.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS753円05銭で算出)は約3.6倍、そして時価総額は約301億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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