【どう見るこの相場】記録的短時間集中イベントの株式分割銘柄へ緊急避難のバリュー株投資も次善策

■株式分割銘柄:62社に拡大、投資単位引き下げで流動性向上

 選り取り見取りで目移りがしそうだ。今月9月26日に権利付き最終売買日を迎える株式分割銘柄である。兎に角、半端でない銘柄数なのである。9月第1週を通過した足元の段階で62銘柄を数える。今年3月末に株式分割を実施した48銘柄の29%増しである。あたかも記録的短時間集中の線状降水帯イベントのようにみえる。しかもバリュー株の宝庫で、所属市場、業種、値ごろ、業績の上方修正、増配、自己株式取得など付帯するセット材料もバラエティに富んでいるのである。権利付き最終売買日の9月26日まであと3週間、この権利取りが、マーケットのメーンとはいわないまでもサブ・テーマには浮上する可能性がある。

■東証:投資金額10万円以下要請、市場活性化を後押し

 もちろん株式分割は、カタリスト(株価材料)的には中立材料にとどまる。その目的は、投資単位当たりの金額を引き下げ発行会社の株式の流動性を向上させ、投資家層の拡大を図ることが大半で、株式の投資価値自体を引き上げる効果はない。しかしそこに実質増配や自己株式取得の株主還元策や業績の上方修正などが上乗せとなり「訳あり」と変われば話は別となる。

 さらに東京証券取引所は現在、株式投資に必要な投資金額を50万円未満とすることを努力義務として定めているが、これを10万円以下に引き下げることを全上場企業に要請している。これは「貯蓄から投資」へのパラダイムシフトにより資産運用立国を目指して導入している新少額非課税制度(NISA)の成長投資枠上限が年間240万円となっており、この枠組み内での投資拡大を進める市場振興策である。

■オリエンタルCHD:過去最高益を更新、株式分割と還元策で株価急伸

 「訳あり」のセット銘柄の株高効果がどれほどだったかは、今年8月22日に株式分割(1株を2株に分割)を発表したオリエンタルコンサルタンツホールディングス<2498>(東証スタンダード)のケースで明らかだ。同社は、株式分割とともに今9月期業績の上方修正・2期ぶりの過去最高純益の更新、増配、自己株式の立会外買付取引を同時発表した。株価は、1000円高のストップを交えて上場来高値7200円まで買い進められ、高値で調整したあと前週末5日には再び7000円台の乗せ最高値を意識する動きを強めている。権利取りとともに権利落ち後も、国土強靭化・防災・減災需要へのマッチングなどが株価の注目ポイントになってくる。

 週明けの全般相場は、前週末5日の米国市場のダウ工業株30種平均(NYダウ)の反落の影響を織り込むところからスタートしそうである。8月の雇用統計で、非農業部門の雇用者数が市場予想を下回ったことが売り材料となっており、これまでの「バッドニュースはグッドニュース」とするアノマリーが不発となったことになる。しかも石破茂首相が、追い詰められて自民党総裁辞任を表明した。これに伴う国内政局不安や、9月16日からは日米中央銀行の金融政策決定会合の開催が控え、一波乱も二波乱も懸念されているのである。

 それだけに東京市場の先行きも不安定化が懸念されるが、それを乗り切るためにもここは株式分割銘柄を精査し次善策として安全投資をするのも一考余地がありそうだ。オリエンタルコンサルティングホールディングスに倣ってセット銘柄など「訳あり」株式分割銘柄が浮上する展開も想定される。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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