【忠田公夫の経済&マーケット展望】原油価格の下落やドル高が物価全体を抑えている現状では、早期に利上げ実施に動く公算は大きくない

忠田公夫の経済&マーケット展望

先週末に発表された米国の12月の雇用統計は、前月比雇用者増加数(非農業部門)が市場予想(24万人)を上回る25万2000人、失業率も前月比0.2%低下の5.6%まで改善を示した。この結果、昨年1年間の雇用者増加数は295万人となり、15年ぶりの雇用創出数となり、今年6月にも利上げに踏み切る可能性が高まる雇用環境になってきた、との見方も台頭しよう。

しかし、イエレン議長が重視する平均時給は24ドル57セントで前月から0.2%低下し、2013年7月以来のマイナスとなった。前年同月比でも1.7%の上昇にとどまり、理想とされる3%台にはほど遠く、低インフレ状態が続く物価を押し上げる力も十分とは言えない。

2015年の地区連銀総裁のFOMC投票権者の顔ぶれは、タカ派(利上げに積極的)のプロッサー総裁とフィッシャー総裁が交代し、新しくハト派(利上げに消極的)のエバンス総裁とロックハート総裁らが加入するため、雇用環境は良くなりつつあるものの、原油価格の下落やドル高が物価全体を抑えている現状では、早期に利上げ実施に動く公算は大きくないと見たい。

「期待インフレ率」を米10年債金利の推移から捉えると、原油下落の始まった昨年8~9月以降、2%を割り込み、直近は4年半ぶりの1.5%台に低迷していることから見ても、利上げの前倒しは考え難い。

今週から米主要企画の2014年10~12月期決算発表が始まる。昨年7月時点では8%近い増益が見込まれていたが、エクソンモービルなどのエネルギー関連には2割程度の減益を余儀なくされるところが多くあるため、全体の増益率は昨年7~9月期の前年同期比10%増益から同4~5%増益にとどまる公算が大きい。

だが、原油価格の下落は、米国の実質国内総生産(GDP)の70%を占める個人消費にはプラスに働くために、景気全体を押し上げる効果が期待されよう。

足元の10~12月期決算の内容の見極めが大切だ。(忠田公夫=経済・株式評論家・アナリスト。ナショナル証券投資調査部長、SMBCフレンド調査センター常務を経て現職。96年に日本経済新聞社・日本経済研究センター主催の関西経済人・エコノミスト会議において優秀エコノミスト賞受賞)

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