【忠田公夫の経済&マーケット展望】5月の米・雇用は実質7.3万人の増加、景気は曲がり角に

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 5月8日付けの当欄で「これまで大幅な雇用の増加を続けてきた小売業が減少に転じた点は気にかかる。足もとで米国の景気はやや踊り場に差し掛かりつつあるのかもしれない」と記した。このほど明らかにされた5月の雇用統計で、非農業部門の雇用者の増加が前月比わずか3万8000人にとどまったことは、今後数か月の米国経済の動向が踊り場入りしてしまうかどうかのカギを握る、と言っても決して過言ではないだろう。

 もっとも、5月の雇用統計には通信大手ベライゾンの従業員のストライキによる一時的な減少分(3万5000人)が含まれていたため、実質的には雇用者の増加は7万3000人と見て差し支えないが、それでもヘルスケア分野を除くほぼ全ての業種で雇用が鈍化した事実は、7年近くにわたり緩やかに回復してきた米国景気が微妙な曲がり角を迎えた一つのシグナルと受け止めておきたい。

 FRBのイエレン議長は5月27日の講演で「雇用の改善が続けば、数か月内の利上げが適切」との認識を示したが、今回の雇用状況を見て、6月6日の講演でどのように発言を修正するのか、十分見極める必要があろう。

 5月の雇用統計の内容が伝えられた後、NYダウは一時140ドル安まで下落したものの、6月中旬のFOMCでの利上げの可能性はほぼなくなったとの見方が強まり、米金利が低下、つれてドルが下落したことで、先行きの米景気にプラスに働くと捉え、ダウは31ドル安まで戻して引けた。

 中国、ブラジル、ロシアなど新興国の経済が減速するなか、世界経済を牽引してきた米国経済の動向は、わが国の経済や株価に密接な関係があるだけに、今後の米国株やドル円の行方、これらを左右するFRBによる政策の舵取りから当分、目の離せない状況が続きそうだ。

 来月上旬に発表される6月の雇用統計では、雇用者の増加幅は今回の3万8000人を確実に上回るものと見られるが、どこまで改善できるのか、米金利とドル円の動向に細心の注意を払いたい。(アナリスト)

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