【忠田公夫の経済&マーケット展望】完全雇用状態の米国、平均時給の上昇につながるかポイント

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 6月相場は米国の5月雇用統計の大幅な下振れ(雇用の増加数がわずか3万8000人)に始まり、下旬の英国国民投票でまさかのブレグジット(EUからの離脱)が現実のものとなり、マーケットは大荒れとなった。世界の株式市場や為替市場が大揺れするなか、リスク回避のマネーが安全指向を強め、債券市場や金市場に流れ込み、世界的に金利の低下が一段と進んだ。

 このほど発表された6月の米雇用統計では、前月とは一転して雇用の増加数が28万7000人という強い数字が明らかになり、NYダウは前日比250ドル上昇し1万8146ドルで終了。テクニカル上の節目1万8150ドルを終値でブレイクする勢いを示しつつある。

 直近の懸念材料として、(1)ブレグジットに伴い英不動産市況が悪化した結果、複数の英不動産投資ファンドが解約停止に追い込まれるなど、一部に流動性不安の状況が散見される。(2)イタリアの多数の銀行が不良債権(邦貨換算で約40兆円)を抱え、EUがこれに対し適切な対応を速やかにとれるのか、市場の一部に疑念が生じている。今月21日頃に明らかにされる予定のストレステストの結果が注目されよう。これらの懸念要因が払拭されれば、世界のマーケットは次第に落ち着きを取り戻すことが期待されよう。

 最後に、世界経済の牽引役の米国の金融政策にふれたい。直近の6月雇用統計で5月の雇用増加数が3万8000人から1万1000人に下方修正されたことで、4-6月の平均雇用増加数が14万7000人に大幅に減少したが、これは7年におよぶ緩やかな景気回復が持続したために、雇用の面ではほぼ完全雇用に達しつつある姿を示唆しているのかもしれない。この想定が正しければ、今後、平均時給の上昇率が次第に高まってくるはずであり、こうした状況とブレグジットや他のリスクを勘案しながら、FRBは年内に1回の利上げを検討してくるのではないだろうか。利上げの時期が後ずれするほど、NYダウの上昇期間は長くなる公算があろう。(アナリスト)

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