【アナリスト水田雅展の銘柄分析】生化学工業は自律調整が一巡して14年11月高値を試す

銘柄分析

 関節機能改善剤アルツが主力の生化学工業<4548>(東1)の株価は、12月17日の1873円から切り返し、1月21日は2095円まで上伸した。今期(15年3月期)営業利益増額の可能性もあり、自律調整が一巡して14年11月高値2288円を試す展開だろう。なお2月3日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

 国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け関節機能改善剤スパルツ、米国向け単回投与関節機能改善剤ジェル・ワン、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、およびLAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。高齢者人口増加を背景に関節機能改善剤の需要拡大が期待される。

 09年3月策定の「生化学工業10年ビジョン」に基づいて、研究開発は糖質科学分野に焦点を絞っている。開発中の新薬としては、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603(コンドリアーゼ)、アルツの腱・靭帯付着部症の国内適応症追加SI-657、変形性膝関節症改善剤SI-613、ドライアイ治療剤SI-614、関節リウマチ治療剤SI-615(導入品)などがある。

 SI-6603は14年1月に国内で製造販売承認申請し、米国では第Ⅲ相臨床試験を実施中である。SI-657の国内第Ⅲ相臨床試験は14年10月に完了した。SI-613は国内第Ⅱ相臨床試験を実施中である。SI-614は14年5月に米国で第Ⅱ・Ⅲ相臨床試験を開始した。SI-615は国内第Ⅰ相臨床試験を実施中である。

 14年10月には米国ニュージャージー州に駐在員事務所を開設した。ジェル・ワンおよびスパルツの拡販に向けて現地販売員への製品教育を推進し、米国市場に関する情報収集なども強化する。

 1月9日にはアルツディスポ新製剤設備(高萩工場第5製剤棟)が稼働開始した。既存設備老朽化への対応に加えて、アルツディスポの中長期的な安定供給を目的として、12年3月から建設を進めてきた。第5製剤棟および第4製剤棟にアルツディスポの生産を集約することで効率化を推進する。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(5月13日公表)は売上高が前期比1.6%減の291億50百万円、営業利益が同44.3%減の27億50百万円、経常利益が同28.5%減の42億円、そして純利益が同27.3%減の34億50百万円で、配当予想は前期と同額の年間26円(第2四半期末13円、期末13円)としている。なお想定為替レートは1米ドル=102円としている。

 国内のアルツが薬価改定の影響、米国向けスパルツが競争激化や前期の販売提携先での在庫積み増しの反動影響を受け、利益面では減価償却費や研究開発費の増加も影響する見通しだ。

 第2四半期累計(4月~9月)は減収減益だったが、売上高、利益とも期初計画を上回った。円安進行に伴う保有外貨建て資産の為替評価益増加も寄与した。また通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.9%、営業利益が56.9%、経常利益が50.2%、純利益が48.9%となり、営業利益の進捗率は高水準である。下期には米国向けジェル・ワンの出荷が増加する見込みであり、拡販強化や円安進行メリットで通期営業利益増額の可能性もあるだろう。

 株価の動きを見ると、14年11月高値2288円から利益確定売りで一旦反落したが、12月17日の1873円から切り返し、1月21日は2095円まで上伸した。自律調整が一巡したようだ。

 1月21日の終値2088円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円73銭で算出)は34倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は1.3%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS1140円48銭で算出)は1.8倍近辺である。

 日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を回復し、週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線近辺から切り返した。強基調を確認した形であり、自律調整が一巡して14年11月高値2288円を試す展開だろう。

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