クリーク・アンド・リバー社、25年2月期は増益予想、通期計画達成に向けて案件獲得順調

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(東証プライム)は、クリエイティブ分野を中心にプロフェッショナル・エージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、プロフェッショナル50分野構想を掲げて事業領域拡大戦略を加速している。25年2月期は増益予想としている。第2四半期累計は減益だったが、通期計画達成に向けて案件獲得が概ね順調に進んでおり、下期に挽回を目指すとしている。積極的な事業展開で、通期ベースでの収益拡大基調を期待したい。株価は8月の年初来安値圏から徐々に水準を切り上げて戻り歩調の形だ。出直りを期待したい。

■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたプロフェッショナル・エージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、およびライツマネジメント(知的財産の流通)事業を展開している。

 プロフェッショナル8領域(クリエイティブ、メディカル・ヘルスケア、コンストラクション、クオリティ・オブ・ライフ、ライフサイエンス、コンピュータサイエンス、エンジニアリング、経営支援)の18分野に展開し、さらにプロフェッショナル50分野構想を掲げ、グループ資産を活用した商品・サービス・プロジェクトの開発や事業領域の拡大を推進している。24年2月期末時点でプロフェッショナルクリエイター39万4000人、クライアント5万社のネットワークを構築していることが強みだ。

 新規エージェンシー事業としては建築、ファッション、シェフ、プロフェッサー、ドローン、舞台芸術、リサーチャー(研究開発支援者)、CXO(CEO、CFO、CMOなど企業における業務や機能の最高責任者の総称)などの分野にも積極展開している。

 23年1月にテレビ番組企画・制作や人材サービスなどを展開するシオン・グループ3社を子会社化、23年5月に施設建築領域全般においてマネジメント・セミナー事業を展開するALFA PMCを子会社化、24年2月にVR・メタバース関連事業を展開するShiftall社を子会社化、24年3月に生成AIを活用してクリエイターの総合支援を行うリヴァイを子会社化し、グループは31社となった。また24年3月には北米のゲーム開発ニーズに対応してモントリオール(カナダ)支社を開設した。

 なお24年3月には経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に2年連続で認定された。

■事業シナジー強化

 事業シナジーを見越した資本参加としては、バイオベンチャーのCO2資源化研究所、アグリベンチャーのプラントライフシステムズ、不動産仲介プラットフォームのエージェント・グロース(事業上の通称はケラー・ウィリアムズ・ジャパン)、弁護士保険のミカタ少額短期保険、NFT関連のブロックチェーンエンターテインメント事業を展開するシンガポールDEA社、子ども向けオンライン世界旅行のMimmyなどに出資している。22年9月にはWeb3事業・NFT事業パートナーとしての連携強化を図るためシンガポールDEA社に追加出資した。

 22年10月には投資事業を行う子会社としてC&Rインキュベーションラボを設立した。既存事業とのシナジーや新規事業立ち上げのシーズ獲得など、グループとしてのM&A・事業承継、事業再生への取り組みを本格化させる方針だ。そして24年2月期末時点で9社(劇団運営および公演のYTJ、クラウドシングルサインオンのインターナショナルシステムリサーチ、デジタル商社のStandage、スポーツコンバインや人材紹介のF&V、食品原料Web売買プラットフォームのICS-net、毛髪再生医療・次世代インプラントのオーガンテクノロジーズ、エンジニア派遣のネクサスホールディングス、IPO・IRテックのUniforce、経営・IRコンサルのストラテジー・アドバイザーズ)に出資している。

■日本クリエイティブ分野が拡大基調

 24年2月期の事業分野別の構成比は売上高がプロデュース49%、エージェンシー派遣35%、エージェンシー紹介12%、ライツマネジメント・他4%、売上総利益がプロデュース39%、エージェンシー派遣21%、エージェンシー紹介33%、ライツマネジメント・他7%だった。

 セグメント別の構成比は、売上高が日本クリエイティブ分野70%、韓国クリエイティブ分野7%、医療分野11%、会計・法曹分野5%、その他(IT分野のエージェンシー事業、新規事業など)7%、営業利益(調整前)が日本クリエイティブ分野70%、韓国クリエイティブ分野▲1%、医療分野32%、会計・法曹分野4%、その他▲5%だった。

 日本クリエイティブ分野の領域別構成比は売上高がゲーム37%、Web25%、映像(テレビ・映画)31%、電子書籍・YouTube等2%、新規エージェンシー4%、その他1%、営業利益がゲーム53%、Web25%、映像23%、電子書籍・YouTube等13%、新規エージェンシー▲3%、その他▲11%だった。

 収益面では、医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期(特に第1四半期)に偏重するため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。主力の日本クリエイティブ分野は売上・営業利益とも拡大基調である。新規事業分野は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。

■プロフェッショナル50分野構想

 中長期の成長戦略として「プロフェッショナル50分野構想」を掲げ、23年4月策定の新中期経営計画では、最終年度26年2月期の目標値に売上高605億円、営業利益56.5億円、営業利益率9.3%を掲げている。株主還元については、配当性向目標を従来の20%水準から30%水準に引き上げた。

 基本戦略としては、プロフェッショナル分野のさらなる拡大(プロフェッショナル50分野構想)、新規サービスの創出(プロフェッショナルの能力を活かす新たな価値の創造)、経営人材の創出、コーポレートガバナンスの強化を推進する。M&A・アライアンスも積極活用して事業領域拡大戦略を加速する方針だ。

 グループ資産を活かした商品・サービス・プロジェクトとしては、漫画家発掘・デジタル配信事業のプラットフォーム「漫画LABO」、クリニックの経営支援、メタバース関連のVR建築展示場「XR EXPO」、独自のVR映像配信技術を活用した低遅延VRリアルタイム配信システム・VR遠隔医療教育システム、AR胸腔ドレナージ(順天堂大学と医療ARを共同研究・開発中)、AI需要予測「Forecasting Experience」、事業承継・M&A事業、アパレル分野のDXを支援する「sture(ストゥーラ)」、漫画に音楽や音声を融合した動画「モーションコミック」(プラットフォーム開発中)などがある。また、ゲーム・建築・食分野において業界未経験者の育成機関を開講した。業界ニーズに対応した独自の人材循環モデルを構築する。24年3月には、中堅・中小企業向けDX無料相談窓口サービス「DXの森」をスタートした。

 なお23年3月に公開したクリエイター専用の仕事・交流特化型メタバース「C&R Creative Studios Metaverse」は、世界中のクリエイターが客船「C&R Creative Studios号」に乗船して交流とアイテムの融合を図ることで、世界を革新するコンテンツやサービスを生み出すことをコンセプトとしている。24年2月にはC&R Creative Studiosから独立する形で、企業のDX支援業務など行うC&R DX STUDIOを開設した。

 アグリカルチャー分野の子会社コネクトアラウンド(アグリテックを活用した新たな農業ビジネスを展開する目的で22年4月設立)は、23年2月に川崎市中原区で6次化農業・実習施設「FUN EAT MAKERS 武蔵新城」を開設した。さらに25年2月には福島県大熊町で農・食・滞在の複合施設「FUN EAT MAKERS in Okuma」の完成を予定している。

■25年2月期2桁増収増益予想

 25年2月期の連結業績予想は、売上高が24年2月期比10.4%増の550億円、営業利益が17.0%増の48億円、経常利益が16.0%増の48億円、親会社株主帰属当期純利益が16.6%増の31億円としている。配当予想は24年2月期比2円増配の43円(期末一括)としている。予想配当性向は30.5%となる。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比2.3%増の258億36百万円、営業利益が15.6%減の21億95百万円、経常利益が13.7%減の22億65百万円、親会社株主帰中間純利益が14.4%減の14億70百万円だった。

 期初計画(売上高270億円、営業利益27億円、経常利益27億円、親会社株主帰中間純利益17億50百万円)を下回り、減益で着地した。日本クリエイティブ分野において第1四半期に発生した大手ゲームパブリッシャーの案件縮小の影響、日本クリエイティブ分野および会計・法曹分野における人材紹介サービスの成約長期化の影響、医療分野において前期後半から実施した営業体制見直し等の構造改革の影響のほか、新卒採用に伴う人件費の増加やオリジナルコンテンツ開発費用の増加など先行投資も影響した。

 日本クリエイティブ分野(6社)は売上高が1.0%増の174億76百万円、営業利益(全社費用等調整前)が21.1%減の11億52百万円だった。大手ゲームパブリッシャーの案件縮小などで売上高が伸び悩み、先行投資による費用増加も影響した。韓国クリエイティブ分野(2社)は売上高が7.7%減の15億77百万円、営業利益が11百万円の損失(前年同期は14百万円の損失)だった。TV局向け派遣が減少したが、Webtoonの伸長などにより営業損失が小幅に縮小した。医療分野(2社)は売上高が2.4%減の32億67百万円、営業利益が13.3%減の10億19百万円だった。営業体制見直し効果遅延で成約数が減少した。会計・法曹分野(2社)は売上高が2.0%減の12億43百万円、営業利益が33.5%減の61百万円だった。人材紹介サービスの成約長期化が影響した。

 その他事業(新規事業18社)は売上高が39.3%増の22億70百万円、営業利益が24百万円の損失(同1億13百万円の損失)だった。投資段階事業が多いため全体として営業損失だが、前年比では損失縮小した。営業利益増減の内訳は増益の11社合計で1億20百万円増益、投資が増加した5社合計で45百万円減益、新規設立・グループ化2社合計で21百万円増益だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高128億54百万円で営業利益12億61百万円、第2四半期は売上高129億82百万円で営業利益9億34百万円だった。四半期別営業利益を前年比で見ると、第1四半期は20.2%減益、第2四半期は8.7%減益となり、第2四半期は減益幅が縮小して改善傾向となった。日本クリエイティブ分野の営業利益が第1四半期34.1%減益に対して第2四半期4.3%減益と改善した。

 通期連結業績予想は据え置いている。増収増益で14期連続増配予想としている。新卒採用増加(グループ合計で22年4月入社160名、23年4月入社344名、24年4月入社361名)や戦略投資などでコストが増加するが、日本クリエイティブ分野の拡大、新規事業会社の収益改善などで吸収する見込みだ。

 事業別の計画は、日本クリエイティブ分野の売上高が10%増の385億円で営業利益が11%増の32億円、韓国クリエイティブ分野の売上高が7%減の33億円で営業利益が40百万円の損失(24年2月期は41百万円の損失)、医療分野の売上高が7%増の58億円で営業利益が8%増の14億円、会計・法曹分野の売上高が8%増の27億円で営業利益が17%増の2億円、その他(前期比2社増加の18社)の売上高が37%増の50億円で営業利益が50百万円利益(同2億円の損失)としている。

 日本クリエイティブ分野では既存事業の成長を見込み、新卒社員の早期戦力化や採算管理強化を推進する。韓国クリエイティブ分野では引き続きTV局向け派遣の減少を想定している。医療分野では医師紹介事業の好調推移に加え、新型コロナウイルスワクチン関連反動減影響も一巡するが、需要増に対応した営業体制見直し等の構造改革費用を織り込んでいる。会計・法曹分野では会計士・弁護士の紹介事業が伸長する見込みだ。その他分野では各社の収益改善を見込んでいる。

 通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高47%、営業利益46%、経常利益47%、純利益47%である。医療分野の収益が上期(特に第1四半期)に偏重する季節要因を考慮すると実質的な進捗率はやや低水準だが、通期計画達成に向けて案件獲得が概ね順調に進んでおり、下期に挽回を目指すとしている。積極的な事業展開で、通期ベースでの収益拡大基調を期待したい。

■株価は戻り歩調

 株価は8月の年初来安値圏から徐々に水準を切り上げて戻り歩調の形だ。出直りを期待したい。11月25日の終値は1596円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS140円93銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の43円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS713円59銭で算出)は約2.2倍、そして時価総額は約367億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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