【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エンタープライズは切り返しの動き強まる

銘柄分析

 コンテンツ制作・配信の日本エンタープライズ<4829>(東1)の株価は、今期(15年5月期)業績の減額修正や公募増資による希薄化懸念も影響して水準を切り下げたが、1月19日の363円から切り返しの動きを強めて28日は410円まで戻した。調整が一巡して出直り展開だろう。

 コンテンツ配信などのコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開し、中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営と電子コミック配信サービスを手掛けている。

 配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略として、ネイティブアプリ事業を新たな収益柱に育成する方針だ。そしてネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化に向けて、13年3月に音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月に子会社HighLabを設立、14年11月にアプリ開発の会津ラボを子会社化した。

 中国・上海の携帯電話販売については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造の構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの収益改善策を推進している。

 コンテンツ配信のグローバル展開では14年6月、インドネシア大手移動体通信キャリアのXL Axiata社が運営するアプリストア内のアプリ取り放題サービス向けに、スマートフォンアプリの提供を開始した。ローカライズした自社アプリを世界の各種プラットフォームに配信して自社コンテンツ資産の2次利用を推進する方針だ。

 法人向け事業では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。

 今期(15年5月期)の連結業績見通し(11月28日に売上高と利益を減額、1月9日に純利益を増額)は売上高が前期比13.8%増の51億30百万円、営業利益が同34.4%減の2億20百万円、経常利益が同32.4%減の2億30百万円、純利益が同58.8%減の1億80百万円で、配当予想(7月9日公表)は前期と同額だが普通配当で年間3円(期末一括)としている。

 ソリューション事業で店頭アフィリエイト広告が回復基調だが、新サービスの企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」の開発遅延に伴って売上高が期初計画を下回り、子会社HighLabのネイティブアプリ「Fivetoak」および「ひっぱれ!ネコPingプラネット」のプロモーション費用など先行投資負担が影響する。

 第2四半期累計(6月~11月)は前年同期比15.7%増収、同60.9%営業減益、同58.3%経常減益、同20.3%最終増益だった。コンテンツサービス事業はゲームや交通情報が牽引して同8.2%増収、ソリューション事業は店頭アフィリエイト広告が大幅伸長して同24.8%増収といずれも好調に推移し、売上原価率も0.4ポイント改善したが、広告宣伝費の増加で営業減益、経常減益だった。純利益は投資有価証券売却益が寄与した。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.0%、営業利益が28.2%、経常利益が30.4%、純利益が88.3%である。営業利益進捗率が低水準だが、下期のネイティブアプリの収益寄与が期待される。

 なお12月9日に新株式発行および株式売出しを発表(公募による新株式発行235.7万株、株式売出し46.4万株、オーバーアロットメントによる売出しに伴う第三者割当による新株式発行42.3万株、公募価格382円)し、1月21日の第三者割当増資払込後の発行済株式総数は4048万株となった。

 株価の動きを見ると、14年11月の戻り高値634円から反落し、今期業績見通しの減額修正や公募増資による希薄化懸念も影響して水準を切り下げたが、1月19日の363円から切り返しの動きを強めている。28日は410円まで戻した。調整が一巡したようだ。

 1月28日の終値404円を指標面で見ると、今期予想連結PER(増資後の会社予想の連結EPS4円63銭で算出)は87倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は0.8%近辺、前期実績PBR(前期実績に増資を考慮した連結BPS107円70銭で算出)は3.8倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。また週足チャートで見ると52週移動平均線近辺から反発してサポートラインを確認した。調整が一巡して出直り展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■東京・愛知・兵庫で屋外広告も掲出、号外や無料バッティング企画も実施  Major League …
  2. ■新生児対象の臨床試験で抗炎症作用と菌叢改善を実証  森永乳業<2264>(東証プライム)は7月2…
  3. ■「日本栄養・食糧学会大会」で研究成果発表、科学的根拠を提示  味の素<2802>(東証プライム)…
2025年9月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■東証市場、主力株急落と中小型株逆行高で投資戦略二極化  証市場は9月19日に主力株の急落と中小型…
  2. どう見るこの相場
    ■プライム市場の需給悪化を警戒し、個人投資家は新興市場へ資金を逃避  「桐一葉 落ちて天下の秋を知…
  3. ■01銘柄:往年の主力株が再評価、低PER・PBRで買い候補に  今週の当コラムでは、買い遅れカバ…
  4. ■日米同時最高値への買い遅れは「TOPIXコア30」と「01銘柄」の出遅れ株でカバー  日米同時最…
  5. ■東京株、NYダウ反落と首相辞任で先行き不透明  東京株式市場は米国雇用統計の弱含みでNYダウが反…
  6. ■株式分割銘柄:62社に拡大、投資単位引き下げで流動性向上  選り取り見取りで目移りがしそうだ。今…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る