【村山貢司の気象&経済歳時記】訪日外国人

 1月末に講演のため北海道の苫小牧と室蘭に出かけたが、春節の直前の時期だったために、新千歳空港や移動のJRには中国人を中心とする外国人があふれていた。2月から北海道は雪まつりが始まることもあるが、春節の時期には外国人観光客の30%余りが北海道を訪れるというデータがある。

 観光庁の集計によると2016年に訪日した外国人は2400万人を超えたが、中国での個人輸入規制が厳しくなったために、いわゆる爆買いがなくなりデパートや大手家電販売店は売り上げが減少したと言われている。しかし、訪日外国人が国内で使った旅行代金の総額は2014年におよそ2兆300億円、2015年が3兆4770億円であり、2016年は推定2兆2千億円である。2015年が極めて異常な年であったと考えれば、今後も2兆円余りの金が国内で使われると考えてよいだろう。

 観光立国を目指してビジット・ジャパンが始まった2003年の521万人と比較すれば訪日外国人数はおよそ4.6倍に増加した。国の政策でこれほど成功したのは極めて稀であるが、問題は増加しているのは観光客だけという点である。統計資料のある2015年と10年前の2006年を比較すると商用で訪日する外国人は06年の152万人から164万人に増加しただけで、伸び率はおよそ8%である。年率1%にもならない伸びはある面で日本経済の低迷を反映しているものであろう。

 訪日する外国人は大半が東アジアの人であるが、注目すべきはタイが人数で第6位に入っていることである。タイは所得の再分配が非常にうまくいっている国で、他の途上国に比較すると中間層が圧倒的に多いのが特徴である。

 海外で日本人は皆金を持っているのに何故景気が悪いのかと聞かれることがある。国内の消費が低迷しているのは、若い人は所得が増えない、高齢者は老後が心配など様々な問題はあるが、このような暗いニュースばかりを流すマスコミや経済評論家にも問題がある。(村山貢司=気象予報士・経済評論家)

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