インテージホールディングスは調整一巡して2月高値に接近

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 インテージホールディングス<4326>(東1)は国内首位の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。18年3月期は減益予想だが保守的な印象が強い。また配当は5期連続増配予想である。株価は調整一巡して2月の上場来高値に接近している。ビッグデータ・AI(人工知能)関連としても注目され、上値を試す展開が期待される。

■国内首位の市場調査が主力、システムソリューションなども展開

 子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界9位の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。

 収益力強化に向けたグループ再編を推進している。14年6月子会社アスクレップの臨床開発事業を伊藤忠商事<8001>に譲渡、15年4月コンサルティング事業を強化するため子会社インテージコンサルティングを設立、15年10月子会社インテージがビッグデータのクリーニング・分析・価値化を図るIXT(イクスト)を設立、16年4月アンテリオの定性調査等のフィールド業務をプラメドに移管して医師パネルの管理・運用およびフィールド業務全般をプラメドに集約した。 17年3月期のセグメント別売上構成比は、消費財・サービス分野のマーケティング支援事業(事業会社インテージ、インテージリサーチ、アクセス・ジェーピー、海外子会社)66%、ヘルスケア分野のマーケティング支援事業(事業会社アンテリオ、アスクレップ、医療情報総合研究所、プラメド)22%、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンス事業(事業会社インテージテクノスフィア)12%、営業利益構成比は消費財・サービス分野のマーケティング支援事業56%、ヘルスケア分野のマーケティング支援事業35%、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンス事業9%である。期後半の構成比が高い収益特性がある。

■M&A・アライアンス戦略で業容拡大

 国内外における積極的なM&A戦略で業容を拡大している。11年9月ベトナムの市場調査会社FTA、12年9月医療情報総合研究所、12年11月医療関連インターネット調査会社プラメド、13年8月香港の市場調査会社CSG香港を子会社化した。14年5月には子会社INTAGE INDIAがインドの市場調査会社RSMRS社をグループ化した。

 アライアンス戦略では12年4月NTTドコモと合弁会社ドコモ・インサイトマーケティングを設立、13年10月韓国の業界4位の市場調査会社Hankook Researchと包括的事業協力を締結、13年11月インドネシアの市場調査会社DEKA社と合弁会社を設立した。

 14年4月みずほ銀行、インテージ、NHNテコラス、データセクションの4社協働でデータエクスチェンジコンソーソアムを発足、14年10月京都コンステラ・テクノロジーズと資本業務提携、ニールセンの消費者購買行動分析部門ニールセン・カンパニー合同会社とインテージ・ニールセン・デジタルメトリクスを設立、15年7月クロスコンパス・インテリジェンスと資本業務提携した。

 16年3月AGSと合弁会社を設立、16年7月マーケティングアプリケーションズと資本業務提携、アドウェイズと業務提携、16年8月ウィーバーズと資本業務提携、高速屋と資本業務提携、16年10月SBIインベストメントと共同でプライベートファンド「INTAGE Open Innovation Fund」設立、17年1月アジャイルメディア・ネットワーク、電通デジタル・ファンド、マイナビの3社と資本業務提携、17年3月「INTAGE Open Innovation Fund」がインテージグループの社内ベンチャーであるクロスボーダーエイジに投資した。

 17年4月には、みらい創造機構が「みらい創造一号投資事業有限責任組合」へ出資した。東京工業大学が有するビッグデータ解析、AI、IoT、ロボティクスや新材料領域の技術・ノウハウを活用し、新たな事業化とベンチャー創出を推進する。

■17年3月期増収増益

 5月12日発表した前期(17年3月期)の連結業績は、売上高が前々期(16年3月期)比5.5%増の479億87百万円、営業利益が同9.9%増の42億68百万円、経常利益が同11.3%増の43億92百万円、純利益が同23.4%増の28億71百万円だった。主力の消費財・サービス分野のマーケティング支援事業の好調が牽引して計画を上回る増益だった。

 売上総利益は同9.5%増加し、売上総利益率は27.9%で同1.0ポイント上昇した。販管費は同9.3%増加し、販管費比率は19.0%で同0.7ポイント上昇した。また営業外では持分法投資利益が増加(前々期39百万円、前期1億22百万円)した。特別損失では減損損失1億18百万円を計上したが、前々期計上の関係会社株式評価損1億20百万円が一巡した。

 またROEは12.8%で同1.4ポイント上昇、自己資本比率は60.3%で同2.8ポイント上昇した。配当は同2円50銭増配の年間35円(期末一括)で、配当性向は24.3%だった。

 セグメント別に見ると、消費財・サービス分野のマーケティング支援事業は売上高が同4.5%増の314億33百万円で、営業利益が同16.7%増の23億87百万円だった。パネル調査およびカスタムリサーチのインターネット調査などが好調に推移し、コミュニケーション分野における開発費用などを吸収した。

 ヘルスケア分野のマーケティング支援事業は売上高が同9.9%増の106億93百万円で、営業利益が同8.6%増の14億83百万円だった。アスクレップの医薬品製造販売後調査、アンテリオのカスタムリサーチのインターネット調査などが好調に推移した。

 ビジネスインテリジェンス事業は売上高が同3.4%増の58億60百万円で、営業利益が同15.5%減の3億98百万円だった。ヘルスケアおよび旅行分野が堅調だったが、AIを活用した新規事業への投資負担で減益だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期98億57百万円、第2四半期115億91百万円、第3四半期115億57百万円、第4四半期149億82百万円、営業利益は4億92百万円、8億81百万円、14億36百万円、14億59百万円だった。
 
■18年3月期減益予想だが保守的、配当は5期連続増配予想

 今期(18年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)は売上高が前期(17年3月期)比6.3%増の510億円、営業利益が同6.3%減の40億円、経常利益が同5.5%減の41億50百万円、純利益が同2.5%減の28億円としている。開発費の増加などで減益予想だが保守的な印象が強い。上振れ余地がありそうだ。

 セグメント別の計画は、消費財・サービス分野マーケティング支援事業の売上高が同5.6%増の332億円で営業利益が同16.6%減の19億90百万円、ヘルスケア分野マーケティング支援事業の売上高が同7.5%増の115億円で営業利益が同3.1%増の15億30百万円、そしてビジネスインテリジェンス事業の売上高が同7.5%増の63億円で営業利益が同20.5%増の4億80百万円としている。

 配当予想は同5円増配の年間40円(期末一括)としている。5期連続増配で予想配当性向は28.6%となる。利益配分については、配当と内部留保のバランスを考慮した利益配分を行うことを基本方針とし、連結配当性向30%を目安にしている。

■新中期計画で研究開発投資を加速

 第12次中期経営計画(18年3月期~20年3月期)では、グループ基本方針を「データ活用領域で先手を取れ」として、戦略ポイントは成長ドライバー創出に向けた研究開発体制の整備、ビジネス領域の進化とデータ価値向上の実現、働き方改革へのチャレンジとした。

 経営目標値には20年3月期売上高620億円(消費財・サービス分野マーケティング支援事業394億円、ヘルスケア分野マーケティング支援事業126億円、ビジネスインテリジェンス事業100億円)、営業利益50億円を掲げている。事業成長のための投資を推進し、売上高に対するR&D経費比率を従来の1%水準から2%水準に引き上げる。株主還元はROAを意識した経営を推進し、配当性向35%を目安とする。

■株価は2月高値に接近

 株価の動きを見ると、調整一巡して2月の上場来高値2339円に接近している。4月13日の直近安値1891円から切り返し、5月10日に2208円、17日に2205円まで上伸した。18年3月期減益予想に対するネガティブ反応は限定的のようだ。

 5月19日の終値2197円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS140円22銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間40円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1179円74銭で算出)は1.9倍近辺である。時価総額は約442億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返して13週移動平均線を回復した。ビッグデータ・AI(人工知能)関連としても注目され、上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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