【村山貢司の気象&経済歳時記】気象が経済に与える影響

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 異常気象である。6月の降水量は北海道で平年よりかなり多くなったが、その他の地域は少ない。本来梅雨のない北海道で雨が多く、他が少ないという例年とは全く逆の現象になっている。雨の少ない状況は4月から続いており、3か月連続での少雨になっている。すでに農作物には影響が出始めている。利根川水系のダムの貯水率は50%台にまで低下しており、この夏も水不足が懸念される。この傾向は世界的なもので、5月は世界各地で異常な高温と少雨・干ばつが発生している。

 気象が経済に与える影響はかなり大きいが、近年の異常気象の規模や回数は世界的な水や食料の不足につながり、このことは途上国における政治的な不安定さを大きくする原因になる。世界の歴史の中で戦争が多発した時代が何度かあるが、多くの場合異常気象による食料や牧草の不足が引き金になっている。過去の食料不足は、寒冷化による雨量の減少と低温が原因であった。温暖化による気候変動では、寒冷化とは逆に高温と雨量の増加が予想されているが、これは広い地域での平均値であって、現実に起きている現象は欧米やアジアでの少雨・干ばつである。アジアでは特に食料自給率の低下が著しい中国の食料輸入量が急増しており、60%もの食料を輸入している日本への影響も大きくなっている。

 気温が高いために夏物商品の出足は良いが、短期的な経済の好調さだけではなく、長期的に見て、水や食料さらにエネルギーなどをいかに安定的に供給できるかを真剣に考えるべきであろう。2100年には日本の気温は現在よりさらに3度ほど高くなると予想されている。東京の街路樹がイチョウではなく、ヤシの木になると想像して欲しい。(村山貢司=気象予報士・経済評論家)

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