【宮田修 アナウンサー神主のため息】親と子は「他者」なのか?

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 新聞に掲載されていた気になる人生相談がありましたので取り上げます。33歳の女性の相談です。この女性の父親が結婚させたがっているというのです。

 少し引用してみましょう。私の家は、両親も祖父母も早くに結婚し、周りも同じような状況です。父は「結婚することが幸せ」という思いが人一倍強く、口癖は「お金はないが財産はあるんだ」です。私に家を継がせようと考えています。―という状況のようです。

 相談者は現在事務の仕事をしていてやりがいを感じているそうです。これまでお見合いをしたのですが、価値観が合わず結婚には至りませんでした。結婚に気が進まないのは、母が病気をしたときに、父親が世話をしなかったのを見てがっかりしたとあります。

 この相談を読み当初は最近よくある話だなと思いました。仕事が面白くて結婚したくないという女性が私の周囲にもたくさんいるからです。

 この相談に37歳のお寺の住職が回答を寄せています。お坊さんは男性です。回答者は、お父さまに対して、きっぱりと「お見合いは気が進まない」と、断ることだとすでに気づいているのではないですかと言います。そしてそれをためらっているのは父親を傷つけたり、機嫌を損ねてしまうことを恐れているのではないかと回答しています。そして田舎の価値観では幸せになれそうにないことを思い切ってぶつけてみることですと相談者を励まします。

 私はここまではなるほどそうだろうなと納得しながらこの人生相談の記事を読んでいました。父親と子どもたちの世代では考え方が違います。違うのであればそれはその問題に直面している人、ここでは娘さんの考え方を優先するのも仕方ないかなと思いました。しかしその後に回答者のご住職が記していることを読み進めるうちに、私は怒りさえ覚えてしまいました。

 彼は続けてこうアドバイスしているのです。お父さまは、自分の娘が実は自分の思い通りに操れるものではなく、自分の幸せ像を押しつければ済むような相手でもなく、本人なりの生き方を模索する、一人の「他者」だと再発見することもかないましょう。結果として、父と娘の関係も、編み直すことができるはずです。そんな独立記念日を迎えたいものですねと結んでいます。

 私はどちらかというとすぐに怒り出す「瞬間湯沸かし器」です。怒りがこみ上げてきました。その原因はこの回答者が使っている二つの言葉です。「他者」「独立記念日」です。果して父親と娘は「他者」でしょうか。子どもは親から「独立」するのでしょうか。私にも二人の子どもがいますが、私は彼らを他者だと思ったことはありません。まして独立などはしていません。私と彼らは親と子です。これは永久に変わりません。

 最近、特に若い人たちの考え方でおかしいと思うことがあります。自分自身は独立した一人の個人だと考えることです。戦後そのように教えられていますので仕方ないかも知れませんが、私は間違っていると思います。なぜなら自分が一人の独立した個人だと考えることができるのはなぜでしょうか。それは両親が命をひきついでくれたからです。ご先祖さまから両親を通じて命を引き継いだから自分があり、自分があるからさまざまなことを考えることができるのです。

 私が間違っていると思うのは自分の命が両親やご先祖さまとは全く関係なくその辺でふーっと湧いたかのごとく考える最近の若者の考え方です。人間は永久に生きることはできません。そこでご先祖さまや両親は自分の命を子ども孫、子孫に伝えることで命を永遠なものにしようと考えるのです。命を引き継いだらその命を次の世代に引き継ぐのは当たり前だと私は考えます。多様な生き方の中から自分に合った生き方を選ぶ自由があるのだという人がたくさんいます。しかし私たちに命を引き継いでくれた人たちの願いに応える必要もあるのではないでしょうか。

 ここで私は回答者のお坊さんの年齢を思い出しました。37歳です。私の子どもの年です。なるほどこの世代の人はこう考えるのかと納得しました。彼も私と同じ宗教者です。ご先祖を大切に供養しているはずです。その人がこのように考えるのかと残念に思いました。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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