【ドクター箱崎幸也の健康増進実践法】飲酒と脳萎縮・認知症との関連

■脳は他臓器よりタフだが、1日2合以下を心掛ける

今月は多くの方の関心が高い「飲酒と認知症」について説明したいと思います。

脳は他の臓器と同様に加齢とともに萎縮することが知られています。30歳を100%とした相対的機能では、80歳を過ぎると腎臓,心臓機能や水分保持能力は約40%低下します。しかし、脳の神経伝達速度は20%程度の低下に留まり、脳は一般的には加齢でも他臓器よりも比較的機能は維持されます。

大量飲酒によって酩酊しますので、お酒が脳に与える影響はタバコより大きいと考えます。

以前から、「酒飲みは10年早く脳萎縮が進行し認知症になる」、「宴会で酔いつぶれる人は認知症予備軍である」、「1日3杯のワインで認知症が予防できる」などと、お酒と認知症の関連性は混沌としています。

約20年前に千葉大学のグループが、脳ドックを受診した1614人で脳萎縮と飲酒量との関連性を調べています。1日2合以下では飲酒と脳萎縮との関連は認められませんでした。しかし、1日2合以上飲酒する人たちでは高率(36%)に脳萎縮がみられました(2合以下:25%)。さらに中等度萎縮は10%であり、2合以下の人(5%以下)に比較し有意に高率でした。このデータから、「酒飲みは10年早く脳萎縮が進行する」ことは確実なようです。

しかし、脳萎縮の人が直ちに認知症になるかは、はっきりしていません。私の患者さんでも、1日、日本酒換算2合以上を毎日飲む方は何人かいらっしゃいます。確かに前述のデータと同様に殆どの方で程度の差はあるものの脳萎縮が認められますが、皆さん認知症兆候はなく趣味や運動をエンジョイなさっています。

しかし長期飲酒とビタミンB1(豚肉、豆類、玄米、緑黄野菜等に多い)欠乏では、アルコール性痴呆症が出現する症例報告もあり、やはり、適量の飲酒(日本酒換算2合以下/日)を心掛けるのが認知症予防に必須かもしれません。(元気会横浜病院々長、元自衛隊中央病院消化器内科部長)

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