【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アートスパークHDは目先的な過熱感が解消して再動意のタイミング

銘柄分析

 電子書籍ビューアやグラフィクス制作支援ソフトのアートスパークホールディングス<3663>(東2)の株価は、13年10月高値1022円を突破して2月23日と24日の1350円まで急伸した。今期(15年12月期)大幅増収増益見通しや自動走行関連などを材料視した。その後は利益確定売りで一旦反落したが、目先的な過熱感が解消して再動意のタイミングだろう。収益改善基調を評価して上値を試す展開が期待される。

 グラフィクス技術のセルシスとエイチアイが12年4月に統合した持株会社である。電子書籍ビューア「BS Reader」やグラフィクスソリューションなどのコンテンツソリューション事業、マンガ・イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO」などグラフィクスコンテンツ制作支援ツールのクリエイターサポート事業、3Dグラフィックス描画エンジンなどのUI/UX事業を展開している。

 マルチデバイス対応の電子書籍ビューア「BS Reader」は、インフォコム<4348>グループのアムタスの電子書籍配信サービス「ekubostore」や、ソフトバンクモバイルのスマートフォン向け総合電子書籍サービス「スマートブックストア」など897以上の電子書籍配信サービスで利用されている。

 マンガ制作ソフト「ComicStudio」は累計出荷本数が160万本を超え、マンガ・イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO」は40万本を超えている。またクリエイターの創作活動を支援するサイト「CLIP」は14年6月末時点で登録者数が41万人となった。

 UI/UX事業では、エイチアイの組み込み機器向けUI開発環境「UIコンダクター」が、14年11月にマツダ<7261>のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース=人間と機械が情報をやり取りするための手段・装置・ソフトウェアなどの総称)先行開発環境に採用された。

 戦略分野に対して積極投資を推進し、13年12月にエイチアイが自動走行関連ベンチャーのZMPの第三者割当増資の一部を引き受けた。また14年2月にエイチアイがエイチアイ関西の株式を取得、14年4月にエイチアイが組み込み機器向けソフトウェア開発のユーアイズデザインの株式を取得した。

 なおエイチアイは、15年1月の自動車次世代技術専門展「オートモーティブ ワールド2015:第3回コネクティッド・カー EXPO」に、次世代車載HMIや自動走行関連ベンチャーのZMPとのコラボレーションデモを展示した。また米国で開催された世界最大規模の家電見本市CESにおいても次世代車載HMIをデモ展示した。

 今期(15年12月期)の連結業績見通し(2月6日公表)は、売上高が前期比13.7%増の43億49百万円、営業利益が同81.5%増の1億81百万円、経常利益が同58.1%増の1億48百万円、純利益が同2.1倍の1億25百万円の大幅増収増益としている。配当については無配継続としている。

 今期の主要施策として、グループ共通コアエンジン開発と製品化への展開、コンテンツソリューション事業における「CLIP STUDIO」技術ノウハウを生かした法人向けグラフィクス関連分野の強化、クリエイターサポート事業における「CLIP STUDIO」シリーズの拡販、国内市場の直販率拡大および海外マーケット立ち上げ、UI/UX事業における市場拡大戦略を掲げている。製品開発の効率化や原価管理の徹底も寄与して収益改善基調だろう。

 株価の動きを見ると、1月30日発表の前期業績増額修正、2月6日発表の今期大幅増収増益見通しを好感し、さらに自動車の自動走行関連のテーマ性なども材料視して、1月30日終値680円から2月18日に1342円、さらに23日と24日には1350円まで急伸した。13年10月高値1022円を一気に突破して上値追いの展開となった。その後は利益確定売りで一旦反落したが、足元では目先的な過熱感が解消している。

 1月30日の終値1054円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS18円80銭で算出)は56倍近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS348円84銭で算出)は3.0倍近辺である。

 週足チャートで見ると高値圏で長い上ヒゲを付けたが、13週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。また日足チャートで見ると25日移動平均線が接近して目先的な過熱感が解消した。再動意のタイミングだろう。自動車の自動走行関連というテーマ性や、収益改善基調を評価して上値を試す展開が期待される。

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