【アナリスト水田雅展の銘柄診断】エイジアは今期末の株主優待制度新設を好感

銘柄分析

 メール配信ソフト大手エイジア<2352>(東マ)の株価は、第3四半期累計(4月~12月)業績の低進捗率が嫌気されて2月2日に951円まで急落したが、その後は1100円近辺まで戻している。今期(15年3月期)末の株主優待制度新設を好感し、中期成長力も見直して1月1260円、14年11月1360円を目指す展開だろう。

 自社開発e-CRMシステム「WEBCAS」シリーズなどのアプリケーション事業を主力として、システム受託開発やマーケティングコンサルティングなどのサービスソリューション事業も展開している。自社開発メール配信ソフト「WEBCAS e-mail」の導入実績は総合通販大手など約1600社以上に達し、国内メール配信パッケージ市場でのシェアは1位である。

 中期成長戦略として「メールアプリケーションソフトのエイジア」から、販売促進・マーケティング支援分野に事業領域を拡大して「eコマースの売上UPソリューションを世界に提供するエイジア」への発展を目指し、クラウドサービス(ASP、SaaS)の強化、新製品・サービス開発の推進、サービスソリューション事業の拡大に取り組んでいる。

 M&A・アライアンス戦略では、12年4月ECサイト構築・運営事業拡大に向けてシステムインテグレータ<3826>と資本・業務提携、12年12月メールマーケティングコンサルティング事業拡大に向けてメールマガジン制作・運用支援のグリーゼと資本・業務提携、13年10月メールマガジン戦略立案・企画・制作・分析サービスのFUCAを連結子会社化、14年1月Webサイトソーシャル化支援サービスのフィードフォース社と業務提携した。

 14年6月には、データベース作成システム「WEBCAS DB creator」を発売し、ジェイモードエンタープライズと共同開発した電子レシートメール送信サービス「レシートメール」も発売した。

 また1月27日にはトヨタ自動車<7203>のメール配信システム導入事例、3月5日には三井物産<8031>の社会貢献活動「サス学」アカデミーメルマガ配信システム導入事例を公開している。

 今期(15年3月期)の連結業績見通しは前回予想(5月14日公表)を据え置いて、売上高が11億20百万円~11億80百万円(前期比11.2%増~17.2%増)、営業利益が2億45百万円~2億80百万円(同1.1%増~15.6%増)、経常利益が2億45百万円~2億80百万円(同2.5%増~17.2%増)、純利益が1億45百万円~1億65百万円(同11.0%増~26.3%増)、配当予想が同1円増配の年間15円(期末一括)としている。

 アプリケーション事業では利益率の高いクラウドサービスの拡大を見込み、サービスソリューション事業では子会社化したFUCAの通期連結や「WEBCAS+メルマガ企画・制作」の大型案件も寄与する見込みとしている。

 第3四半期累計(4月~12月)は、FUCAの連結も寄与して前年同期比4.3%増収だったが、アプリケーション事業の売上総利益率低下や販管費の増加で同25.6%営業減益、同24.8%経常減益、同22.8%最終減益だった。

 また通期見通し(レンジ下限値)に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が67.3%、営業利益が48.6%、経常利益が49.0%、そして純利益が50.3%と低水準のため下振れに注意が必要だが、四半期別に見ると売上高は第1四半期(4月~6月)2億22百万円、第2四半期(7月~9月)2億65百万円、第3四半期(10月~12月)2億67百万円で、営業利益は第1四半期14百万円、第2四半期51百万円、第3四半期54百万円であり、第4四半期(1月~3月)の挽回に期待したい。

 大型案件の引き合いは増加基調のもようであり、クラウドサービスの好調、開発の効率化や生産性の向上も寄与して中期的に収益拡大が期待される。

 なお2月23日に株主優待制度の新設を発表した。毎年3月31日現在で1単元(100株)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。15年3月期末から実施する。

 株価の動きを見ると、第3四半期累計業績の低進捗率が嫌気されて2月2日に951円まで急落したが、その後は1100円近辺に戻している。目先的な売りが一巡して株主優待制度の新設も好感する動きだろう。

 3月6日の終値1092円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の下限値の連結EPS75円07銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は1.4%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS437円29銭で算出)は2.5倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線と13週移動平均線を回復した。中期成長力を見直して15年1月の1260円、そして14年11月の1360円を目指す展開だろう。

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