【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ユーグレナは13年6月以来の高値圏で堅調、中期的視点の評価を高めて水準切り上げ

銘柄分析

 ユーグレナ<2931>(東1)は24日、ユーキおよびアート・コーポレーションを完全子会社化すると発表した。株価は米シェブロン社からの技術供与を好感して急伸し、13年6月以来の高値圏で堅調に推移している。単なる食品関連企業ではなく、次世代型バイオ燃料に対する中期的視点の評価を高めて水準切り上げの展開だろう。

 05年に世界で初めて微細藻類ミドリムシ(学名ユーグレナ、虫ではなく藻の一種)の食品用途屋外大量培養技術を確立した東京大学発ベンチャーで、世界で唯一ミドリムシを数十トン規模で商業屋外大量培養している。ミドリムシは植物と動物の両方の性質を併せ持ち、59種類の豊富な栄養素をバランスよく含んでいることが特徴だ。

 ミドリムシを配合した機能性食品・化粧品などを製造販売およびOEM供給するヘルスケア事業で安定的なキャッシュフローを獲得しながら、微細藻類由来の次世代型バイオ燃料(ジェット燃料、ディーゼル燃料)や水質浄化などの開発・事業化を進める「バイオマスの5F」を基本戦略としている。

 ミドリムシ配合の機能性食品が人気化するとともに、食糧資源関連や次世代型バイオ燃料関連として注目度を高めている。各分野で日本を代表する大手企業との資本・業務提携、共同開発、コラボレーションが相次いでいることも注目点だ。

 中期経営計画では18年9月期のヘルスケア事業売上高150億円を目標として、自社ECサイト「ユーグレナ・ファーム」での直販を強化し、イトーヨーカ堂との「ミドリムシカラダに委員会」などミドリムシ配合の商品開発で大手流通チェーン・食品メーカーとのコラボレーションも活発化している。また14年10月には武田薬品工業<4502>と包括提携した。武田薬品工業が健康補助食品「タケダのユーグレナ 緑の習慣」を発売し、ミドリムシ特有成分「パラミロン」の注目度も高めた。

 そして3月24日、ユーキ(新潟市)およびアート・コーポレーション(福岡市)を、株式交換(効力発生日5月1日予定)で完全子会社化すると発表した。両社は「ミドリムシのちから」ブランドでのユーグレナ機能性食品・化粧品の卸売事業などを展開し、全国1万3000店舗以上の販売店網を形成する大口OEM取引先である。完全子会社化することで販売網および販売ノウハウを取り込む戦略だ。

 次世代型バイオ燃料では、JX日鉱日石エネルギー(JXホールディングス<5020>)および日立製作所<6501>と次世代型バイオジェット燃料の共同開発を推進し、14年6月にはいすゞ自動車<7202>と次世代型バイオディーゼル燃料の実用化を目指す「DeuSEL(デューゼル)プロジェクト」をスタートさせた。いずれも18年の低コスト生産技術確立と20年の事業化を目指している。水質浄化技術では清水建設<1803>、佐賀市、火力発電所のCO2固定化技術では住友共同火力との共同開発も進めている。

 そして15年2月にはバイオ燃料精製実証設備の建設に向けて、米CLG社(石油メジャーの米シェブロン社とエンジニアリング大手の米CB&I社の合弁会社)と、バイオ燃料アイソコンバージョンプロセス技術を採用することに関する基本合意書を締結した。15年3月中を目途にライセンス契約等を締結して、その後バイオ燃料精製実証設備の設計・建設を開始する。

 海外では、ミドリムシの栄養素を活用して世界の貧困問題を解決することを目指し、14年4月からバングラデシュで子供たちにミドリムシ入りクッキーを無償配布する「ユーグレナGENKIプログラム」を開始している。また中国では食品登録許可「新食品原料」を取得、東南アジアのイスラム圏では「ハラール認証」を取得して本格的な事業展開の準備を進めている。

 15年1月には台湾系の食品原料販売会社である統園企業股份有限公司の子会社統園国際有限公司と合弁で、中国に上海優端納生物科技有限公司(仮称)を設立(15年4月予定、当社出資比率70%)すると発表した。中国において微細藻類ユーグレナを使用した自社製品販売やOEM販売を展開する。

 今期(15年9月期)の連結業績見通し(11月13日公表)は売上高が前期比55.0%増の47億22百万円、営業利益が同45.3%減の77百万円、経常利益が同34.0%増の2億56百万円、純利益が同48.8%増の1億75百万円としている。

 中期成長に向けた先行投資で広告宣伝費や研究開発費が増加するため営業減益だが、売上面では収益性の高い自社ECサイト「ユーグレナ・ファーム」における食品直販が増加基調であり、OEMやコラボレーションの拡大も寄与して大幅増収見通しだ。経常利益と純利益は助成金収入の増加が寄与する。

 第1四半期(10月~12月)は前年同期比65.8%増収、同44.6%営業増益、同5.2倍経常増益、同8.0倍最終増益だった。積極的な広告宣伝効果も寄与してヘルスケア事業が順調に拡大している。

 通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が24.6%、営業利益が76.6%、経常利益が31.3%、純利益が30.3%である。通期増額の可能性もありそうだ。

 株価の動き(14年12月3日付で東証1部に変更)を見ると、米シェブロンからの技術供与を好感して2月23日の2177円まで急伸した。13年6月以来の高値水準だ。その後も高値圏1900円~2000円近辺で堅調に推移している。

 3月24日の終値は1948円だった。週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって水準を切り上げている。強基調の形であり、目先的な過熱感が解消して再動意のタイミングのようだ。単なる食品関連企業ではなく、次世代型燃料に対する中期的視点の評価を高めて水準切り上げの展開だろう。

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