【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アールテック・ウエノ売り一巡して切り返し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 創薬ベンチャーのアールテック・ウエノ<4573>(JQS)の株価は、ウノプロストン点眼液の第3相臨床試験で有意差が得られなかったことから急落した。しかし当面の業績は好調だ。売りがほぼ一巡して切り返し展開だろう。

 緑内障・高眼圧症治療レスキュラ点眼薬の製造販売、および米スキャンポ社の便秘症治療薬AMITIZA(アミティーザ)カプセル受託製造を主力としている。

 当社はAMITIZAカプセルの全世界における独占的製造供給権を保有している。米スキャンポ社はAMITIZAカプセルの日本と欧州での販売承認取得や米国での追加新薬承認取得、さらにレスキュラ点眼薬の米国上市など販売地域や適応の拡大戦略を推進している。また米スキャンポ社は武田薬品工業<4502>とAMITIZAカプセルに関するグローバルライセンス契約を締結(14年10月)している。

 中期経営目標値としては16年3月期のROE10%以上を目指し、新薬開発は網膜色素変性、重症ドライアイ、アトピー性皮膚炎関連を中心に進めている。

 日本発・世界初の網膜色素変性治療薬を目指すウノプロストン(開発コードUF-021)点眼液については、14年8月にウノプロストン点眼液へのトロメタモール配合に関する日本特許が成立し、11月にはウノプロストンが厚生労働省から網膜色素変性を対象とするオーファンドラッグに指定された。海外におけるウノプロストンの開発・商業化権については米スキャンポ社にライセンスし、当社はウノプロストン製品の独占的製造供給権を保有している。

 なお3月9日に、ウノプロストン点眼液の第3相臨床試験の終了と解析結果の速報を発表した。主要評価項目において統計学的な有意差を得ることができなかったため、さまざまな角度からデータを整理し、承認申請の可能性を鋭意検討しているとした。

 日本発・世界初の生物製剤による重症ドライアイ治療薬を目指す遺伝子組み換え人血清アルブミン(RU-101)点眼液については14年11月、米国での第1相および第2相を合わせた臨床試験を完了した。

 抗炎症作用や免疫調節作用を有するVAP-1阻害剤である新規化合物RTU-1096については、経口内服薬として14年10月に第1相臨床試験を開始した。候補疾患としてはアトピー性皮膚炎などの皮膚化疾患がある。皮膚疾患領域では男性型脱毛症関連(RK-023)が第2相臨床試験を開始している。

 なお米国で係属していたAMITIZAカプセルの特許侵害訴訟に関して、米スキャンポ社、当社、武田薬品工業は14年10月、Par社との和解・ライセンス契約を締結した。また14年11月には米スキャンポ社、当社、武田薬品工業が、米国食品医薬品局(FDA)にAMITIZAカプセル後発品申請を行ったDr.Reddys社に対して特許侵害訴訟を提起した。

 今期(15年3月期)の業績(非連結)見通し(2月12日に増額修正)は売上高が前期比18.2%増の66億39百万円、営業利益が同48.6%増の21億09百万円、経常利益が同53.1%増の22億61百万円、純利益が同53.2%増の16億27百万円、配当予想(2月12日に増額修正)が前期比5円増配の年間30円(期末一括)としている。

 第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比1.4%増収、同20.3%営業減益、同12.5%経常減益、同7.3%最終減益だった。臨床試験に伴う研究開発費の増加で減益だったが、売上面ではAMITIZAカプセルが好調だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)11億46百万円、第2四半期(7月~9月)15億82百万円、第3四半期(10月~12月)15億44百万円で、営業利益は第1四半期1億38百万円、第2四半期2億73百万円、第3四半期4億51百万円である。営業損益は改善基調だ。

 通期ベースでは、レスキュラ点眼薬が日本で薬価改定の影響を受けるが、AMITIZAカプセルの日本での出荷数量が想定を大幅に上回り、米国向けAMITIZAカプセルは為替のドル高・円安進行がプラス要因となる。

 修正後の製品別売上高の計画はレスキュラ点眼薬が同13.5%減の12億83百万円、AMITIZAカプセルが同31.8%増の52億66百万円である。想定為替レートは1ドル=115円で、1円の変動で営業利益は約6百万円変動するとしている。来期(16年3月期)についても、AMITIZAカプセルの好調や、為替のドル高・円安進行などで収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、ウノプロストン点眼液の第3相臨床試験で有意差が得られなかったことから、昨年来高値圏から3月17日の1314円まで急落した。ただしその後は下げ渋り感を強めている。売りがほぼ一巡したようだ。

 3月26日の終値1353円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS84円34銭で算出)は16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は2.2%近辺、実績PBR(前期実績のBPS473円61銭で算出)は2.9倍近辺である。

 週足チャートで見ると、大陰線を引いて一気に52週移動平均線まで割り込んで調整局面だが、当面の業績は好調だ。売りがほぼ一巡して切り返し展開だろう。

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