メディカル・データ・ビジョンは売り一巡して反発の動き、18年12月期下方修正して減益予想だが19年12月期の収益拡大期待

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 メディカル・データ・ビジョン<3902>(東1)は、民間最大級の大規模診療データベースを活用して医療分野ビッグデータ関連ビジネスを展開している。18年12月期は下方修正して減益予想となったが、19年12月期の収益拡大を期待したい。株価は売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■医療分野のビッグデータ関連ビジネス

 医療分野のビッグデータ関連ビジネスとして、医療機関向けに医療情報システムを開発・販売するデータネットワークサービス、および製薬会社向けに各種データ分析ツール・サービスを販売するデータ利活用サービスを展開している。17年12月期の事業別売上構成比はデータネットワークサービスが49%、データ利活用サービスが51%だった。

 データネットワークサービスで医療機関向けに医療情報システムを販売するとともに、2次利用許諾を得た患者の医療・健康関連情報を集積する。そして集積した各種情報を分析し、データ利活用サービスとして主に製薬会社向けに提供するビジネスモデルだ。収益は医療機関からのシステム利用料・メンテナンス費用、製薬会社からのサービス対価(システム利用料含む)である。またデータ利活用サービスにおいて下期偏重の特性がある。

 17年1月医師向けサービスのDoctorbookを子会社化、17年2月OTC医薬品・H&BC製品製造販売のMDVコンシューマ・ヘルスケアを設立、17年6月SMO業務のコスメックス(現MDVトライアル)を子会社化、17年11月テクマトリックス<3762>と業務提携、18年1月国内最大級の人間ドック・健診予約ポータルサイト「MRSO」を運営するマーソ社と資本業務提携した。

■CADA-BOXの導入推進

 データネットワークサービスは営業の主軸をDPC分析のEVEから、病院向け経営支援のMedical Codeにシフトするとともに、病院向けデジタルソリューションのCADA-BOXの導入を推進している。患者自身が診療情報の一部を保管・閲覧できるWEBサービスのカルテコと、患者が自由に支払条件を設定できる医療費後払いサービスのCADA決済を、電子カルテと連動させて活用するサービスである。データ利活用サービスはオーダーメード調査・分析サービスのアドホックを主力としている。

 18年12月期第3四半期末時点の導入数は、EVEが802病院、Medical Codeが273病院、CADA-BOXが7病院(稼働5病院、稼働準備中2病院)となった。

 また18年10月末の大規模診療データベース実患者数は17年12月末比383万人増加の2500万人となった。民間最大級の大規模診療データベースを活用してOTC医薬品・H&BC製品の製造販売、SMO事業などの新規分野への事業展開も推進している。

■成長の第4フェーズで投資回収期

 中期成長戦略で、17年12月期~19年12月期を成長の第4フェーズとして投資回収期に位置付けている。患者のリアルタイムデータ、地域医療の診療データ・画像データなども統合してデータ利活用ビジネスの急拡大を図り、売上高の増加とともに投資回収を開始する方針だ。

 重点取り組みとして、2次医療圏344病院へのCADA-BOX導入、データ基盤のさらなる拡大、データ利活用ビジネスの拡大、M&Aを含めた他社との協業を推進する。データ利活用の新領域では治験分野を推進する。

■未病領域データ事業を開始

 18年9月には未病領域データ事業を発表した。従来のDPCデータから、次のフェーズであるオプトインリアルタイムデータ(個人から同意を得てリアルタイムに集積する診療情報、健診・検診情報)に軸足を移行しながら、DPCデータとオプトインリアルタイムデータを相互に集積した「さくらデータバンク」として成長を推進する。

 そして2025年に8259億円と予想される医療ビッグデータ市場において、先行してシェア獲得を目指す。また医療分野におけるIoT・AI活用事業を推進するための布石とも位置付けている。

 未病領域データ事業は乳がん領域の健診・検診データ集積からスタートする。アジアNO.1の女性医療を目指す相良病院と提携し、健診施設や検診バスで受診する際に個人から二次利用の同意を得て健診・検診データを集積する。なお健診・検診データ利活用は、第1弾として子会社Doctorbookの「SCAPO」から開始する。また子会社MDVチェックアップが健診・検診センター向け「けんしんBOX」導入を促進する。

■18年12月期下方修正して減益予想、19年12月期の収益拡大期待

 18年12月期連結業績予想は11月12日に下方修正して、売上高が17年12月期比8.5%増の35億円、営業利益が63.5%減の2億08百万円、経常利益が63.2%減の2億08百万円、純利益が%増の0百万円(17年12月期は3億54百万円)としている。

 データ利活用サービスが順調に伸長するが、子会社のMDVコンシューマ・ヘルスケアおよびMDVトライアルの事業進捗遅れ、CADA-BOXの新規受注遅れ(新規受注目標24病院に対して第3四半期時点での新規受注2病院)、および病院向けパッケージ商品の受注遅れ(営業人員の戦力化遅れ)で売上高が計画を下回り、コスト増加を吸収できず大幅減益予想となった。MDVトライアルの治験事業の本格的な事業開始は19年12月期となる見込みだ。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比14.0%増の24億03百万円、営業利益が18百万円の赤字(前年同期は1億71百万円の黒字)、経常利益が18百万円の赤字(同1億68百万円の黒字)、純利益が1億42百万円の赤字(同75百万円の黒字)だった。

 売上高は、データ利活用サービスがアドホックを成長ドライバーとして27.7%増の12億77百万円と大幅伸長したが、データネットワークサービスが1.6%増の11億26百万円と伸び悩んだ。営業利益はコスト増加を吸収できず大幅減益だった。なお子会社MDVコンシューマ・ヘルスケアの高保湿プレミアムスキンケアシリーズ「KISOU」の大幅な販売計画遅れにより、売上原価に商品評価損1億33百万円を計上した。

 18年12月期は減益予想となったが、19年12月期の収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年12月末の株主対象

 株主優待制度は毎年12月31日現在の100株(1単元)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。配当は患者のリアルタイムデータ集積によるデータ利活用サービスの拡大に目途がついた段階で検討していく方針だ。

■株価は売り一巡して反発の動き

 株価は下方修正を嫌気して1700円台から11月15日の年初来安値891円まで急落したが、その後は売りが一巡して反発の動きを強めている。11月21日には1230円まで急伸する場面があった。11月21日の終値は1110円、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS79円08銭で算出)は約14倍、時価総額は約444億円である。出直りを期待したい。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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