【編集長の視点】日立マクセルは中間配当実施に車載用光学部品の生産能力増強が続き急反発

編集長の視点

日立マクセル<6810>(東1)は、47円高の1874円と3営業日ぶりに急反発して始まり、今年3月18日につけた上場来高値1980円を視界に捉えている。同社株は、今年10月22日に希望退職者を募集する事業構造改革を発表し、株価は、窓を開けて上場来安値1540円まで急落したが、未定としていた第2四半期(2Q)配当を31.5円(前年同期は0円)として実施したことから下げ過ぎとして急速にリバウンド、さらに車載用光学部品の生産能力を増強するなど事業構造改革が着実に進んでいることを手掛かりに一段の戻りを試す買い物が再燃している。

■高成長分野の自動車向けに3年間で生産能力を約2倍へ増強

希望退職者の募集は、同社の民生用リチウム電池の受注が、主な需要先のハイエンドスマートフォン市場の低迷で減少し、今後も厳しい状況が続くと想定されることに対応し、今年11月末から来年1月15日までを募集期間に130名程度を予定、同事業の安定的な収益確保体制を早期構築するとともに、「自動車」、「住生活・インフラ」、「健康・理美容」の成長3分野を強化する事業構造改革を推進することを目的としている。

この事業改革に伴い、今3月期業績は、2Q累計業績、3月通期業績とも一部下方修正した。3月通期業績は、期初予想より売り上げを130億円、営業利益を34億円、経常利益を32億円それぞれ下方修正したが、純利益は、変更はなく67億5000万円(前期比9.2%減)と見込んでいる。自動車電装化向けの需要増加で、車載用のマイクロ電池や光学部材などの受注が期初計画を上回って推移、希望退職者募集による固定費削減などが要因となっているもので、とくに2Q累計業績は、売り上げ、営業利益は下方修正したものの、経常利益は上方修正し、純利益も、5000万円の小幅下方修正にとどめ、しかも、実際の2Q累計純利益は、この下方修正値を300万円上ぶれ17億5800万円(前年同期比10.9%減)で着地した。

配当は、期初に未定としていたが2Q累計純利益が、ほぼ期初予想通りとなったことから31.5円として実施し、期末配当はなお未定(前期年間配当63円)としている。

また、車載用光学部品の生産能力増強は、成長3分野の自動車分野で光学部品が、自動車の電装化、完全走行などで需要拡大が見込めることから今後3年間で生産能力を約2倍に増強、その第1弾としてマレーシアの製造拠点に約8億円を投資し建屋を新設し、精密成形機などを導入する。

■中間配当換算でも好利回りでPBRも1倍割れと下げ過ぎを示唆

株価は、今年3月18日に4年ぶりに公開価格2070円で再上場され、公開価格を下回る1971円で初値をつけ1980円と引き戻したが、希望退職者募集で最安値まで突っ込んだ。ただ中間配当実施でこの利回りだけで2.0%、さらにPBRは0.7倍となり、下げ過ぎとして最安値から急速に底上げした。足元でもPERは14倍台、PBRも0.8倍と市場平均を下回っており一段の戻りを試し高値奪回から公開価格上抜けに弾みをつけよう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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