TACは反発の動き、22年3月期大幅営業増益予想

 TAC<4319>(東1)は「資格の学校」を運営し、成長戦略として新事業領域への展開も強化している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響を受けたが、原価低減や販管費抑制の効果で大幅営業増益だった。そして22年3月期も大幅営業増益予想としている。コロナ収束後の事業環境変化を見据えて、オンライン講座の実施や新たなサービスの提供などに取り組んでいる。出版事業では高等学校商業科教科書を発刊して事業領域を拡大する。収益拡大を期待したい。株価は反発の動きを強めている。調整一巡感して出直りを期待したい。

■「資格の学校」を運営

 財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)、その他分野(情報・国際、医療・福祉など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営している。また法人研修事業、出版事業、人材事業も展開し、成長戦略として新事業領域への展開も強化している。

 21年3月期の構成比(調整前)は、売上高が個人教育事業57%、法人研修事業21%、出版事業20%、人材事業2%、営業利益が個人教育事業▲35%、法人研修事業62%、出版事業70%、人材事業2%だった。

 なお6月25日開催予定の第38回株主総会での承認を得て、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行予定である。コーポレートガバナンスの一層の充実を図る。

■教育事業は新たなサービスも展開

 21年3月期の教育事業受講者数は、20年3月期比0.7%増の20万8587人(個人が4.7%減の12万68人、法人が9.1%増の8万8519人)となった。

 教育事業の分野別売上高構成比は、財務・会計分野が20.2%、経営・税務分野が15.6%、金融・不動産分野が22.5%、法律分野が6.8%、公務員・労務分野が22.8%、情報・国際分野が7.2%、医療・福祉分野が1.3%、その他分野が3.6%だった。21年3月期は会計士が11.7%増、マンション管理士が13.4%増、建築士が25.4%増などとなり、財務・会計分野、金融・不動産分野の構成比が上昇した。

 新型コロナ収束後の事業環境変化を見据えて、オンライン講座の実施、カリキュラムの見直し、新たなサービスの提供などにも取り組んでいる。21年3月には「TACテストセンター」サービス開始を発表した。日本全国の主要都市に直営校舎を持つ強みを生かして、大人数の試験会場になり得る教室や、個人で受験できる個別ブースを試験用として貸し出すとともに、試験を実施するために必要となる総合的なサービスを提供する。

■出版事業も拡大

 出版事業はTAC出版と早稲田経営出版の合算売上高(20年実績でTAC出版が4億34百万円、早稲田経営出版が81百万円、合計が5億16百万円)で業界15位規模となった。

 さらなる事業拡大に向けて、既刊の「SPI3の教科書」に加えて、就活書「これさえあれば。」シリーズ全5点を刊行する。

 また検定教科書分野への事業領域拡大に向けて、高等学校商業科で使用する文部科学省検定済教科書(高校1年生で履修する簿記およびビジネス基礎)を発刊する。全国の高等学校での採択の後、22年4月から全国の商業学校で使用される。さらに高校2年生、3年生で使用する会計分野の強化についても、文部科学省への検定申請を行い、ラインナップ拡充を推進する方針だ。

■四半期業績に季節変動要因

 四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係などで季節変動の特徴がある。第2四半期(7~9月)と第3四半期(10~12月)の公認会計士・税理士講座は、翌年受験のための受講申込が集中する時期となるため、現金ベース売上高が突出して多くなるとともに、翌四半期に向かって前受け金として繰り越されることから、発生ベース売上高の増加が少なくなる傾向がある。

 また第4四半期(1~3月)から第1四半期(4~6月)にかけては、夏・秋の本試験時期に向けて全コースが出揃う時期にあたり、稼働率の上昇から前受金戻入額が増加することを通じて発生ベース売上高が増加する傾向にある。こうした売上の傾向に対して、売上原価や営業費用は毎月一定額計上されるため、四半期ごとの営業利益が変動しやすい。

■21年3月期大幅営業増益、22年3月期も大幅営業増益予想

 21年3月期連結業績は、売上高が20年3月期比2.9%減の197億49百万円、営業利益が2.5倍の4億04百万円、経常利益が2.5倍の6億46百万円、親会社株主帰属当期純利益が3.9倍の4億05百万円だった。配当は20年3月期と同額の5円(第2四半期末2円、期末3円)とした。

 資格試験延期や教室講義中止など新型コロナウイルスの影響を受けて従来予想を下回ったが、原価低減や販管費抑制の効果で大幅営業増益だった。なお営業外収益には助成金収入1億66百万円を計上した。

 個人教育事業(現金ベース4.3%減収)および法人研修事業(同7.0%減収)は、新型コロナウイルスの影響(大学の休校、各種資格・検定試験の延期・中止、教室講義の中止、研修の縮小や実施延期・中止)を受けた。出版事業は8.8%増収だった。巣ごもり消費を背景として子会社の早稲田経営出版が展開する「Wセミナー」が伸長した。人材事業は18.0%減収だった。新型コロナウイルスの影響で減収だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が51億05百万円で営業利益が5億12百万円、第2四半期は売上高が50億39百万円で営業利益が3億94百万円、第3四半期は売上高が45億49百万円で営業利益が3億65百万円の赤字、第4四半期は売上高50億55百万円で営業利益1億37百万円の赤字だった。講座申し込みは期前半に集中するが、営業費用は毎月一定額計上するため、利益は期前半に集中し、下期は赤字となる収益特性がある。

 22年3月期連結業績予想は、売上高が21年3月期比3.8%増の205億円、営業利益が48.3%増の6億円、経常利益が10.6%減の5億78百万円、親会社株西帰属当期純利益が6.3%減の3億80百万円としている。配当予想は1円増配の6円(第2四半期末3円、期末3円)である。

 新型コロナウイルスの影響で不透明感が強いが、資格試験・検定試験等の多くが予定通りに実施される見込みであり、増収・大幅営業増益予想としている。経常利益と当期純利益は雇用調整助成金等の収入を見込まず減益予想としている。

 新型コロナウイルス感染状況に応じた臨機応変な対応、新たな売上獲得および新たな事業領域への挑戦、オンライン受講増加に伴う教室床面積最適化と校舎賃借料の適切なコントロールなどを推進する。収益拡大を期待したい。

■株価は反発の動き

 株価は22年3月期増収・大幅営業増益予想を評価する形で反発の動きを強めている。調整一巡して出直りを期待したい。5月21日の終値は246円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS20円54銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の6円で算出)は約2.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS313円88銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約46億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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