【アナリスト水田雅展の銘柄分析】建設技術研究所は売り一巡感、今期業績増額の可能性を評価して反発期待

銘柄分析

 建設コンサルタント大手の建設技術研究所<9621>(東1)の株価は、今期(15年12月期)業績の伸び率鈍化が嫌気されて2月16日に1260円まで急落する場面がありましたが、その後は1300円台に戻して売り一巡感を強めています。今期業績見通し増額の可能性を評価して反発の展開が期待されます。

 総合建設コンサルタントの大手で河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持ち、中期経営計画では防災・減災計画関連、都市計画関連、環境関連などを重点分野と位置付けて、再生エネルギーを活用するスマートコミュニティ、民間資金を活用するPFI・PPP事業、そして鉄道や物流などの分野への取り組みも強化しています。

 13年9月には農業・農村関連ビジネスへの参入を視野に入れて子会社CTIフロンティアを立ち上げました。また14年4月には太陽光発電事業に着手しました。

 15年1月には山口県下関市内の小屋川ダム再開発の本体設計業務を受注したと発表しています。小屋川ダムは1955年竣工以来60年近い歳月が経過しており、全国的にも事例の少ない「ダム堤体嵩上げ」の設計業務です。

 また2月4日には、14年10月に鈴鹿サーキットで開催されたF1日本グランプリ関連で、開催中の鈴鹿市周辺の渋滞緩和を目的とした取り組みにおいて、スマートフォン用のアプリケーションソフト「AcPro(アクプロ)」を作成して取り組みを支援したと発表しています。事前登録したF1観戦者が、開催日の帰り道の走行状況(位置情報)をアプリケーションソフトで収集し、GoogleMap上に表示するシステムです。

 2月13日に発表した前期(14年12月期)の連結業績は、売上高が前々期比8.5%増の395億24百万円で、営業利益が同57.2%増の23億88百万円、経常利益が同54.1%増の25億25百万円、そして純利益が同51.7%増の14億90百万円の大幅増益となりました。配当予想は前々期と同額の年間18円(期末一括)としました。

 グループ受注高は同6.3%減の403億48百万円となり、売上高は計画をやや下回りましたが、豊富な受注残の消化に効率化推進による原価率改善効果も寄与して利益は7月14日の増額修正値を上回りました。

 今期(15年12月期)の連結業績見通し(2月13日公表)は売上高が前期比3.7%増の410億円、営業利益が同4.6%増の25億円、経常利益が同3.0%増の26億円、純利益が同4.0%増の15億50百万円、配当予想が前期と同額の年間18円(期末一括)としています。

 東日本大震災からの復興関連業務の施工段階への移行に加えて、財政再建のための発注減少も予想されるため、前期の大幅増益に比べてやや慎重な見通しとしているようです。受注高は同0.9%減の400億円の計画です。

 ただし防災・減災関連、老朽化インフラ補修・更新関連、都市再開発関連、20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設ビッグプロジェクトが目白押しであり、アベノミクス重点戦略「地方創生」も追い風となるでしょう。

 今期(15年12月期)の会社見通しは保守的な印象が強く、増額の可能性がありそうです。中期的にも良好な事業環境を背景として収益拡大基調が期待されます。

 株価の動きを見ると14年10月高値1942円から反落して調整局面となり、2月16日には1260円まで急落する場面がありました。今期業績の伸び率鈍化が嫌気されたようです。ただしその後は1300円台に戻して売り一巡感を強めています。

 2月23日の終値1343円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS109円61銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.3%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS1539円79銭で算出)は0.9倍近辺です。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線が抵抗線の形ですが、2月16日の急落局面で下ヒゲを付けて底打ち感を強めています。今期業績見通し増額の可能性を評価して反発の展開が期待されます。

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