【アナリスト水田雅展の銘柄分析】テクマトリックスは上場来高値更新の展開、16年3月期増収増益・増配予想でサイバー攻撃関連も注目点

銘柄分析

 テクマトリックス<3762>(東1)はシステム受託開発やセキュリティ関連製品販売などの情報サービス事業を展開している。株価は13年3月高値844円を突破して上場来高値更新の展開となり15日は1000円まで上伸した。目先的には過熱感もあるが、16年3月期増収増益・増配予想を評価して上値追いの展開だろう。サイバー攻撃関連やマイナンバー制度関連のテーマ性も注目点だ。

 ネットワーク・セキュリティ関連のハードウェアを販売する情報基盤事業、医療・CRM・EC・金融を重点分野としてシステム受託開発やクラウドサービスを提供するアプリケーション・サービス事業を展開している。

 重点戦略として、ストック型ビジネスの保守・運用・監視サービス関連の戦略的拡大、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、ネットワーク・セキュリティ関連商材およびサービスの充実、ビッグデータ分析支援サービス、大規模EC事業者向けバックオフィスシステム構築ソリューション「楽楽ECインテグレーションサービス」などを強化している。

 中期成長に向けてM&A・アライアンスを積極活用するとともに、グループ再編も推進している。14年2月に子会社の沖縄クロス・ヘッドが台湾のデータセンター事業者eASPNetと事業協力についての覚書を締結、14年3月にクロス・ヘッドを完全子会社化した。

 14年7月に日本事務器(NJC)と医療情報クラウドサービス「NOBORI」に関する販売代理店契約を締結、14年8月に沖縄クロス・ヘッドが日本HPと業務提携、14年10月にクロス・ヘッドが仮想化技術の米Pica8(ピカエイト)社に出資、ソフトバンクテレコムなどと3社共同でクラウド型医療情報サービス「地域健康・医療情報プラットフォームサービス(HeLIP)」の提供を開始した。

 14年12月にはクロス・ヘッドがエヌ・シー・エル・コミュニケーションの株式を追加取得して完全子会社化し、15年4月合併した。ネットワーク仮想化技術であるSDN市場の本格成長が期待されているため、合併によって技術力強化や業務効率化を推進する。

 15年3月には子会社カサレアルがJetBrains社(チェコ)とトレーニングパートナー契約を締結し、サムライズム(東京都)とJetBrains社製品を利用した研修に関する業務提携を開始した。またスリーゼットに対して医療情報クラウドサービス「NOBORI」を、クリニックを対象としてOEM提供する契約を締結した。

 15年5月には、医療サービス事業に特化したベンチャー企業である中国の北京ヘルスバンク・テクノロジー有限公司と、合弁会社(北京ヘルステック医療情報技術有限公司、当社出資比率40%)を設立(15年8月予定)すると発表した。当社子会社の合同会社医知悟が開発した遠隔医療ソフトウェアのライセンスを供与して、中国において遠隔医療事業を展開する。

 また5月26日には子会社カサレアルが、Apple Japan合同会社のApple Consultants Network(ACN)に参加したと発表している。カサレアルはApple関連技術の研修サービスを提供している。

 なお医療分野では、オンプレミス型(ユーザーがハードウェア、ソフトウェア、データを自分自身で保有・管理)システム提供から、クラウド型(ユーザーがインターネット経由で利用)サービス提供へビジネスモデル変更を推進しているため、14年3月期から医療情報クラウドサービスの売上と利益をサービス期間に応じて按分計上する方法に変更した。このため今後複数年に亘って売上と利益にマイナス影響となるが、他事業の成長でカバーする。

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)39億49百万円、第2四半期(7月~9月)46億55百万円、第3四半期(10月~12月)43億75百万円、第4四半期(1月~3月)54億38百万円、営業利益は第1四半期63百万円、第2四半期2億87百万円、第3四半期1億92百万円、第4四半期5億88百万円だった。第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造である。

 15年3月期の配当性向は31.1%、ROEは14年3月期比4.2ポイント低下して9.4%、自己資本比率は同1.5ポイント低下して45.3%だった。またストック型売上比率(単体ベース)は情報基盤事業で同3.5ポイント低下して40.2%、アプリケーション・サービス事業で3.0ポイント上昇して41.8%となった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比10.8%増の204億円、営業利益が同15.0%増の13億円、経常利益が同14.8%増の13億円、純利益が同43.7%増の8億40百万円としている。配当予想は同2円増配の年間17円(期末一括)で、予想配当性向は24.5%となる。

 ストック型ビジネスの戦略的拡大により、人件費増加などを吸収して2桁増収増益見通しだ。純利益は繰延税金資産追加計上の一巡、本社移転に伴う原状回復費用の特別損失計上の一巡も寄与する。

 セグメント別の計画は、情報基盤事業の売上高が同14.6%増の138億円、営業利益が同8.9%増の11億20百万円、アプリケーション・サービス事業の売上高が同3.6%増の66億円、営業利益が同78.2%増の1億80百万円としている。

 情報基盤事業では、サイバー攻撃に対応した次世代ネットワーク・セキュリティ関連商材・サービスが好調で、セキュリティ運用・監視サービス契約数も順調に増加する。またアプリケーション・サービス事業ではCRM分野、医療分野、インターネットサービス分野におけるクラウドサービスが好調に推移する。医療分野では医療情報クラウドサービス「NOBORI」の引き合いが好調だ。

 中期経営計画「TMX3.0」では、経営目標数値として18年3月期の売上高251億円(情報基盤事業170億円、アプリケーション・サービス事業81億円)、営業利益23億50百万円(情報基盤事業16億円、アプリケーション・サービス事業7億50百万円)を掲げた。

 中期的には年率売上高成長率10%で、M&Aや海外展開を含めて事業規模250億円~300億円、ストック売上(クラウド、保守、運用・監視サービス)比率50%超を目指し、売上高営業利益率10%へ挑戦する。

 従来のIT産業の労働集約的な請負型ビジネスから脱却し、自らITサービスを創造し、ITサービスを提供する「次世代のITサービスクリエーター」そして「次世代のITサービスプラバイダー」への変貌を継続する。重点事業戦略は、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、セキュリティ&セイフティの追求で、コストダウンによる高収益化やパートナーとのアライアンス強化も推進する。

 なお株主還元については連結配当性向20%以上を基本方針として、利益水準を踏まえた配当額の引き上げを重視し、株主優待制度の充実も推進する。

 6月9日には15年9月30日現在500株以上保有株主を対象とした株主優待制度の内容を発表した。500株以上保有株主に対しては1000円相当の商品5点の中から1点、1000株以上保有株主に対しては3000円相当の商品5点の中から1点を選択する。寄付を選択することもできる。

 株価の動きを見ると、600円~700円近辺でのボックス展開から上放れの形となり、13年3月高値844円を一気に突破して上場来高値更新(株式分割遡及修正後)の展開だ。6月15日は1000円まで上伸した。16年3月期2桁増収増益・増配予想に加えて、サイバー攻撃関連やマイナンバー制度関連も材料視されたようだ。

 6月15日の終値988円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS69円33銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS530円20銭で算出)は1.9倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するプラス乖離率が20%程度に拡大して目先的には過熱感もあるが、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。指標面に割高感はなく需給面の不安も小さい。16年3月期増収増益・増配予想を評価して上値追いの展開だろう。サイバー攻撃関連やマイナンバー制度関連のテーマ性も注目点だ。

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