カナモトは調整一巡、21年10月期増収増益予想

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 カナモト<9678>(東1)は建設機械レンタルの大手である。中期成長に向けて国内営業基盤拡充、海外展開、内部オペレーション最適化、レンタルビジネス収益性向上を推進している。21年10月期は公共投資が堅調に推移して増収増益予想としている。収益拡大を期待したい。なお7月7日にはESG経営に基づくガバナンス強化に向けて、TCFDコンソーシアムに参画したと発表している。株価は上値を切り下げる形でやや軟調だったが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。

■建設機械レンタル大手

 建設機械レンタルの大手である。建設機械レンタルを主力として、海外向け中古建設機械販売、土木・建築工事用鉄鋼製品販売、IT機器・イベント関連レンタル、福祉用具レンタルなども展開している。M&Aも活用し、北海道を地盤として全国展開と業容拡大を加速している。

 21年6月にふたば営業所(福島県)を開設し、営業拠点数は211拠点、グループ合計538拠点となった。

 20年10月期の売上高構成比は建設関連事業89.8%、その他事業(鉄鋼関連事業、情報通信関連事業、福祉関連事業など)10.2%、営業利益構成比(連結調整前)は建設関連事業93.0%、その他事業7.0%だった。

 収益面では建設工事の影響を受けやすく、売上高が第4四半期(8~10月)から第1四半期(11月~1月)にかけてピークとなり、第2四半期(2~4月)および第3四半期(5~7月)は減少する季節特性がある。

■中期経営計画で24年10月期営業利益230億円目標

 中期経営計画「Creative 60」では、目標値として24年10月期売上高2280億円、営業利益230億円、営業利益率10.1%などを掲げている。

 重点施策として、グループ総力を結集した国内営業基盤の拡充(既存エリアの深掘り、未進出エリア・低シェア領域の開拓、非建設分野への進出)、海外戦略2.0(Next Generation)へのバージョンアップ(グローバルポートフォリオの最適化、カナモト版グローバルプラットフォームの確立、海外M&Aの取り組み、海外売上比率10%への布石)、内部オペレーション最適化とレンタルビジネスの収益性向上(営業戦略とITの融合、工事現場に必要な技術・システムの開発、業務効率向上、原価コントロール、長期的な安定稼働など)を推進している。

 20年9月には豪州の企業グループPPGの全株式を取得する株式譲渡契約書締結を発表した。株式譲渡実行日は20年9月30日以降、関係当局の承認取得を前提に設定するとしている。また20年9月にはソーキホールディングス(大阪市中央区)の全株式を取得し、ソーキホールディングス、測量機・計測機器のレンタルや自動計測システムの開発・レンタルなどを展開するソーキ、およびソーキ販売を子会社化した。

 21年4月には子会社アシストが、19年12月に子会社化した什器備品・ウォーターサーバーレンタルのコムサプライを吸収合併した。21年5月にはシステムソリューション商社の岩崎(札幌市)と業務提携した。

 7月7日にはESG経営に基づくガバナンス強化に向けて、金融安定理事会(FSB)によって設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに参画したと発表している。

■21年10月期増収増益予想で2Q累計の進捗率順調

 21年10月期連結業績予想は、売上高が20年10月期比6.3%増の1903億円、営業利益が5.3%増の150億円、経常利益が6.5%増の152億円、親会社株主帰属当期純利益が6.3%増の90億円としている。配当予想は5円増配の70円(第2四半期末25円、期末45円)である。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比4.2%増の952億25百万円、営業利益が12.1%減の81億18百万円、経常利益が4.0%減の86億83百万円、親会社株主帰属四半期純利益が7.5%減の49億43百万円だった。
 
 公共投資が堅調に推移して増収だが、人財投資やレンタル資産運用期間延長に向けた中古建機販売抑制などで減益だった。ただし概ね計画(売上高959億円、営業利益81億円、経常利益82億円、親会社株主帰属四半期純利益47億円)水準で着地した。建設関連は4.3%増収(うち中古建機販売は27.9%減収)で14.6%減益、その他は3.3%増収で27.1%増益だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高476億60百万円で営業利益39億81百万円、第2四半期は売上高475億65百万円で営業利益41億37百万円だった。

 通期は公共投資が堅調に推移して増収増益予想としている。中期的需要見通しに対する資産の最適保有と機種構成を確保し、変化に対応したイノベーション、業務効率化や生産性向上などで収益力強化を図るとしている。

 第2四半期累計の進捗率は、売上高が50.0%、営業利益が54.1%、経常利益が57.1%、当期純利益が54.9%と順調だった。災害復旧・防災・インフラなど国土強靭化関連工事で公共投資が堅調であり、通期ベースで収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は上値を切り下げる形でやや軟調だったが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。7月15日の終値は2585円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS238円08銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の70円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3150円30銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約1001億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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