バルクホールディングスは22年3月期黒字転換、23年3月期大幅増収増益予想で収益拡大基調

 バルクホールディングス<2467>(名証ネクスト)はセキュリティ事業およびマーケティング事業を展開し、サイバーセキュリティトレーニングのサイバーセキュリティ分野を強化している。22年3月期は大幅増収で黒字転換した。セキュリティ事業、マーケティング事業とも伸長した。23年3月期はサイバーセキュリティ分野が順調に拡大して大幅増収増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初来高値圏から急反落の形となったが、売り一巡感を強めている。収益改善基調を評価して出直りを期待したい。

■セキュリティ事業とマーケティング事業を展開

 セキュリティ事業およびマーケティング事業を展開する純粋持株会社である。新規事業としてサイバーセキュリティトレーニングのサイバーセキュリティ分野を強化している。なお、東京都内に点在するグループ拠点を21年12月に移転・統合した。

 セキュリティ事業は、情報セキュリティ規格コンサルティング(プライバシーマーク認定取得支援、ISO27001(ISMS)認証取得支援、および運用支援)分野、および新規事業のサイバーセキュリティ分野を展開している。

 マーケティング事業は、マーケティングリサーチ(大手メーカーの新製品開発時モニター調査)分野、およびセールスプロモーション(スーパーなど食品流通事業者のフリーペーパー、食品・飲料メーカーのSPツール・ノベルティの制作)分野を展開している。またアトラス・コンサルティングを持分法適用関連会社としている。

 22年3月期セグメント別構成比は、売上高(セグメント間取引調整前)がセキュリティ事業51%、マーケティング事業49%、利益(全社費用等調整前営業利益)がセキュリティ事業53%、マーケティング事業47%だった。なお収益は第4四半期に偏重する傾向がある。

■サイバーセキュリティ分野を強化

 サイバーセキュリティ分野は18年1月にイスラエルのサイバージム社と共同で米国SCH社を設立して参入した。日本と米国において、サイバージムが開発した実践型サイバーセキュリティトレーニングアリーナを運営し、電力や金融など重要インフラストラクチャーセクターの民間企業・政府機関等に対して、サイバーセキュリティトレーニング等のサービスやソリューションを提供している

 18年7月米国ニューヨークにコマーシャルアリーナ(フルパッケージサービスを提供する大型トレーニング施設)のCyberGym NYCを開設、18年8月ハイブリッドアリーナ(小型トレーニング施設)のCyberGym Tokyoを開設、18年8月サイバージム社に出資、18年9月サイバーセキュリティコンサルティングの子会社CELを設立した。

 なおサイバージム社との共同事業の枠組みを見直して、21年3月に米国SCH社が米国でのセキュリティトレーニング事業展開のために保有するライセンス・設備(NYコマーシャルアリーナ)一式をサイバージム社に譲渡した。これによって米国SCH社の固定費が大幅に削減された。今後のグローバル戦略として、日本国内および近隣のアジア地域では当社グループ、米国ではサイバージム社が主導して展開する。

 国内のサイバーアリーナの展開は、19年8月CYBERGYM新宿アリーナ(運営主体はインターネット総合研究所)を開設、20年11月CYBERGYM八重洲アリーナ(クロスポイントソリューションとの合弁会社クロスポイントセキュリティジムが運営、持分法適用関連会社)を開設した。

 21年6月にはATマーケティングとサイバーアリーナにかかる提供・運用サポート・ライセンス契約を締結し、21年7月にCYBERGYM名古屋を開設した。なおCYBERGYM大阪については運営主体を変更し、DXHR社が主体となって運営会社サイバーコマンドを設立して21年7月に開設した。

 21年10月には子会社のサイバージムジャパン(CGJ)がアクトと協業し、札幌市内および福岡市内にサイバーセキュリティ教育施設を開設(22年3月予定)することについて基本合意した。そして21年12月には両サイバーアリーナ(CYBERGYM札幌、CYBERGYM福岡)の開設予定地が決定した。

■22年3月期黒字転換、23年3月期大幅増収増益予想で収益拡大基調

 22年3月期の連結業績(収益認識会計基準適用だが損益への影響なし)は、売上高が21年3月期比31.5%増の19億31百万円、営業利益が70百万円の黒字(21年3月期は3億04百万円の赤字)、経常利益が50百万円の黒字(同3億25百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が38百万円の黒字(同4億34百万円の赤字)だった。

 売上面では一部事業でコロナ禍の影響を受け、コスト面ではグループ拠点の移転・統合に伴う一時費用(33百万円)を計上したが、セキュリティ事業、マーケティング事業とも伸長し、増収効果、グループ拠点の移転・統合による効率化・シナジー効果、固定費削減効果などで吸収して各利益とも黒字転換した。特別損失では前期計上した投資有価証券評価損1億45百万円が剥落した。なお自己資本比率は35.3%となり、21年3月期末に比べて15.3ポイント上昇した。財務面の改善も進展した。

 セキュリティ事業は売上高が63.5%増の9億92百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が1億66百万円の黒字(21年3月期は1億03百万円の赤字)だった。増収効果や米国SCH社の固定費削減などで黒字化した。セキュリティトレーニング部門は、CYBERGYMアリーナ販売の増加に伴って、ストック型の保守売上・サブスクリプション売上も増加した。セキュリティソリューション・コンサルティング部門は、AI脆弱性診断などの売上が増加し、情報セキュリティ規格コンサルティングも堅調だった。

 マーケティング事業は売上高が9.5%増の9億60百万円、利益が2.6倍の1億49百万円だった。マーケティングリサーチ部門では、リサーチ業務の主要顧客からの複数案件化に加えて、非対面リサーチが成長した。セールスプロモーション部門では主要顧客の大手スーパーや大手食品メーカーからの受注が堅調に推移した。さらにデジタルマーケティング関連の売上が拡大するなど、新規事業への足掛かりを構築した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が4億27百万円で営業利益が27百万円の黒字、第2四半期は売上高が3億97百万円で営業利益が38百万円の赤字、第3四半期は売上高が4億47百万円で営業利益が1百万円の黒字、第4四半期は売上高が6億60百万円で営業利益が80百万円の黒字だった。

 23年3月期の連結業績予想は売上高が22年3月期比24.2%増の24億円、営業利益が14.2%増の80百万円、経常利益が29.9%増の65百万円、親会社株主帰属当期純利益が11.6%増の43百万円の黒字としている。

 セキュリティ事業はセキュリティトレーニング、脆弱性診断等ソリューション・コンサルティングサービスを中心に、引き続き好調な推移を見込む。マーケティング事業も既存事業を中心に、引き続き好調な推移を見込む。なお海外については、多額の先行投資や固定費の計上を回避しつつ、アジアを中心に高い経済成長の取り込みを目指す方針としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は売り一巡

 株価は年初来高値圏から急反落の形となったが、売り一巡感を強めている。収益拡大基調を評価して出直りを期待したい。5月27日の終値は267円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS3円23銭で算出)は約83倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS30円34銭で算出)は約8.8倍、時価総額は約32億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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