【小倉正男の経済コラム】中国経済 いまだ回復の兆しはない

■中国経済に上向きの兆しがない

 中国が「ゼロコロナ」政策を転換したのは、昨2022年12月7日のことである。「ゼロコロナ」転換が行われた当初は、それを裏付けるものは「オミクロンの病原性低下」(孫春蘭副首相)という発言のみだった。

 孫副首相は、衛生部門との座談会でゼロコロナ緩和を語ったというのだが、何とも曖昧に政策変更を後付けで認めたというようにしかみえない。

 「ゼロコロナ」が解除されれば、中国経済は自律的に回復するとみられていた。しかし、「ゼロコロナ」の転換から4カ月を過ぎたが、中国経済はまったく上向きの兆しがない。

■生産者物価は6カ月連続でマイナス

 中国の2023年3月の生産者物価(PPI)は前年比マイナス2.5%。2月はマイナス1.4%だったが、マイナス幅はさらに大幅なものになっている。中国の生産者物価は「ゼロコロナ」が実施されていた22年10月からマイナスに転落しており、6カ月連続の下落が続いている。しかも3月のマイナス2.5%は最大の下落幅にほかならない。

 生産者物価の下落は、端的に中国の経済・生産活動の低迷を示している。習近平国家主席の肝いりである「ゼロコロナ」政策は転換されたが、低迷は止まっていない。むしろ低迷は常態となり長期化している。底入れするという支援材料も見当たらない。

 習近平主席は、IT関連の有力プラットフォーム企業、例えば典型的にはアリババなどに対して権力乱用に近い制裁、規制などを行ってきた経過がある。「大国を治むるは小鮮を煮るがごとくす」(老子)という言葉がある。小魚を煮るように鍋に手を突っ込んだり箸でつついたりしては、小魚がグチャグチャに崩れる。権力を戒める老子の教えだが、それを行える権力者はほとんどいない。

 「ゼロコロナ」の実施、その対極である転換も同じことだが、一夜にして突然変わる。経済低迷の長期化から、民間資本に対する制裁、規制は行わないと手のひら返しの政策変更も一部表明されている。しかし、民間資本としては危なくてそれにおいそれとは乗れない。

■不動産バブル崩壊も根底でくすぶる

 不動産不況、あるいは“不動産バブル崩壊”といえる現象も経済の根底でくすぶっている。
不動産市場の低迷はすでに2年を超えている。建設工事は停止され、新築住宅価格も下げ止まったとはいえない。

 習近平主席は「住宅は生活のためのもので投機対象ではない」というのが基本的な立ち位置である。「共同富裕」が習近平主席の眼目であり、むしろ融資規制で不動産業界のバブル退治を進めてきている。ただ、下手にバブル崩壊を促進すれば不良債権問題など金融危機を招きかねない。

 不動産業界は小魚か大魚か分からないが、下手に手を突っ込めば危機的な事態を招くことになる。いまになって住宅ローンなど金融面での支援策を打ち出すなど手のひらを一部返している。だが、魚はすでに身がバラバラ、あるいはグチャグチャに崩れている。

 ちなみに3月の消費者物価(CPI)は前年比0.7%。2月は1.0%であり、低迷がさらに鮮明化している。消費に力強さが戻らず、価格が上昇しない。中国はこれを「ディスインフレ」としているが、デフレと呼ぶほうが自然といえる。

 習近平主席としたら、足が痛くなって痛風かということで、鎮痛薬を打ったり食べ物を変えたりした。だが、病状回復はどうにもはかばかしくない。もしかしたら痛風などという表層的な病ではないかもしれない。現状はそうしたところではないか。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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