【鈴木雅光の投信Now】年々高まる販売手数料の平均値~金融モニタリングレポートから

先月発表された「金融モニタリングレポート2015」の中に、投資信託の販売姿勢に関するくだりがあります。ここで紹介されているのが「日本の販売手数料率推移(残高加重平均)」で、このデータを見ると年々、投資信託の販売手数料率が上昇傾向をたどっているのが分かります。
ちなみに、過去の推移は以下のとおりです。

2010年3月・・・・・・2.74%
2011年3月・・・・・・2.86%
2012年3月・・・・・・2.87%
2013年3月・・・・・・2.93%
2014年3月・・・・・・2.95%
2015年3月・・・・・・2.96%

なぜ、販売手数料率の加重平均値が上昇傾向をたどっているのでしょうか。

考えられるケースとしては、やはり仕組みの複雑な投資信託が、より多く売られている現実があるからでしょう。2015年3月の月間純増額を見ると、上位10ファンドの販売手数料率は、最も低いもので3.24%であり、最も高いものになると4.32%も取っています。

ちなみに、この最も高い販売手数料を取っているファンドは、海外株式を組み入れて運用する通貨選択型ファンドであり、毎月分配金が出るタイプです。思うに、通貨選択というゲタを履かせることによって、毎月出される分配金の額をかさ上げした運用を行っていると思われます。

さらに下種な勘繰りをすれば、この手のファンドは、恐らく60歳以上の高齢者を中心に販売されているはずです。毎月高額の分配金が得られるという仕組みは、かつての高金利時代を知っている高齢者に訴求するのと同時に、総じて資産運用に関するリテラシーが低い人が多く、この手の人は高額分配に目がくらんで商品を選択する傾向が強いからです。

販売する側からすれば、「何の疑問も思わないだろうから、ちょっとくらい販売手数料率を上げても買うだろう」というわけです。

しかし、今般の金融モニタリングレポートでは、「販売会社は、手数料に見合ったサービスを提供しているか、改めて確認する必要」と明記されています。8月26日に「フィデューシャリー宣言」を出したセゾン投信が、「当該事業継続に必要な合理的報酬のもと、一切の利益相反行為を排除することを確約」と謳っているように、販売金融機関の手数料稼ぎに資する高い販売手数料の設定はしないということを、多くの投資信託会社が公に宣言せざるを得ない状況になるでしょう。

その意味では、販売手数料率の上昇がそろそろ頭打ちになり、手数料稼ぎがしにくくなる販売金融機関は、ラップ口座の販売に注力するでしょう。もちろん、形を変えた手数料稼ぎのツールであるラップ口座を利用する価値は、ほぼゼロといっても過言ではなさそうです。(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)

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