And Doホールディングスは調整一巡、24年6月期増収増益・連続増配予想

And Doホールディングス<3457>(東証プライム)は住まいのワンストップサービスを展開し、不動産×金融サービスの深化による高収益化を目指す不動産テック企業である。ストック収益を積み上げるフランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、金融事業、および不動産売買事業を成長強化事業と位置付けて収益の柱としている。なお8月17日には23年6月30日時点でプライム市場の上場維持基準にすべて適合していることを確認したとリリースしている。24年6月期も成長強化事業が牽引して増収増益・連続増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は6月の年初来高値圏から反落して水準を切り下げる形となったが、低PERや高配当利回りも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。

■住まいのワンストップサービスを展開する不動産テック企業

FCチェーンネットワーク構築による不動産情報のオープン化と、時代に即した不動産ソリューションサービスを提供する不動産サービスメーカーとして、住まいのワンストップサービスを展開している。さらにFinTechを活用して「不動産×金融」サービスの進化による高収益化を目指す不動産テック(不動産×IT)企業である。

不動産流通事業で創業し、リフォーム事業、不動産売買事業、不動産売買仲介「HOUSEDO」FC加盟店に各種サービスを提供するフランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、不動産担保ローン事業、金融機関と提携したリバースモーゲージ保証事業へと展開し、業容を拡大している。そして22年1月1日付で事業持株会社に移行(ハウス・リースバック事業は移行後も同社が運営)し、商号をAnd Doホールディングスに変更した。

FCチェーンネットワークや高齢化社会に対応した不動産ソリューションなど顧客接点・地域密着ネットワークを構築し、売買仲介を起点として住まい関連サービスにつなげる事業シナジーを強みとしている。さらに不動産事業を通じて世の中を安心、便利なサービスを提供する「不動産コンビニ」構想も掲げている。

23年4月にはハウスドゥ住宅販売が経済産業省の「IT導入補助金2023」でIT導入支援業者として採択(6度目の採択)され、不動産売買仲介WEBシステム「DO NETWORK」および不動産賃貸仲介WEBシステム「RENT Doシステム」が補助金対象ツールとして登録された。

■ストック収益型事業が収益柱

ロイヤリティー収入、賃貸収入、金利収入など、ストック収益を積み上げるフランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、金融事業、および不動産売買事業を成長強化事業と位置付けて収益の柱としている。ハウス・リースバック事業では取得した収益不動産物件の売却も進める。

23年6月期のセグメント別営業利益構成比(全社費用等調整前)は、成長強化事業が86%(フランチャイズ事業が26%、ハウス・リースバック事業が41%、金融事業が1%、不動産売買事業が22%)、不動産流通事業が7%、リフォーム事業が3%、その他が▲0%だった。不動産売買事業は大型物件などによって構成比が変動しやすい。

フランチャイズ事業の加盟契約数は23年6月期末時点で22年6月期末比9店舗増加して692店舗となった。20年9月に全国47都道府県すべてに出店契約を達成し、21年1月からはブランドロゴと店舗デザインを一新している。また賃貸不動産仲介事業の新ブランド「レントドゥ!」も展開している。中期的には25年に国内1000店舗、アジア5万店舗を目標としている。23年3月には、持分法適用会社(現地合弁会社)であるタイのH-DO社がタイのAAA社とFC契約を締結し、タイでのFC1号店をオープンした。

ハウス・リースバック事業では、23年6月期期末の保有物件数が22年6月期末比28件増加して673件、保有物件総額(簿価ベース)が13億19百万円増加して102億33百万円となった。契約件数は148件増加の1147件、物件取得数は137件増加の1147件だった。

金融事業では、リバースモーゲージの23年6月期の新規保証件数が95件増加の421件、期末保証残高が43億64百万円増加の131億69百万円、不動産担保融資の実行件数が28件減少の93件、期末融資残高が23億47百万円減少の24億75百万円となった。リバースモーゲージ保証事業は地域金融機関等との提携を推進するとともに、リバースモーゲージのさらなる普及拡大に向けて銀行代理業許可を取得している。楽天銀行の銀行代理業者として「楽天銀行リバースモーゲージ」の申込媒介を行う。不動産担保融資は戦略的に縮小させている。

23年7月には、IoTでスマートな宿泊体験を提供する宿泊施設LUXE TECH VILLA(ラグジュテックヴィラ)の第1号を奄美大島にオープンした。

■M&A・アライアンスも活用

M&A・アライアンスでは、19年8月に埼玉県草加市を中心に不動産売買・仲介を展開する小山建設グループを子会社化、20年7月に子会社の草加松原住建の商号をハウスドゥ・ジャパンに変更した。21年7月には加盟店を対象とする業務支援サービスの利用に関して、不動産サービス比較サイト「リビングマッチ」運営のリビン・テクノロジーズ<4445>と業務提携した。21年9月には識学<7049>と業務提携した。識学の「成長する組織つくり」を加盟店が導入することで加盟店の組織力および業績拡大につなげる。

22年5月にはドキュサイン・ジャパンと不動産売買取引における電子契約システムで業務提携した。ハウスドゥオリジナル基幹システム「DO NETWORK」とドキュサイン・ジャパンの電子署名サービス「DocuSign eSignature」との連携で電子契約が可能になる。22年12月には総合生活トラブル解決サービスを展開するジャパンベストレスキューシステム(JBR)<2453>と提携した。ハウスドゥで契約した顧客に対して会員制生活トラブル解決サービス「ハウスドゥ持ち家の長期サポート」を開始する。

23年1月にはハウスドゥ住宅販売が、手付金が不要となる住宅購入支援サービス「ゼロテ」を開発・提供するGOGENと業務提携した。住宅購入顧客に対して現金不要の新しい住宅取得の仕組みを提供する。23年3月にはハウスドゥ住宅販売が、完全会員制の家探しサービスHousii(ハウシー)を展開するSpeeeと業務提携した。加盟店向け支援サービスの一層の充実を図る。

■中期経営計画(23年6月期~25年6月期)

中期経営計画(23年6月期~25年6月期)では目標数値に、25年6月期の売上高518億19百万円、営業利益41億79百万円、経常利益40億円、親会社株主帰属当期純利益26億40百万円、経常利益率7.7%を掲げている。配当性向は30%以上を基本水準とする。

事業セグメント別の25年6月期の計画は、フランチャイズ事業の売上高41.8億円で営業利益29.0億円、ハウス・リースバック事業の売上高214.2億円で営業利益28.3億円、金融事業の売上高14.1億円で営業利益6.0億円、不動産売買事業の売上高207.6億円で営業利益18.0億円、不動産流通事業の売上高20.4億円で営業利益6.4億円、リフォーム事業の売上高27.0億円で営業利益2.3億円としている。

成長強化事業の主要指標の計画(25年6月期)は、フランチャイズ累計加盟店舗数が865店舗、ハウス・リースバック事業の年間仕入契約数が1440件、リバースモーゲージ保証残高が506億円、リバースモーゲージ提携金融機関が100行、不動産売買のたな卸資産残高が140億円としている。

成長戦略として、成長強化事業(フランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、金融・リバースモーゲージ事業、不動産売買事業)のさらなる拡大、不動産×金融サービスの深化、高収益体質化の促進を推進する。なお20年8月にはDX推進本部を設立している。

23年6月には、Sanu社が提供する新たな法人向け会員制宿泊サービス「SANU 2nd Home(サヌセカンドホーム)の導入を発表した。福利厚生の一環として社員に対し、都市生活だけでは得られない創造的なインスピレーションとの出会いを提供する。

なお22年6月30日時点においてプライム市場の上場維持基準のうち流通株式時価総額が基準を満たしていない状態となったため、22年9月に上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示したが、8月17日に23年6月30日時点でプライム市場の上場維持基準にすべて適合していることを確認したとリリースしている。

■23年6月期2桁増収増益、24年6月期増収増益・連続増配予想

23年6月期の連結業績は売上高が22年6月期比19.7%増の495億52百万円、営業利益が10.6%増の31億76百万円、経常利益が13.9%増の33億58百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が12.2%増の21億95百万円だった。概ね計画水準で着地し、過去最高を更新した。配当は22年6月期比4円増配の40円(期末一括)とした。連続増配で配当性向は35.7%となる。

フランチャイズ事業は、売上高(調整前)が5.1%減の32億14百万円、セグメント利益(調整前営業利益)が10.7%減の20億54百万円だった。前期の退会数増加に伴う加盟金一括計上という会計上のプラス要因の反動で減収減益だった。累計加盟店数(レントドゥ含む)は9店舗増加して692店舗となった。

ハウス・リースバック事業は、売上高が53.5%増の223億06百万円、利益が89.2%増の32億50百万円だった。HLBファンドへの譲渡実行により大幅増収増益だった。契約件数は148件増加の1238件、物件取得数は137件増加の1147件、期末保有物件数は28件増加の673件、保有物件総額(過去分除く簿価ベース)は13億19百万円増加の102億33百万円となった。なおHLBファンドからの利益分配5億33百万円(営業外収益で計上)をセグメント業績に含めると営業利益は84.5%増の37億84百万円となる。

金融事業は、売上高が31.5%減の5億25百万円で、利益が15.7%減の1億16百万円だった。不動産担保融資を戦略的に縮小(融資実行件数が28件減少の93件、融資残高が23億47百万円減少の24億75百万円)しているため減収減益だが、リバースモーゲージ保証は伸長(新規保証件数が95件増加の421件、保証残高が43億64百万円増加の131億69百万円)している。

不動産売買事業は、売上高が7.9%増の198億95百万円、利益が5.4%増の17億82百万円だった。取引件数は50件増加の640件だった。仕入・販売とも順調だった。

不動産流通(仲介)事業は、仲介件数の減少で売上高が22.2%減の18億07百万円、利益が25.3%減の5億46百万円だった。仲介件数は829件減少して2028件だった。グループシナジーによる利益貢献を優先して、店舗統合や成長強化事業への人員シフトを進めているため減収減益だった。

リフォーム事業は、売上高が4.8%減の25億29百万円、利益が11.4%増の2億18百万円だった。不動産流通(仲介)事業の店舗統合の影響で中古+リフォームの受注が減少したが、生産性向上などで利益率が向上した。リフォーム契約件数は174件減少の1642件、完工件数は25件減少の1784件だった。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高96億12百万円で、営業利益3億43百万円、経常利益2億90百万円、第2四半期は売上高158億24百万円で、営業利益14億06百万円、経常利益15億63百万円、第3四半期は売上高105億03百万円で、営業利益6億94百万円、経常利益6億19百万円、第4四半期は売上高136億13百万円で、営業利益7億33百万円、経常利益8億86百万円だった。四半期業績はハウス・リースバック事業におけるファンドへの譲渡、不動産売買事業における大型物件によって変動する傾向がある。

24年6月期連結業績予想は売上高が23年6月期比15.8%増の573億70百万円、営業利益が13.3%増の36億円、経常利益が7.2%増の36億円、そして親会社株主帰属当期純利益が8.2%増の23億76百万円としている。配当予想は23年6月期比3円増配の43円(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向は35.4%となる。

セグメント別の営業利益(調整前)計画はフランチャイズ事業が9.5%増の22億50百万円、ハウス・リースバック事業が3.1%増の33億50百万円、金融事業が3.3%増の1億20百万円、不動産売買事業が24.6%増の22億20百万円、不動産流通事業が8.4%減の5億円、リフォーム事業が0.8増の2億20百万円としている。

24年6月期も増収増益・連続増配予想としている。フランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、不動産売買事業が牽引し、連続で過去最高を更新する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度を再開

株主優待制度については22年6月期末対象をもって廃止したが、5月8日に株主優待制度の再開を発表した。毎年6月末日現在の5単元(500株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じて、株主限定特設ウェブサイト「And Doホールディングス・プレミアム優待倶楽部」で商品に交換できるポイントを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

株価は6月の年初来高値圏から反落して水準を切り下げる形となったが、低PERや高配当利回りも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。8月28日の終値は1020円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS121円42銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の43円で算出)は約4.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS784円67銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約200億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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