JR東日本と日立、共同で開発したフルデジタル変電所システムを2025年度以降に導入

■電力供給の安定化と省力化を実現

 JR東日本(東日本旅客鉄道)<9020>(東証プライム)、日立製作所<6501>(東証プライム)は5日、共同で開発したフルデジタル変電所システムを、2025年度以降に導入すると発表。同システムを導入することにより、変電所構内の伝送路および保護・制御機能の二重化が可能となり、電力の安定供給による鉄道の安定輸送に貢献する。さらに、設備のスリム化による工事の省力化が可能になる。

■フルデジタル変電所システムの概要

 現行の保護・制御システムは、変電所構内で受け渡しを行う情報を、1つの情報に対し1本のメタルケーブルを必要とする構成としていたため、二重化するには同じ設備を設ける必要があり、実現が困難だった。今後導入するフルデジタル変電所システムは、光デジタル通信の活用により、ネットワーク装置から現場ユニットまでの多くの情報を1本の光ケーブルで送ることが可能になり、二重化を容易に実現する。今回、JR東日本と日立が共同で変電所のシステム構成や運用方法の検討およびフィールド試験(JR東日本の変電所に試験用機器を設置し、実際の環境下で通信状況の確認などを実施した。)を実施し、実用化の目途がたったことから、運用設備への導入を決定した。

■フルデジタル変電所システムの特長

(1)変電所デジタル化による電力の安定供給

 変電所構内の伝送路と保護・制御機能の完全二重化を実現した。そのため、変電所構内において一方の設備で故障が発生しても、もう一方の設備で継続的な稼働が可能になる。これにより、従来以上に電力を安定供給することが可能となった。

(2)省スペース化および工事の省力化

 同システムでは、監視操作盤・保護リレー盤を、統合ユニット(日立開発)に集約・小型化することにより、盤の数量を大幅に削減した。また、ネットワーク装置から現場ユニットまで大量の制御ケーブルを必要としない光デジタル通信を採用することで、制御ケーブルを約9割削減することが可能となった。これにより、省スペース化および工事の省力化を実現する。

(3)国際規格を適用

 JR東日本は、同システムに国際規格IEC61850※を適用することで、機器調達リスクを低減、事業継続性を確保する。なお、IEC61850を適用したデジタル変電所システムの導入は国内鉄道事業者では初めてになる。

※IEC61850:電気・電子技術分野の国際規格の策定を行っている国際標準化機関であるIECの技術専門委員会によって策定された国際標準。電力設備自動化に必要な通信ネットワークとシステムについて規定している。

■使用開始時期

 2025年度以降、小岩交流変電所に導入する。具体的には、2024年度から順次機器を搬入し、2025年度に2万2千ボルト設備を使用開始、2026年度に2万2千ボルト旧設備の撤去および6万6千ボルト設備の機器搬入し、2027年度に6万6千ボルト設備の使用開始を予定している。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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