【アナリスト水田雅展の銘柄分析】寿スピリッツは調整一巡してモミ合い上放れ、首都圏の新業態や洋菓子が好調

銘柄分析

 菓子製造・販売の寿スピリッツ<2222>(東1)の株価は、10月の直近安値2038円から切り返し、11月以降は概ね2200円近辺でモミ合う展開だ。やや反発力が鈍い形だが、12月15日には全般地合い悪化の状況でも前日比22円高と3営業日続伸した。調整が一巡してモミ合い上放れの展開だろう。

 山陰地区中心に「因幡の白うさぎ」ブランドなどを展開する寿製菓、北海道中心に「ルタオ」ブランドを展開するケイシイシイ、首都圏中心に洋菓子を多ブランド展開するシュクレイ、九州中心に「赤い風船」ブランドを展開する九十九島グループ、関西中心に「遊月亭」ブランドを展開する但馬寿、そして販売子会社(東海地区3社、中国・九州地区4社、関西地区2社)などの地域事業会社を傘下に置き、地域限定ブランド菓子の製造・販売を主力としている。駅・空港・高速道路など交通機関チャネルでの販売比率が高いことも特徴だ。

 製造卸から製造小売に事業モデルを転換して高収益化を推進するとともに、全国各地のお菓子のオリジナルブランドとショップブランドを創造する「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げている。さらに「ニューコンセプトメーカー」として、ローカル・プレミアムブランドの創出と育成を目指し、地域やチャンネル特性にマッチした商品開発、販路拡大やリアル店舗と通販の融合、独自の販売スタイル構築、新ビジネス開発、海外展開を推進する方針で、中期経営目標の指標は売上高経常利益率20%としている。

 今期(15年3月期)の連結業績見通しは、前回予想(5月13日公表)を据え置いて売上高が前期比2.4%増の235億円、営業利益が同6.7%増の25億円、経常利益が同5.8%増の25億円、純利益が同15.0%増の14億70百万円、配当予想が記念配当を普通配当に変えて前期と同額の年間40円(期末一括)としている。

 主要セグメント別の売上高の計画は、ケイシイシイが東京・表参道に出店した新業態アントルメグラッセ専門店「グラッシェル」の認知度向上や通販強化などで同2.8%増収、寿製菓が新商品開発・投入などで同1.5%増収、販売子会社が同2.6%増収、九十九島グループが新業態フレンチトースト専門店「アイボリッシュ」の認知度向上などで同11.5%増収、但馬寿が新商品開発・投入などで同11.2%増収、シュクレイがブランド認知度向上に向けた新商品開発・投入や催事展開の強化などで同13.5%増収としている。

 なお健康食品「栃(とち)」と「藍(あい)」を販売するジャパルシーは事業モデル再構築のため新規会員募集を14年4月で停止し、通販基幹業務システムサービスは事業中止に向けて既存会員の他社サービス等への移行を進めている。

 第2四半期累計(4月~9月)は、出雲・伊勢の遷宮特需の反動減、消費増税や夏場の天候不順の影響などで前年同期比0.6%増収にとどまり、利益面では人件費の増加などが影響して同19.7%営業減益、同19.7%経常減益、同16.2%最終減益で期初計画を下回った。また通期見通しに対する進捗率は売上高が46.3%、営業利益が28.5%、経常利益が28.8%、純利益が28.0%と低水準である。

 ただし四半期別売上高を見ると第1四半期(4月~6月)が同3.6%減の50億01百万円だったのに対して、第2四半期(7月~9月)は同4.5%増の58億89百万円と改善傾向を強めている。第2四半期は首都圏での展開強化などでケイシイシイ、九十九島グループ、シュクレイが好調だった。

 クリスマス・年末年始商戦などで第3四半期(10月~12月)の売上構成比が高い季節要因の収益構造に加えて、首都圏を中心とする新業態店の知名度・ブランド力向上、新商品の開発・投入推進、販促・接客強化による消費者への訴求力向上、製造採算改善などの効果も期待される。人件費や原材料価格の上昇などを吸収して通期ベースでは挽回が期待されるだろう。

 訪日外国人旅行客が増加基調であり、地方の観光地への旅行需要も高水準に推移している。中期的にはアベノミクス重点戦略の「地方創生」も追い風だろう。

 株主優待制度については、毎年3月末現在で100株以上所有の全ての株主に対して2000円相当の自社グループ製品、200株以上所有の全ての株主に対して4000円相当の自社グループ製品を贈呈し、さらに1000株以上所有株主に対して3000円分のグループ直営店舗優待券(優待券の代わりに指定商品への交換も可)を贈呈している。

 株価の動きを見ると、10月の直近安値2038円から切り返し、11月以降は概ね2200円近辺でモミ合う展開だ。やや反発力が鈍い形だが、12月15日には全般地合い悪化の状況でも前日比22円高と3営業日続伸した。

 12月15日の終値2189円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS141円71銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間40円で算出)は1.8%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS775円95銭で算出)は2.8倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、52週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。調整が一巡してモミ合い上放れの展開だろう。

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