【小倉正男の経済コラム】マイナス金利解除 FRBの利下げを見守るしかない・・・

日本銀行 日銀

■金融政策決定会合は従来政策を維持

 日銀の金融政策決定会合(12月18~19日)は、従来の金融政策を何も変更しないという確認で終了した。

 事前に植田和男総裁の「チャレンジング発言」があり、「マイナス金利」など政策に変化が出る可能性が取り沙汰されていた。この発言で為替、株式、国債などの市場は乱高下、市場は何らかの変化が起こると“動揺”をみせていた。

 植田総裁は国会(参院財政金融委員会)で金融政策の所見についてこう発言している。
 「チャレンジングな状況が続いておりますが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になると思っている」(12月7日)。

 この発言は、日銀がマイナス金利の早期解除に転換したかという思惑を呼んだ。仮に利上げとなれば、日本としては17年ぶりである。アベノミクス以降は、利下げしか行っていない。日銀にとっては大きな政策転換にほかならない。

■「一段と気を引き締めて」というつもりで発言した?

 結果として、植田総裁の「チャレンジング発言」は何も中身がなかったことになる。火薬庫のなかで煙草を吹かして一服するような発言だが、どうやらそうした思いはなかった模様である。

 「チャレンジング発言」について、植田総裁は金融政策決定会合後の会見でこう語っている。
 「今後の仕事の取り組み一般について問われたところなので一段と気を引き締めてというつもりで発言した」
 チャレンジングとは仕事に向かう姿勢のことである、と回答している。

 チャレンジングには、「挑戦的な」という意味もあるが、「困難な」「難しい」という使われ方がある。国会・参院財政金融委員会で、仕事に取り組む姿勢を問うというのはややあり得ない。日銀としては、かなり「困難な」説明をしたものである。

■年末から新年にかけて困難な状況が続く

 日銀は新年前半にもマイナス金利解除、すなわち利上げに動くという予測報道が少なくない。しかし、中央銀行が利上げを実施するには、事前に周到な“地ならし”を行う必要がある。いきなり利上げに踏み込めば、それこそ市場の乱高下など大きな混乱を呼ぶことなる。だが、日銀は12月金融政策決定会合で新年のマイナス金利解除にひと言も触れていない。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、利下げ方向に姿勢を転換している。新年は年3回の利下げを行うことが示唆されている。一般には上半期の5月に最初の利下げを実施、下半期に2回程度の利下げが行われるとみられている。日銀のマイナス金利解除とは、真逆の方向に進もうとしている。

 日銀がマイナス金利解除に動いた直後に米国が利下げに転じれば、日銀は手詰まりになりかねない。下手をすれば、マイナス金利に逆戻りになる可能性がある。日銀としては、それは避けたい。

 日銀もFRBの利下げと重なるリスクを強く意識していることを隠していない。米国の利下げ以前には動けない。となれば、FRBの利下げ動向を見守るしかない。当面のところマイナス金利解除には動けない。年末から新年にかけて「困難な」という意味合いで、日銀はチャレンジングな状況が続くことになる。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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