アイデミー、26年5月期は戦略的投資で赤字予想、生成AI関連のコンテンツ投資で再成長加速へ

 アイデミー<5577>(東証グロース)は東大発のAIスタートアップである。AI/DX人材の育成を支援するプロダクト、顧客のAI開発やDX変革を伴走型で支援するソリューションなどを一気通貫サービスとして提供している。26年5月期は再成長に向けた先行投資の影響で赤字予想としている。27年5月期以降の持続的な成長軌道を実現するため、26年5月期を再成長に向けた投資フェーズと位置付けて、生成AI関連を中心とするコンテンツへの投資、AIおよびAI Related App領域への事業投資を強化する。積極的な事業展開で中長期成長を期待したい。株価は動意づく形で底放れの動きを強めている。出直りを期待したい。

■東大発のAIスタートアップ

 同社はAI開発支援を中心に人材育成からコンサルティングまで提供する東大発のAIスタートアップである。AIをはじめとする新たなソフトウェア技術を、いち早くビジネスの現場にインストールすることで、次世代の産業創出を加速させることを目指している。なお25年1月に持続可能な脱炭素社会の実現を目指す日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)に加盟、一般社団法人AIガバナンス協会に加盟した。

 M&A関連では24年1月にWebクリエイティブ事業やWebアプリケーション構築事業を展開するファクトリアルを子会社化、24年6月にWEBサイト構築・運用等を展開するまぼろしを子会社化、24年12月にWebアプリケーション開発に強みを持つIT企業のトゥーアール社を子会社化した。資本業務提携としては20年1月にダイキン工業<6367>、テクノプロ・ホールディングス<6028>の子会社テクノプロ、21年6月に古河電気工業<5801>、22年12月に日本ゼオン<4205>と、それぞれ資本業務提携している。

■AI/DX内製化支援のプロダクトやソリューションを一気通貫で提供

 同社は、単にAIが絡むシステムの受託開発や研修を請け負うのではなく、AI/DX内製化をユーザー主導で実現するために必要なツールを提供するという基本方針のもと、企業変革の基盤となるDXの推進およびAI/DXの内製化を支援する各種プロダクトやソリューションを、相互シナジーが期待できる一気通貫サービスとして提供している。

 サービス区分は、企業がデジタル変革に向けて必要とするAI/DX人材の育成を支援するAI/DXプロダクト、顧客のAI開発やDX変革を伴走型で支援するAI/DXソリューション、個人向けにAI/DXラーニングサービスを提供するAI/DXリスキリングとしている。25年5月期のサービス別売上高は、法人向けAI/DXプロダクト事業が11億69百万円、AI/DXソリューション事業が6億75百万円、個人向けAI/DXリスキリング事業が2億11百万円だった。

 AI/DXプロダクトは、オンラインAI/DXラーニングAidemy Business、講師派遣型でAI/DX人材育成研修を行うAidemy Practiceなどを主力としている。収益モデルはライセンス数・人数に応じて売上計上するリカーリング型である。

 AI/DXソリューションは、AI/DX開発の内製化に向けた伴走型支援サービスとしてAidemy Solutions(25年6月に旧Modeloyをリニューアル)を提供している。経験豊富な同社のエンジニア・データサイエンティストが顧客企業のメンバーとともに、課題選定から開発・運用までのプロジェクトを推進し、AI開発やDX推進を支援する。また素材業界に特化した新ラインのAidemy Solutions for Materialや、企業が自社の組織課題に応じてAI導入やDXを進められるAidemy Consultingなども展開する。収益モデルはプロジェクトごとのフロー型である。

 AI/DXリスキリングは個人向けのオンラインDXラーニングサービスAidemy Premiumを提供している。

 なおサービスラインナップ拡充としては、23年7月にデータ活用プラットフォームLab Bankを提供開始、24年3月にDPAS(Digital Professional Assessment Service)を提供開始、24年4月に法人向けAidemy Businessおよび個人向けAidemy Premiumの新機能としてパーソナルAIアシスタントMy Aideを発表した。また24年5月にNVIDIAのAIスタートアップ支援プログラムNVIDIA Inception Programのパートナー企業に認定された。

■先端技術に関する知見が強み

 同社はAIをはじめとする先端技術に関する知見を強みとしている。AIに関する知見を有する経験豊富なデータサイエンティストが多数在籍し、相互シナジーが期待できる一気通貫サービスを提供していることに加え、M&Aやアライアンスも活用しながら、生成AIやMaterials Informatics(化学分野でのAI活用)などの最新AI技術を横展開することで、従来型のAI/DXベンダーとの競合差別化を図っている。

■M&A・アライアンスも活用

 新プロダクト開発や売上拡大に向けてM&A・アライアンスも積極活用している。生成AIに特化したソリューションを提供する東大松尾研究スタートアップであるneoAIと協業し、生成AI領域における学習コンテンツ開発やセミナー開催などで連携しているほか、24年3月にはデロイト トーマツ グループのデロイト トーマツ コンサルティング合同会社とアライアンス締結に合意した。

 24年5月には、学研ホールディングス<9470>のグループ会社でオープン研修Tomorrowなどを展開するTOASUと、AI/DX人材養成の体制拡充に向けて提携した。24年6月には企業向け研修サービスを提供するサーカスと協業開始した。24年7月にはMakeDなどとともに、カーボンニュートラル実現に向けて必要となる人材の課題に対応するグリーン人材開発協議会を設立した。25年6月にはストックマークと生成AI時代におけるDX支援で協業した。

■日本を代表する大企業との取引が中心で強固な顧客基盤

 資本業務提携しているダイキン工業、テクノプロ、古河電気工業、日本ゼオンのほか、本田技研工業、キヤノン、大日本印刷、冨士フィルム、大塚ホールディングス、大和証券グループ本社、住友商事など、AI/DXの内製化に取り組む日本を代表する大企業との取引が中心となっており、強固な顧客基盤を構築している。

 25年2月にはサッポロホールディングス<2501>と連携し、サッポログループ全社員約6000名を対象に生成AI研修の提供を開始した。25年4月にはノーリツ<5943>と進めているDX人材育成について、育成対象を従来の生産本部に加えて営業本部へ拡大した。25年5月には三菱電機<6503>が設立した従業員向けDX人財育成機関「DXイノベーションアカデミー」の初級講座の学習コンテンツとして、Aidemy Businessの提供を開始した。25年7月にはAidemy Businessの新規導入として北海道ガス、北銀ソフトウェア、三協立山、ニチアスをリリースした。

 資本業務提携先のダイキン工業とはAidemy Business導入後、アカウント増加やModeloyへのクロスセルに進み、今後も共同プロジェクトの実施を計画している。日本ゼオンとはデジタル人材育成を起点として、材料開発に関するMaterials Informatics領域での協業に進み、今後は共同開発したプロダクトの素材メーカーへの外販なども計画している。古河電気工業とはAidemy Businessの全社展開やModeloyによる工場内システム内製化支援のほか、MI領域での基礎モデルを共同開発中である。

■生成AIコンテンツへの投資強化

 成長戦略としては、事業環境の変化を踏まえて中長期目標を再調整・具体化した。法人向け事業においてはAI/DX推進を一気通貫で実現して企業のデジタル変革を加速することを目指し、AI/DXソリューションを軸としたサービス体系の再構築を行い、企業のAI活用とDX推進をより戦略的に支援する体制を整備する。AI/DXプロダクトではニーズの高い生成AIコンテンツへの投資強化によりソリューション提案への入り口を整備するほか、AI/DXソリューションでは増加中の生成AI技術領域案件の中でも競合が少なく、同社の強みを発揮できる化学素材業界(化学素材業界に特化したAidemy Solutions for Material=AS4M)に注力する。そして営業体制と収益基盤の強化により、30年までに顧客数1000社の達成を目指す。個人向けのAI/DXリスキリングにおいては、新サービスを活用した一気通貫支援で他社との差別化を図ることで申込率の改善を推進する。

 またAI Related App領域(生成AIや機械学習などのAI技術を組み込んだ、特定の業務課題の解決や業務生産性の向上を目的とした業務アプリケーション群)において、M&A・アライアンスも活用しながら業界ごとの業務アプリケーション展開を強化する。これらの施策により、成長余地の大きいAIシステム開発市場へのシフトを推進する。

■26年5月期は先行投資で赤字予想だが中長期成長期待

 25年5月期の連結業績(6月12日付で上方修正)は売上高が前期比3.0%減の20億56百万円、営業利益が85.2%減の43百万円、経常利益が85.0%減の43百万円、親会社株主帰属当期純利益が8百万円の損失(前期は2億15百万円)だった。既存案件の大型化が進まず減収となり、M&A関連など一時的費用も影響して減益だった。ただし費用の効率的運用などで営業・経常黒字を確保した。EBITDA(営業利益+償却費+のれん償却費+仲介費等の株式関連取得費用)は1億60百万円(前期は3億30百万円)だった。

 サービス別の売上高は、法人向けAI/DXプロダクト事業が8.9%減の11億69百万円、AI/DXソリューション事業が24.2%増の6億75百万円、個人向けAI/DXリスキリング事業が27.6%減の2億11百万円だった。AI/DXプロダクト事業は教育が一巡した一部顧客企業の解約の影響などで減収だった。AI/DXソリューション事業はM&A効果(前期第4四半期に子会社化したファクトリアルの通期連結)で増収だった。AI/DXリスキリング事業は競合環境変化などで減収だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が5億27百万円で営業利益が27百万円の損失、第2四半期は売上高が5億17百万円で営業利益が10百万円、第3四半期は売上高が5億32百万円で営業利益が70百万円、第4四半期は売上高が4億80百万円で営業利益が9百万円の損失だった。

 26年5月期の連結業績予想は売上高が前期比5.2%減の19億50百万円、営業利益が3億15百万円の損失(前期は43百万円)、経常利益が3億20百万円の損失(同43百万円)、親会社株主帰属当期純利益が3億40百万円の損失(同8百万円の損失)としている。EBITDAは2億35百万円の損失(同1億60百万円)としている。

 再成長に向けた先行投資(一時的な投資として合計3億50百万円を計画)の影響で赤字予想としている。27年5月期以降の持続的な成長軌道を実現するため、26年5月期を再成長に向けた投資フェーズと位置付けて、顧客ニーズの深耕等に注力するマーケティング活動として広告宣伝投資(投資額1億50百万円)、生成AI関連を中心とするコンテンツへの投資(同1億円)、AIおよびAI Related App領域への事業投資(同1億円)を強化する。積極的な事業展開で中長期成長を期待したい。

■株価は動意づいて底放れ

 株価は動意づく形で底放れの動きを強めている。出直りを期待したい。8月13日の終値は931円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS292円47銭で算出)は約3.2倍、そして時価総額は約37億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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