Jトラスト、25年12月期は大幅増益予想で収益拡大、日本・韓国・東南アジアの金融事業が堅調

 Jトラスト<8508>(東証スタンダード)は日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業を展開し、成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大を推進している。25年12月期は大幅営業増益予想としている。日本金融事業の堅調推移に加え、韓国及びモンゴル金融事業の業績改善も寄与する見込みだ。中間期が計画を上回る大幅営業増益と順調であり、通期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上げ一服の形となったが、指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■日本、韓国・モンゴル、東南アジアで金融事業を展開

 日本、韓国・モンゴル、及びインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業(銀行、信用保証、債権回収、その他の金融)を展開し、さらなる成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大戦略を推進している。

 24年12月期のセグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)は日本金融事業が70億40百万円、韓国及びモンゴル金融事業が9億64百万円、東南アジア金融事業が15億09百万円、不動産事業が3億61百万円、投資事業が15億95百万円の損失、その他が2億11百万円の損失だった。不動産事業では前期計上した負ののれん発生益が剥落した。収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで変動する可能性がある。

■成長加速に向けて事業基盤拡大

 日本金融事業は、主に日本保証が信用保証/消費者・事業者向け金融事業、パルティール債権回収が債権回収業、Jトラストグローバル証券(以下:JTG証券)が証券業、Nexus Cardがクレジットカード事業を展開している。25年6月にはJTG証券がENRISSION INDIA CAPITAL(京都市)と、インドスタートアップ企業への投資機会の提供拡大に関して業務提携した。

 韓国及びモンゴル金融事業は、主に韓国・JT貯蓄銀行と韓国・JT親愛貯蓄銀行が銀行業、韓国・TA Assetが債権回収業を展開している。なおJトラストアジアが保有するモンゴルJ Trust Credit NBFI(以下:JTM)の全株式を25年4月に譲渡完了し、JTMを連結対象から除外した。

 東南アジア金融事業は、インドネシアでJトラスト銀行インドネシア(以下:BJI)が銀行業、Jトラストインベストメンツインドネシア(以下:JTII)が債権回収業、TA Assetインドネシア(以下:TAID)が債権回収業、カンボジアでJトラストロイヤル銀行(以下:JTRB)が銀行業を展開している。なお23年6月に、Jトラストオリンピンドマルチファイナンス(以下:JTO)の株式を譲渡(譲渡実行日はインドネシア金融庁の承認後)する株式売買契約を締結した。これによりJTOは連結除外となる。25年4月にはBJIが愛媛銀行と業務提携した。愛媛銀行の取引先の海外進出やBJIの取引先とのビジネスマッチングなどを支援する。

 不動産事業は、主に同社、Jグランド、ライブレント、グローベルス<193A>が展開している。23年2月に同社がミライノベートを吸収合併、23年5月にJグランドがライブレントを子会社化、25年3月にJグランドが子会社グランド保証を設立して家賃保証事業に参入、25年4月にグランド保証がクレディセゾンと業務提携して家賃保証サービスの提供を開始した。なおグローベルスは25年7月25日付でTOKYO PRO Marketの株式上場を廃止した。

 投資事業はJトラストアジアが展開している。なおJトラストアジアは販売金融事業のタイGLH社に出資したが、17年10月にタイGLH社CEO此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発された。このため現在はタイGLH社、此下益司氏、およびGLH社の関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。

 GLH社に対する訴訟の解決・債権回収については、勝訴判決に基づいて履行を受けるなど解消に向けた動きが進展している。

 タイにおいては、21年3月の控訴審判決でJトラストアジアによる権利行使は適法であるとしてGLH社の請求を全面的に棄却したが、この控訴審判決を不服とするGLH社の上告受理の申し立てが最高裁判所において22年8月31日付で受理の決定がなされた。ただし最高裁判所における審理においても、引き続き主張が認められるよう尽力するとしている。GLH社に対する会社更生の申し立てについては、最高裁判所において21年12月に申し立てが却下されたが、民事訴訟については第1審の審理が継続している。GLH社が同社に対して提起していた損害賠償を求める訴訟については、24年2月にタイの民事裁判所による判決の言い渡しがあり、GLH社の請求が全て却下された。

 英領バージン諸島においては21年5月に、控訴裁判所が昭和ホールディングスによる上訴を棄却した。そして22年5月には、民事訴訟における支払命令(約95百万米ドル)判決が確定した。キプロスにおいては21年8月に、此下益司氏ならびにキプロス所在4社に対して約130百万米ドルの賠償を求める訴訟を提起し、裁判所が被告らに対する全世界的資産凍結命令を発令した。

 日本では21年6月に、A.P.F.GROUP、昭和ホールディングス、ウェッジホールディングスに対して、約24百万米ドルの支払いを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。日本における損害賠償請求訴訟については、22年3月の東京地方裁判所による第一審判決で損害賠償請求が認められなかったが、判決内容を十分に精査し、弁護士とも協議のうえ今後の対応を検討するとしている。

 シンガポールにおいては、23年4月にシンガポール高等法院が被告らに対して連帯で約1億24百万米ドルおよび21年8月1日からの利息の支払い等を命じる判決(第1審判決)を言い渡し、控訴審においてシンガポー高等法院上訴部が23年11月22日付で第1審判決を維持する判決を言い渡した。さらに24年1月11日付で控訴裁判所が控訴を棄却し、23年4月の第1審判決が確定した。24年3月にはシンガポール高等法院がJトラストアジアの申し立てに基づき、GLH社の清算手続開始を決定し、GLH社に対して清算人を選任した。24年5月には、24年1月11日付の確定判決により約1億24百万米ドル(判決言い渡し当時の為替レート1米ドル=146円換算で約181億円)および21年8月以降の利息に係る判決債権を有しているが、同判決に基づき、キプロスにおいて此下益司氏実質的に保有している銀行預金口座等に対する強制執行を実施し、合計約8億47百万円(1ユーロ=167円、1米ドル=155円で換算)を差し押さえて回収した。なお24年3月の清算人選任に対してGLHの親会社であるGLが控訴を行っていたが、24年8月に控訴裁判所からGLによる控訴が撤回されたとの連絡を受けた。これにより、GLHの清算手続開始決定が確定した。25年1月には21年8月1日からの利息の支払い等を命じる判決に基づき、キプロスにおいて此下氏が実質的に保有している銀行預金口座および此下氏が実質的に保有している企業の銀行預金口座に対する強制執行を実施し、約6億07百万円を差し押さえて回収した。

 その他事業は主にJ Sync(旧Robotシステム)がグループのシステム開発・運用・管理業務を展開している。またKeyHolder<4712>は持分法適用関連会社となっている。

■27年12月期に向けた「J TRUST VISION」

 25年12月期~27年12月期を対象期間とする「J TRUST VISION」では、最終年度27年12月期の目標値(証券業を除く)に、営業収益1568億円、営業利益174億円、当期純利益114億円を掲げている。

 営業利益174億円(24年12月期実績62億円比112億円増益)の内訳としては、日本金融事業が保証事業と債権回収事業の安定成長により70億円から75億円へ5億円増益、韓国及びモンゴル金融事業が事業再構築完了により9億円から55億円へ46億円増益、東南アジア金融事業が成長加速により15億円から53億円へ38億円増益、不動産事業が安定的な事業拡大により3億円から11億円へ8億円増益、投資事業・その他事業が裁判関連費用剥落などにより15億円の損失から4億円の損失へ11億円増益の計画としている。

 また27年12月期営業利益174億円は、日本・韓国・東南アジアの各金融事業において見通しを立てやすい事業領域でのベースラインの計画としており、さらなるアップサイド要因として、日本の証券業におけるプライベートバンキング事業の預かり資産1兆円への拡大、BJIの資本増強による貸出残高拡大、投資事業におけるGLH社向け債権回収などにより「174億円+α」を目指すとしている。

 株主還元については「3ヶ年計画期間における配当性向30%以上+累進配当、および資本効率を意識した機動的な自己株式取得を実施予定」としている。

■25年12月期大幅増益予想で収益拡大基調

 25年12月期の連結業績予想は営業収益が前期比5.4%増の1351億円、営業利益が77.5%増の111億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が7.6%増の65億円としている。配当予想は前期比3円増配の17円(期末一括)としている。予想配当性向は34.7%となる。

 第2四半期累計(中間期)は営業収益が前年同期比7.0%減の607億42百万円、営業利益が125.9%増の45億86百万円、親会社の所有者に帰属する中間利益が49.7%減の13億90百万円だった。

 計画(売上収益660億円、営業利益37億円、当期純利益16億円)を上回る大幅営業増益と順調だった。日本金融事業が堅調に推移したほか、韓国及びモンゴル金融事業の業績改善などが寄与した。なお親会社の所有者に帰属する中間利益は、為替の円高により、外貨建て資産負債の評価替えに伴う為替差損を計上したため減益だった。

 日本金融事業の営業利益は5.7%増の35億45百万円だった。クレジット・信販業務における貸倒引当金積み増しなどで費用が増加したが、債権回収業務やクレジット・信販業務が好調に推移して増収増益だった。

 韓国及びモンゴル金融事業の営業利益は5億07百万円(前年同期は13億02百万円の損失)だった。銀行業における円換算後の貸出金利息収入が減少したが、調達金利の低下、円換算後の預金利息費用の減少、不良債権売却による貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の減少などにより黒字転換した。

 東南アジア金融事業の営業利益は10.8%増の15億63百万円だった。インドネシアにおいて追加融資に対する貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額が増加した一方で、カンボジアにおいて無形資産の償却が終了したことなどにより販管費が減少したため、全体として増益だった。

 不動産事業の営業利益は6百万円の損失(同3億54百万円)だった。販売用不動産の販売収益が減少した。投資事業の営業利益は39百万円の損失(同6億11百万円の損失)だった。GL社に係る訴訟判決による回収金等を計上し、訴訟費用の圧縮も寄与して損失縮小した。その他事業の営業利益は15百万円の損失(同5百万円の損失)だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は営業収益が306億57百万円で営業利益が21億34百万円、第2四半期は売上収益が300億85百万円で営業利益が24億52百万円だった。

 通期予想は据え置いて大幅営業増益予想としている。日本金融事業の堅調推移に加え、韓国及びモンゴル金融事業の業績改善も寄与する見込みだ。セグメント別営業利益計画は、日本金融事業が5.9%増の74億59百万円、韓国及びモンゴル金融事業が83.7%増の17億71百万円、東南アジア金融事業が100.1%増の30億21百万円、不動産事業が161.8%増の9億46百万円、投資事業が49百万円の損失(24年12月期は15億95百万円の損失)、その他事業が2億20百万円の損失(24年12月期は2億11百万円の損失)としている。

 日本金融事業は信用保証業務、債権回収業務、証券業務が順調に伸長して増収増益を見込む。韓国及びモンゴル金融事業は、短期延滞債権の回収に注力して貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の減少を見込むほか、大型不良債権のリファイナンシング等による貸倒引当金(損失評価引当金)戻入益を見込む。東南アジア金融事業は、インドネシアでは銀行業務の積極的な貸出残高の増強など、カンボジアでは富裕層を主要顧客とする貸出および運用提案を強化する。不動産事業は総合不動産会社として商品ブランド認知に注力する。投資事業は裁判費用等の回収コストを抑制しつつ、GL社に対する債権回収強化を図る。

 通期予想に対する中間期の進捗率は営業収益が45%、営業利益が41%、親会社の所有者に帰属する当期利益が21%である。中間期が計画を上回る大幅営業増益と順調であり、通期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年6月末日対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年6月末日時点で1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。

■株価は上値試す

 なお25年5月14日発表の自己株式取得(上限400万株または15億円、取得期間25年5月15日~25年12月30日)について、25年7月31日時点の累計取得株式数は0株となっている。また25年7月には、FTSE RussellのESG指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に初めて選定された。

 株価は上げ一服の形となったが、指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。8月27日の終値は438円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS48円96銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の17円で算出)は約3.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結1株当たり親会社所有者帰属持分1184円52銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約603億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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