日本エム・ディ・エム、新製品投入と海外展開を加速、米国事業回復で収益拡大へ

 日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。26年3月期は米国における一部製品の供給制約の影響などにより下方修正して減益予想としたが、積極的な事業展開で27年3月期の回復を期待したい。なお配当予想は据え置いている。株価は下方修正も嫌気して4月の年初来安値に接近したが、高配当利回りや1倍割れの低PBRも支援材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。

■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。なお22年1月に三井化学<4183>が筆頭株主(25年3月31日現在の議決権所有割合30.01%)となっている。

 海外展開として、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指している。中国では21年5月に、米国ODEV社が中国WASTONと中国現地生産品の製造・販売を目的として合弁会社WOMA社を設立した。米国ODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指している。

 25年3月期のセグメント別(セグメント間取引・全社費用等調整前)は、日本の売上高が136億34百万円で営業利益が7億94百万円、米国の売上高が155億11百万円で営業利益が5億90百万円だった。米国の外部顧客向け売上高は米ドルベースで75百万円米ドル、円換算後で114億79百万円(為替1米ドル=152円50銭)だった。医療機器類の品目別売上高(セグメント間取引相殺消去後、日本は販売促進費控除前、米国は円換算後)は、人工関節は日本が52億37百万円で米国が114億49百万円、骨接合材料(日本)は46億53百万円、脊椎固定器具は日本が35億43百万円で米国が30百万円だった。自社製品売上比率は80.7%だった。

 収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。

■新製品の開発拡大

 新製品としては、米国ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発や、新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を推進している。

 24年3月にはODEV社製造の人工膝関節製品BKS(Balanced Knee SYstem)に関して、中国の合弁会社WOMA社が中国における薬事承認を取得し、中国での製造を本格的に開始した。また、ODEV社の人工股関節新製品「Trivicta Hip Stem」が米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得し、米国での販売を開始した。

 24年7月には、ODEV社製造の人工股関節大腿骨ステムOvation Tribute NEOシステムの薬事承認取得を発表した。24年8月には、人工股関節用フェモラルヘッドの新商品JMDM BIOCERAM AZUL セラミックヘッド(京セラに開発・製造委託)を発表した。

■長期ビジョンおよびローリングプラン2028

 長期VISION「RT500」(25年3月期~33年3月期)では、定量目標に最終年度33年3月期の売上高500億円、営業利益率15%以上、ROE10%以上、ROIC8%以上、配当性向30%以上を掲げている。

 また経営計画のローリングプラン2028(26年3月期~28年3月期)では、最終年度28年3月期の目標値(為替前提1米ドル=145円)として売上高312億円、営業利益33億円、当期純利益23億50百万円、ROE8.4%、ROIC7.1%、配当性向30%以上を掲げた。重点施策として、サプライチェーン問題の早期解決に取り組み、主に新製品導入による米国売上高の2桁成長復帰によって連結売上高を拡大するほか、原価低減や販管費効率化等により収益性改善を推進する。

 サステナビリティの取り組みも強化している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。

 24年7月にはFTSE Russellにより構築された日本株ESG指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に2年連続で選出された。25年2月には、国際的な環境評価の情報開示システムを運用するCDPから、気候変動によるリスクや影響を管理している企業として昨年度より1段階上にあたる「B」スコア(マネジメント)に認定、また水セキュリティに関しては「自社の環境リスクや影響について把握し、行動している」と評価されたことを示す「B-」スコア(マネジメント)に認定された。

■26年3月期減益予想、27年3月期回復期待

 26年3月期の連結業績予想については、9月5日付で第2四半期累計(中間期)および通期の連結業績予想の下方修正を発表した。米国における一部製品の供給制約の影響で売上高が計画を下回ることに加え、労務費など間接費の増加、欧州・台湾からの調達に係る米国相互関税の影響などが影響する見込みだ。また、下期の想定為替レートを従来の1米ドル=145円から148円に見直したことにより、日本における輸入仕入原価の悪化も織り込んだ。

 修正後の中間期連結業績予想については、売上高が前年同期比0.6%減の117億50百万円、営業利益が68.6%減の2億10百万円、経常利益が77.4%減の1億50百万円、親会社株主帰属中間純利益が83.9%減の80百万円としている。前回予想(25年4月30日付の期初公表値、売上高122億50百万円、営業利益6億円、経常利益5億円、親会社株主帰属中間純利益3億50百万円)に対して売上高を5億円、営業利益を3億90百万円、経常利益を3億50百万円、親会社株主帰属中間純利益を2億70百万円、それぞれ下方修正した。

 通期連結業績予想については、売上高が前期比1.3%増の254億50百万円、営業利益が35.0%減の10億10百万円、経常利益が39.5%減の9億円、親会社株主帰属当期純利益が6億円(前期は4億61百万円の損失)としている。前回予想(同、売上高264億円、営業利益18億50百万円、経常利益17億円、親会社株主帰属当期純利益14億50百万円)に対して売上高を9億50百万円、営業利益を8億40百万円、経常利益を8億円、親会社株主帰属中間純利益を8億50百万円、それぞれ下方修正した。

 配当予想は据え置いて前期比2円増配の17円(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向(修正後の親会社株主帰属当期純利益で算出)は74.6%となる。

 なお第1四半期の連結業績は売上高が前年同期比2.2%減の59億20百万円、営業利益が58.9%減の1億50百万円、経常利益が71.4%減の1億05百万円、親会社株主帰属四半期純利益が75.9%減の65百万円だった。

 大幅減益だった。売上高が減少した影響に加え、売上原価では調達コストおよび自社製造コストが上昇した。販管費では賃上げによって人件費が増加したほか、米国において2年に一度開催している自社主催のセミナー開催費用が発生したことも影響した。

 セグメント別(セグメント間取引・全社費用等調整前)に見ると、日本は売上高が0.5%増の31億99百万円で営業利益が46.1%減の84百万円、米国は売上高が8.7%増の40億79百万円で営業利益が51.7%減の93百万円だった。米国の外部顧客向け売上高は米ドルベースで2.3%増の18百万円米ドル、円換算後で5.1%減の27億21百万円だった。米国売上の為替換算レートは1米ドル=145円21銭(前年同期は1米ドル=156円55銭)だった。

 医療機器類の品目別売上高(セグメント間取引相殺消去後、日本は販売促進費控除前、米国は円換算後)は、人工関節は日本が1.5%増の12億15百万円で米国が5.2%減の27億百万円、骨接合材料(日本)は2.9%減の10億48百万円、脊椎固定器具(日本と米国の合計)は2.8%増の8億98百万円だった。自社製品売上比率は1.7ポイント低下して79.5%となった。

 26年3月期は米国における一部製品の供給制約の影響などにより下方修正して減益予想としたが、積極的な事業展開で27年3月期の回復を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は下方修正も嫌気して4月の年初来安値に接近したが、高配当利回りや1倍割れの低PBRも支援材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。9月17日の終値は503円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS22円78銭で算出)は約22倍、今期予想配当利回り(会社予想の17円で算出)は約3.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS937円15銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約133億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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